壬生の狼
活動報告に物語には出てこないちょっとした裏設定出しました。後半の裏設定はもしかしたら使うかもしれません。
「雪ちゃん、餡蜜2つ!!」
「雪ちゃん、みたらし団子!!」
「こっちにはわらび餅ね!!」
「了解!!」
時刻は夕方。ここは甘味処……甘味処の筈だ。多分。騒がしいけど。ここは人がたくさん集まり、情報もたくさん流れる。何故か常連客以外の人間も来たりすることが多い。
正直騒がしかったり情報がたくさん出るところから「ここは居酒屋じゃねえんだぞ!!」って言いたい。ちなみにここ、夜は千藤家の誰かが起きているとき、食料全て持参と言う条件で甘味処を貸し出している。但し台所で水を使いたければ自分で井戸から汲んでこいという鬼畜仕様である。つまり結局居酒屋と化している。
ゲームではこんなシナリオはなかった…… 筈。たしか可憐で健気な主人公とその兄弟に引かれみんな集まった筈だ。
多分兄弟の人柄に集まったんだろう。
「お待たせ!!」
「お、ありがとよ!なぁなぁ雪ちゃん」
「なあに?」
「この間も見たんだよ!壬生浪の美少女!!」
「あれだろ?あの黒髪の!!」
酔っぱらってから来た客が語り出す。もう一度言おう、ここはまるで居酒屋のように騒がしく、そして情報がたくさん流れ込む。
沖田総一郎、剣道………少し考えればわかる筈だ。なぜわからなかったのか?考えなかったからさ!!
「雪さ~ん、遊びに来ましたよ!!」
噂をすればなんとやら。本人のご登場である。
「お、壬生浪の美少女!!」
「………………!!僕は壬生浪じゃありません!!」
何故否定するのだろうか?総郎はちらちらこちらを見ている。
(…………うん、そうかもしれない)
私と総郎は友達だ。だから友人から嫌われるのが怖いのだろう。
「総郎、総郎は一体何?」
「………僕はただの沖田総一郎です」
「違うよ」
「………!!」
総郎は一瞬哀しそうな顔をした。が、関係無い。
「ここの常連客で私の大事な友達、でしょう?例えどんな名前であれ総郎は総郎さ」
総一郎は目を見張ったかと思うと泣き出した。
「総郎、ここは、この甘味処は思想なんて関係無い。ここはみんなが楽しくやっていく場所だよ。ここでは誰も貴方をーーーー沖田総一郎を拒絶しない」
「でも、僕は……僕は……!!」
「それじゃあここで独り言。私は壬生浪のことを嫌ってはいない。寧ろ感謝しているよ。例え町の人に嫌われても、それでも汚れ仕事を被ってまで平和を守ってくれているんだから」
「そうだな、寧ろ美少女歓迎!!こんな可愛い子がいるなんて知らなかった!」
「おまえ奥さんいなかったけ?」
「ちょ、それは黙っといて」
そこで甘味処に笑いが溢れた。
「…………どうして…どうして貴女は!!」
「友達だから、それ以外に何か?」
「…………………うわぁぁぁぁ!!」
総郎は、その場に崩れて泣き出した。
私はただただ抱き締めた。
「青春だねぇ」
あの声は聞こえなかったことにして。
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泣き止んだら総郎は全てを話してくれた。自分が壬生浪であること。本名は沖田総司であるということ。
「…………雪さん」
「ん?」
「僕今日はちょっと帰りますね、でもまた来ます、絶対に!!」
そういって総郎は帰っていった。彼は前を向けただろうか?
甘味処に通う町の人達は雪ちゃんの影響で偏見を持たず幅広い目で物事を見れます。ちなみにみんな千藤家の人達の人柄に集まっています。それは紛れもなく本来の性格のヒロインよりも好かれています。