兄弟
「よし、今日も頑張るぞ!!」
あれから私は毎日欠かすこともなく剣の修業に励んでる。
私は両親譲りの自慢の黒髪を櫛で解かし、
紐で結わえ袴を履き森へ出掛ける。
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「つまらない」
「つまらないならついてこなければいいのに」
この無表情の少年は私の弟の瑠璃である。
「姉さんは放っておいたら何をしでかすかわからないから」
どうやら私は弟から危険人物扱いされているらしい。
「私のこと信用できないの!?」
「できないね、この間だって「釣りよりも手で取った方が早い!!」とかいって魚を手で取ろうとして川で溺れかけたじゃないか」
「だってそっちの方が早そうじゃない!」
「実際一匹も取れなかったのに?」
「うっ………」
「それにいつかさらわれないように気をつけなよ、心配なんだ」
「瑠璃………!!」
「姉さん外見だけはいいんだから、それに騙された人が余りにも可哀想で………」
「…………感動して損した」
「こらこら、瑠璃。雪、瑠璃は雪を心配しているんだよ」
言わずもがな兄である。
「お兄ちゃん!!」
「兄さん、だって可哀想じゃないですか。騙された人が」
瑠璃は兄に対しては敬語で私に対してはタメ口である。
前に理由を聞いたら
「尊敬できるところが何処にも見つからないから」
と言われた。解せん。
「そんなことないよ、雪は外見だけじゃなく中身も魅力的だよ」
兄は私に対して甘いところがある。
「兄さん、そんなんだから姉さんがろくでもない人間に育ってしまうんです。嫁の貰い手も見つからないかもしれませんよ」
「そしたらずっとここでみんなで暮らせば良いじゃないか、何も嫁ぐ必要はない。僕が一生二人の面倒をみよう」
まさかのニートフラグか!?
「兄さん、姉さんがただの駄目人間になります」
一方瑠璃は辛辣である。何時ものことだが。
私はふと二人を見る。
二人は私の黒髪黒目とは違って藍色の髪に母親譲りの青目である。
正直あの青目がうらやましい。
そのたびに私は
「両親譲りの黒髪があるから大丈夫!!」
と自分で自分を励ますという虚しいことをしている。
「姉さん」
「なに?」
「舞と三味線と剣道。姉さんは一体何がしたいの?」
舞と三味線と剣道だけじゃないよ!実はこっそり鍛えているんだ。
忍みたいな動きがしたくって!!とかは口が裂けても絶対に言えない。
というか質問が
「どうして生きてるの?」
並みに難しくてなんと答えればいいかわからない。
「……とりあえず剣の稽古しようか!!」
「わからないんだ」
都合が悪いことはスルーで。