友達と笑い声
それから数日後
「雪さ~ん、遊びに来ましたよ!!」
声の主は沖田総一郎である。あれから彼とは毎日のように会っている。
「こんにちは~、仕事中だあらそこに座って何か食べていて」
「もとよりそのつもりです!お団子20本で!!」
「かしこまりました~」
実は初めてあったあのときも団子を25本ぐらい頼んでいた人がいたがよくよく思えばあれは総郎だった。
「お兄ちゃん、お団子20本だって」
「たくさん食べるんだね、彼女雪の友達かい?」
どうやら女の子だと思っているようだ。
おもしろそうなのでそのままにしておこう。
「そうだよ~」
「………触らないでください!」
「……またか」
最近ああいうたち悪いのが多いから困る。
「そこの人、困ってるみた………」
「その子困ってるから離してあげなよ」
急に凛とした女性の声が響いた。そこには気の強そうな美人さんがたっていた。
「なんだと?あぁ、こいつの代わりに……」
すると彼女は男の一人を蹴った。
「いってぇ!!」
(あれ、この男たちって………)
「こんにちは~、久しぶりですね!!」
「あぁん?………って、げ!!」
そう、この間の男たちだったのだ。
「また何か悪さをしようと?」
「いや、なんでもないですよ!困ってたみたいだから道案内しようかと……それじゃあ俺たちはこれで!!」
そういうと男たちは逃げ出そうとした。
「待て」
逃げ出そうとする男たちに私は殴りかかった。流石に二回目は見逃すわけにはいかない。
「すいませ~ん、誰か役人呼んでください!!」
兄はいつも通り笑って弟は呆れ顔、総郎は大爆笑である。
~~~~~~
あのあと男たちは役人に連れていかれた。
「あんた、凄いね。勇気あるんだ」
私にそう声をかけたのはさっきの美人さんである。
「あ、さっきの格好よかったです!」
「そうかい?ありがとう」
「良ければお友達になってください!!」
「むしろこっちからお願いしたいところだよ、あたしは沙羅。島原の遊女さ」
「私は白雪です、ぜひ沙羅姐さんと呼ばせて下さい!!」
「変わった子だねぇ。普通遊女って聞くと嫌がるのに。好きに呼んでいいよ。あたしはこれから仕事だからこれで失礼するよ」
「はい、お仕事頑張ってください!!」
沙羅姐さんに挨拶したあと、私は総郎
のいる席へ戻っていく。
ちなみに余談だが総郎総郎と呼んでいるといつのまにかに頭の中で居候に変換されていたりする。
「さっきの格好よかったですよ!!」
「ありがとう!」
「さっきのあの態度、僕に対するのと違った気がするんですが……」
「可愛い、美しいは正義ですから!」
「そうですか……そういえばたくさん頼んですみません」
「いやいや、こちらも売り上げが上がって大助かりだよ。これからもどんどん食べてってね!」
「うわぁ、ずいぶんはっきり言うんですね!!」
「当然!!」
こう言った会話は日常茶飯事である。
「…………総郎」
「はい、なんでしょうか?」
「総郎」
「はい」
「居候」
「はい………って、え?」
「うん、やっぱり」
「いや、居候ってなんですか」
「総郎総郎呼んでたらいつのまにかに居候に変換されていたから………でもやっぱりあってるね!」
「いやいや、合ってませんから!!」
「プッーーーーーーーー」
「!!」
「居候呼びは止めーーーーーどうしました?雪さん」
様子が違うのに気づいたのか総郎が話しかけてくる。
「いや、ここ最近笑い声が聞こえの」
「笑い声?」
「そう、誰かの」
「それ姉さんの幻聴じゃない?」
後ろを見るとそこには瑠璃とお兄ちゃんが立っていた。お兄ちゃんは総郎に団子の山を渡し総郎はお金を払い食べ始める。
「お兄ちゃん、瑠璃!総郎、この二人は私の兄と弟なの!」
「初めまして、僕は沖田総一郎、おーー」
「男ですよね、僕は千藤瑠璃、残念な事にこの馬鹿な姉の血を引き継いでいる弟です」
「酷っ!!」
口の中に食べ物を入れたままの総郎が自己紹介をし、それに瑠璃が返答した。
「弟さんですか!それに僕の性別よくわかりましたね!」
総郎はさも嬉しそうに話す。
「いえ、僕も似たようなことがあるので」
「こんにちは、僕は千藤藍、長男だ。君は今はいいとしてーーーー雪、どうして言わなかったんだい?」
「言い出しにくくて…」
「ちょっと天井見てくるから待ってなさい」
そういうと兄は天井を見に行った。
その時、天井から足音が聞こえたのだ。
「そこだ!!」
私は湯飲みを天井に向かって投げた。周りのお客さんはみんなびっくりしている。
「ここですね!」
続いて総郎、刀を抜いて天井を刺す。
「…………逃げられたか!」
総郎は悔しげに呟き、天井から刀を抜く。
「あれ、この布は……」
そう呟く総郎の手には一枚の黒い布切れがあった。
「それがどうかし………」
「姉さん、沖田さん」
いつもより恐ろしげなその声に私は機械のようにギギギと首を曲げる。
「大事な話があるんです」
瑠璃はとてつもなく黒い笑みを発しながら仁王立ちをしていました。
「…………こう言うときは逃げるが勝ちです!!」
「ちょ、総郎!?」
総郎は私の手を取り、店の外へ逃げた。つまりは共犯者にされたと言うわけだ。
そしてそのあと家に帰ると私は説教をされるはめになったのである。