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佰弐

これより先は、「Another Ending」となっております。

伍拾玖からの続きです。一応大方編集して、読みやすくはなっていると思うので、途中からもう一度読み直していただくと、読みやすいと思います。

 



 とりあえずマッツーが退散してくれたので、私達は大広間へと向かう事にした。

 巴ちゃんには申し訳ないが、私に絡んでくる変態は黒川さん一人で十分なんだよ。大体、ロリコンでヤクザの組長だなんてそんな...あ、黒川さんもじゃないか。


「どうしたサリン。そんな百面相して」

「あーいや...」


 もう変態は良いかな。お腹いっぱい。

 巴ちゃんに変な虫マッツーが付き纏うのは嫌だけど、今日は黒川さんも来るから、大丈夫だろう。


「組長と鉢合わせしなきゃ良いけど。...ま、そこは猿渡とかが何とかしてくれるか」

「優秀そうだもんね、あの執事さん」

「あいつは、絶対にNOって言わないんだぜ?」


 凄いだろ?

 と、まるで自分の事のように自慢してくる聡。まだまだ子供だ。


「そういえば、よく黒川組の傘下になれたね。戦嶽組の時期組長と親戚関係なのに」

「親戚っつても、かなり遠いがな。まぁ、そこは父さんが何とかしてくれたんだと思う。あれは、そういう事に関しては無駄に才気がある」

「黒川さんと鉢合わせて欲しくないな。マッツー、黒川組の事、あんまりよく思ってないみたいだし」

「そりゃそうさな。俺等が黒川組の傘下に入ったって聞いた時も、凄い怒ってたし」


 聡のお父さん、大変だっただろうな。

 にしても、どういう経緯で黒川組の傘下になったんだ? 確かに大企業は大方支配しているけれど、どれもこれも、自分から傘下にしてくれ、という訳がないし...それに、黒川組から頼みに行く事もないだろう。


「黒川組の傘下になった経緯? あぁ...どうやったんだろう? まぁ、父さんから頭を下げに行ったんだろうな。黒川組の恩恵と庇護さえあれば、裏でも好きな事し放題だし」

「...聡、お父さんの会社、継ぐんだよね...?」

「まぁ。...ってお前、俺が後を継いでも犯罪紛いの事をするって思ってんのか? バカ言え。俺はそういうのは好きじゃない。真っ当に稼ぐさ。ま、傘下は抜けられないだろうがな」

「殊勝だね」


 聡まで犯罪行為に手を染めるなんて事には、なって欲しくない。

 この人だけは、清く正しくあって欲しい。


「俺が犯罪をするにしろしないにしろ...お前がいれば良いさ」

「え、何その突然のデレは」


 ...私も、聡がいるなら良いや。


 そう言おうとしたが、私の中の理性がそれを止めた。

 感情に乗って口走ってはいけない。

 いつ、何処で、誰が私達の会話を聞いているか分からないんだ。もしかしたら、黒川さんが近くにいるかもしれない。

 そんな事を黒川さんの前で言ったら、確実にナイフ滅多刺しの刑になってしまう。


「じゃあ、行こうか」


 少々自嘲の笑みを浮かべつつ、私は聡の背を追いかけた。


 *


 大広間は、騒然としていた。

 まだ客は入っておらず、皿やテーブル、椅子、料理なんかが次々と運び込まれている。あぁ、良い香りがする。

 けれどそんな中、使用人の方々は少しも手を止める事なく、動き回っている。


 すると、猿渡さんが話しかけてきた。

 この人は相変わらず、大人の落ち着きがあるな...。


「おや、聡様、黒川様。北条様は、もう大広間にはおられませんよ。ご安心ください」


 さっき会ったんですよ...とは言わない。

 猿渡さん達使用人の方々は、まだ忙しそうに屋敷の中を駆け回っている。ずっとお喋りしかしていない自分が申し訳ない。

 猿渡さんは人当たりの良さそうな笑みを浮かべた。


「黒川様、宜しければ、メイドにドレスの見立てを命じましょうか?」

「いえ、お構いなく」


 これ以上使用人の方々のお仕事を増やすわけにもいかないしね。


「良いだろ、やって貰えよ。お前ドレス似合いそうだぞ。それにほら、巴も母さんも、ドレス大量に持ってるし」

「ドレスなんて柄でもないし」

「着てみれば良いじゃん」


 お前は!

 使用人さん方の!

 苦労を!

 知らんのか!!


 ほら、見てみろ近くのメイドさんを。

 あんなに大量の皿をカートに乗せて、汗をかきながらも懸命に、慎重に運んでいるぞ。

 あそこにいる使用人の男の人も、招待客のリストと席の数を照らし合わせているぞ。


 そんな私の心象を察したのか、猿渡さんはこう言った。


「お優しいですね、黒川様は。では、気分が変わりましたら、いつでも気軽に私にお話しかけください。私はNOとは言いませんので」


 あ、聡と同じ事言ってる。

 やはり、猿渡さんは優秀なようだ。


 黒川の屋敷には、使用人なんていないからな...代わりに、何百人ものヤクザの方々がおりますがね。

 あぁいう...何ていうの? 若い衆って、鉄砲玉っていうんだっけ? 敵組に後先考えずに突っ込んでいくから、鉄砲玉だって、後藤さんが言っていたような気がするけれど...。

 ま、ヤクザ界に興味はございませんから。

 記憶から抹消しよう。


「じゃあサリン、しばらく此処で巴でも待ってようか。そろそろ化粧直しも終わるだろ」

「そうだね」



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