春の者は冬に焦がれる
もりりん視点です!!もりりん視点二回が終わったら他キャラとの絡みいれていこうかなと思います!!
彼女と出会ったのは5年前、僕が父に着いて京へ来たときのことだった。
当時の僕は自分の名前が嫌いだった。
森林太郎ーーーーーーーーー。
それが僕の名前。僕は久々に生まれた跡取りとして、周囲の人間に期待されていたのだ。
剣術に医学にエゲレス語に……とにかく様々な事を学ばされていて、いつしか僕は回りから天才と呼ばれ、期待は更に大きくなっていく。
森家の長男として、跡取りとして。そうやって育てられてきた。周りの子は僕の名前を聞くだけでみんなして近寄ることはしなかった。
京へ来て、父が仕事をしている間、僕は隙を見計らってこっそり抜け出した。
たどり着いたのは森の中。てっきり誰も居ないと思っていたら奥には誰かがいて剣術の練習をしていた。
面倒だと思いその場を去ろうとする。
「こんなところでどうしたの?」
なんと立ち去る前に気付かれ声をかけられたのだ。
「…………別に」
袴を来ているから男だと思ったがよく観察してみると顔も声も女の子だった。
「私白雪、あなたは?」
まさか名乗られるなんて思わなかった、礼儀があるなんて予想しなかった。流石に相手に名乗らせておいて名乗らない訳にはいかない。真に不本意だが
(どうせこの少女も僕の名前を聞いて途端に離れるのだろう?)
「僕は森林太郎だ」
「ふ~ん、自分の名前嫌いなの?」
ふ~んの一言で終了した。こんなことは初めてだ。
「驚かないの?僕の名前」
「いや、だって初耳だし」
そうか、それはこの少女にとって至極当然の事なのか。
「簡単に言えば金持ちの家の人間なんだ」
「うん。でも君がお金持ちな訳じゃないよね?この国どうにかできるわけでもないよね?」
いや、普通は媚びたり驚いたり引いたりするだろう。それにそんなことを言われたのは初めてだ。後半に幕府への不満が混じっていたような気がするのは聞かなかったことにして。
彼女の言葉はどこまでもまっすぐで、もしかしたら信用出来るかもしれない。
「私の質問、まだ答えてないよね?」
「え?……………あぁ、嫌いだよ」
「じゃあ今日から君はもりりんだ」
「は?」
「森林太郎、だからもりりん」
ネーミングセンス無い。
「文句があるなら林太郎だからりんりんにするよ」
彼女はひょっとしてただの馬鹿ではないだろうか?相手は僕よりも年下である。けれどもーーーー
「いや、もりりんでいい」
ここなら、ここでなら僕は僕を見つけられるのではないだろうか。
それから家に帰ると僕は親に京で暮らしたいと言った。最初は散々反対されたが次第に両親が折れた。
僕がここまで引き下がるのが珍しいのか許してくれたのだ。これまで通り勉強を続ける、本当は入学するはずだった学校の分の勉強もすると言う条件付きで。
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「………りりん、もりりん?」
ふと見上げれば雪が目の前にいる、どうやら僕は昔の事を思い出していてすっかり呆けていたらしい。
「…………どうしたの?雪」
「それはこっちの台詞だよ、どうしたの?」
「今日の夕御飯の事を考えて居たんだ」
「そうだね、私的には魚の煮付け希望かな~……」
そういいながら雪は瑠璃さんの方をちらりと見て然り気無く今夜の夕飯を要求していた。瑠璃さんは呆れ顔だ。そういう図々しい所も相変わらずだ。
「ねえ、何考えてたの?」
やっぱり嘘は通じないらしい。
「………はぁ、昔の事を考えていたんだ」
「………………、お姉ちゃん!!」
急に遥が雪に抱きついた。
「どうしたの?」
「な、なんでもないの……」
どう見ても何でもないようには見えない。ふと見てみると遥が無口と呼ばれた男を雪に近づけていた。なにをするんだ。
「それじゃあ雪さん、僕ら帰りますね」
そういいながら総一郎は無口を引き離す。
「これでわかったでしょう?雪さんは悪い人じゃないって」
「ああ、そうだな。紛れもないただの馬鹿だ」
周りも頷く、正直僕も一緒になって頷いてた。
「おい」
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夕暮れの中、僕と遥は家へと帰路を急いだ。
「もりりん…………」
振り向くと遥は泣いていた。
「遥!?」
僕は彼女に何処か異常がないか見る。また転んだのだろうか?
「違う、違うの………転んだんじゃないの……」
「じゃあなんで」
「このままじゃ、お姉ちゃんが……お姉ちゃんが……………お姉ちゃんが死んじゃうよぉ……………!!」