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転生少女は生きることに全力です  作者: 宵螢
ここは乙女ゲームの世界らしく、もう開始してるけど肝心なヒロインの性格があれなので大丈夫とたかをくくっていたらフラグが乱立していたようです
14/23

状況が理解できないというより理解できるけどしたくない

「お前が雪か」


「雪さ~ん、変なのがついてきちゃいました……」


「ふく…土方さんは変じゃない」


「いやぁ、美味しそうな匂いがするな~」


「ここのおすすめってなんだ?」


「お姉ちゃん、遊びに来たよ」


「あんみつ一つ」


どうしてこうなった。


今日も普通に接客してた。そろそろ総郎がくる時間かなとか思ってたら総郎がむくれっ面でイケメン四人と遥ちゃんともりりんを連れてきた。


うん、終わり。


~~~~~~~~


今日はもりりんと一緒に町を歩いてた。


「こんにちは、遥ちゃん」


振り向くとそこにいたのは総一郎さんだった。


土方歳三、斎藤一、藤堂平助、山崎烝の攻略対象四人を連れてーーー


「そ、総一郎さん。そんなに大人数連れてどうしたんですか?」


「いや、この怖いお兄さんと番犬と番猫が僕に雪さんに会わせろって言うんですよ」


(合わせる?そんなの駄目に決まってる!!そんなことしたら殺害ENDのフラグが立ったり長州に目をつけられるじゃない!!)


殺害ENDは全ルートに共通するBADENDだ。新撰組の人間から長州の人間ではないか、または長州の人間から新撰組の人間ではないかと疑われ、その疑いが晴れなかった場合に怒るBADENDである。


この時、誰も攻略しようとしていない状態ならばランダムに、ルートに入っている状態ならばその攻略対象に、好感度の大きさによってイベントは変わる。


殺すのを躊躇った攻略対象が自ら命を断つことだってある恐ろしいENDだ。


幸いここには数あるうちの少ない救済ENDがある斎藤一がいる。


(そうだ、雪お姉ちゃんと斎藤一をくっつければいい!!)


そうしたらお姉ちゃんは泣かずに済む、友達を失ったら泣いてしまうかもしれないが少なくとも愛する人を失うことはない。


(もりりんはお姉ちゃんを気に入ってるみたいだけどお姉ちゃんの幸せのために目を瞑ってもらおう)


私はちらっともりりんの方を見る。


「あの、総一郎さ……「僕も行く」


私が言う前にもりりんが言った。もりりんもやはりお姉ちゃんを取られたくないんだろう。


でもこればかりは譲れない。


ちなみにもりりんーー森鴎外も結核で死ぬのだ。一体なんの嫌がらせだろうか。


そういえばお姉ちゃんの兄弟も確か『君朝』での攻略対象だったが大丈夫だろうか?先が不安すぎる。


「大好きなお姉ちゃんを取られたくないのかな?」


(そう、取られたくない。なんでお姉ちゃんがあんたたちのせいで死ななくちゃいけないの?)


ここはゲームの強制力なんて働かない世界。お姉ちゃんは設定とは違う性格だから大丈夫なんて安心してたけど


彼(沖田総司)と出会った瞬間から既に歯車は回り始めていたのだろう。


「お姉ちゃんは私の大事なお姉ちゃんなの、だから取らないで」


私はそう一言言い、もりりんと一緒に彼等の後ろをついていった。


~~~~~~~~~~


私は彼等を席に案内した。


「単刀直入に聞く、お前は長州の人間か?」


「「「「「「!!」」」」」」


その場にいる誰もが驚いた、そんなに驚くことだろうか?


「私が……チャーシューのにんげ…………!?」


「ブッーーーーーーー」


スパンっ!!


「この馬鹿(姉)が大変失礼をしました。初めまして、残念なことにこの馬鹿な姉を引き継いでる弟の瑠璃と申します」


弟にお盆で頭を殴られました。そして誰かが向こうで噴き出した。誰だよ。


「は、はぁ…………」


総郎はいつも通り大爆笑で遥ちゃんともりりんは笑い、他の人間は呆気に取られている。


「姉さん、長州だよ長州。長門の隣の…………」


「………………」


やばい、何もわからない。


「………………姉さん、ちょっと大事な話があるんだ」


そういって肩を強い力で掴んでくる。


「瑠璃、今はお客様がいるんだよ」


そういって現れたのは兄である。いつもタイミングがいい兄は救世主か何かであろうか?


「初めまして、僕は千藤家長男の千藤藍と申します。僕も単刀直入にいいますね」


「あなたたちは人に名前を名乗らせておいて自分は名乗らないつもりでしょうか?」


その途端、場の空気が凍った。兄がお前も自己紹介しなさいと私の方を向いている。


「わ、私は千藤白雪です!!みんなで自己紹介しましょう!!」


これできっと私は生きられるだろう。


しかし、いくら待てども自己紹介が始まらない。もしかしたら彼等にももりりんのように名前を名乗りたくない訳があるのだろう。


「名前を名乗れないんて………………「名乗らないなら私が勝手に決める、総郎を除いて右から順番にナルシ、わんちゃん、猫目、無口」


「「「「な!?」」」」


「名乗らないから呼びようがないじゃない、文句あるの?」


「ナルシってなんだ、ナルシって」


「どっかの言葉で自分好きな人間のことを言うんだよ、自分格好いい的なこと思ってるやつ」


「わんちゃんってなんだわんちゃんって!!俺は平助だ!!」


また場の空気が凍った。今更だが沖田といい土方といい平助といいまさか彼等は壬生浪だろうか?


「あ、わかった。じゃあ平一朗で」


「名前を名乗った意味は!?」


「しょうがないなぁ、平助で勘弁してあげるよ」


「なにこれ、俺が悪いの?」


彼はいじると面白い。これから楽しくなりそうだ。


「猫目ってなんや」


「…………やっぱり関西弁で」


「どんな決め方してんねん!!」


「俺は無口ではないのだが…………」


「なんか静かだったから、ということで以上!!」


「無理に終わらせた!?」


さっきから別の方向から笑い声が聞こえてくる。本当になんなんだ。


総郎はまた笑っている。ふともりりんを見るとぼ~としていた。


「もりりん、もりりん?」


「……どうしたの?雪」


「それはこっちの台詞だよ、どうしたの?」


「今日の夕御飯を考えていたんだ。」


もりりんは嘘をつく前にまず一回瞬きをする。長い間一緒にいたからわかる。


「そうだね、私的には魚の煮付け希望かな~……」


そういいながら瑠璃の方をちらりと見る。瑠璃は呆れ顔だ。


「ねえ、何考えてたの?」


「………はぁ、昔のことを考えていたんだ」


もりりんはため息をついたあと、そう話してくれた。


「………、お姉ちゃん!!」


急に遥ちゃんが抱きついてきたのだ。


「どうしたの?」


「な、なんでもないの……」


そういったかと思うと遥ちゃんは然り気無く無口を私にちかよせて来た。何故だ。


「それじゃあ雪さん、僕ら帰りますね」


そういいながら総郎は無口を私たちから引き離す。


「これでわかったでしょう?雪さんは悪い人じゃないって」


「ああ、そうだな。紛れもないただの馬鹿だ」


そして周りも頷く。


「おい」


こうして彼等は失礼きまわりない言葉を残し帰っていった。


~~~~~~~~


私は見てしまった。あのとき、客に紛れて笑っていたのはーーーーーーーーー


(一刻も早く、一刻も早くどうにかしなくちゃ)


ここはいい意味でも悪い意味でも現実なのだから。

幾つ建てたかは覚えていないけどとりあえずフラグは建った。

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