表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/109

拾捌

 


 私は石井先生の後を追った。

 本来ならばこの後に、チャイムや朝の会、掃除もあるはずだが、それも気にしないで良いらしい。

 まぁ、一応助けていただいたし...良いか。

 校長室か生徒指導室にでも行くのかと思ったが、靴を履き、外に出た。何故わざわざ外に出る? 一体何処に行く気なんだ?


 先生は何も言わない。

 ただ、伸びをしながら私の前をダラダラ歩いているだけ。ついていくしかないな。このまま引き返しても、どうにもならない。

 そして、先生の足が止まったのは学校裏倉庫だった。


「...先生、何でちょっと話すのに倉庫なんですか?」

「んー、何でだろうなー」


 もう声を出さないわけにはいかない。

 恐らく、今ならば大丈夫だ。

 後藤さんは、いつも私の分からない所に隠れて見張ってくれているけれど、優しい人だから、きっと黒川さんには報告しないはずだ。


「ま、ちょっと見せたいもンがあるから、入れ」

「...見せたいものって何ですか?」

「それはお楽しみ、だ」

「じゃあ、持ってきてください」


 私が倉庫の中に入ったら、もし何かあっても後藤さんは守る事が出来ない。

 それに、二人きりで倉庫なんて...嫌な予感満載だ。ついてこなければ良かったな。


「強情な娘だなー、先生をパシるとか。...まぁ、流石ヤクザの妹というべきか」

「...」

「こんな時だけ黙りか」


 彼はため息をつくと、倉庫の扉を全開にする。

 すると、不意を掴んで私の手首を掴み、物凄い力で中へと引っ張り込んだ。成人男性の力に私が敵うはずもなく、私は倉庫の中に。

 冷たい床に叩きつけられたか、左足を捻ってしまった。

 嗚呼...何て事だ。先生は動けなくなった私を見て笑い、倉庫の中に入ってきて扉を閉めた。

 途端に辺りは真っ暗になったが、先生が明かりをつけたので周りなら見る事が出来た。


 窓はない。

 カラーコーンやブルーシート、柵、バケツ、ボール等の備品が無造作に並べられている。

 石井先生をチラリと見ると、内側から鍵を閉めていた。


「先生...何をする気ですか」

「...君は怖がっていないね。つまらないよ」

「質問に答えてください」

「そう...」


 すると、石井先生はしゃがみ、私を抱きしめてきた。これはもう...本格的に犯罪の域だわ。


「良い香りだね...」

「教師が生徒に手を出すのは、犯罪ですよ先生」

「真面目に流されるし驚きもしないし...あぁ、君はあれか。黒川 真人の慰み者か。慣れているのか」

です。離してください」


 犯罪、犯罪だよ。捕まるよ先生、気色悪いですよ先生。

 人の髪の匂いを嗅いで、首筋を撫でてくるなんて...あれ、でも、やっている事は黒川さんと変わらない。

 私も最初はこんな風にやられて、物凄く気分が悪かった。でも、何で今は、甘んずる事が...もう慣れてきたのかな。慣れって怖いな。


「うるさいなぁ、あんまりうるさいと、口を口で塞いじゃうぞ」

「いや、それだけは止めてください。...貴方は、何がしたいんですか?」

「...『戦嶽センガク組』、幹部の石井 恭二。何で俺がガキ達の子守しなきゃいけないのかだが...まぁ、目的は君だね」


 先生はまだ強く抱きしめてくる。

 黒川さん並みの腕力...どうにも振りほどけない。どうにかこの場所から退散しないと、色々危ない気がする。


「私...?」

「黒川 佐凜という名の妹を溺愛する、日本最大のヤクザグループ組長...その妹を人質に取ったら、黒川 真人はどんな事でもするだろうなぁ。

 大好きな妹が、綺麗な髪を切られ、可愛い顔がグチャグチャになり、手足の爪が無残に剥がし取られ、餓死凍死寸前で、犯され、嬲られ、目も覆うような暴力を受けていると知ったら...全てを投げ出してでも助けに来るかもな」

「っ...」

「そんな怖がんないで。黒川組の妹様だ。丁重に扱わせてもらうさ」


 全身に電気のような何かが走り、全身が痺れた頃には、私の意識は奪われていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ