第7話 入学式
こんばんは!
いつも読んで下さっている方、ありがとうございます!m(_ _)m
前話を投稿した際、初めてご感想を頂きました!書いて下さった方、ありがとうございます‼︎
頂いたご意見を参考に今回の話を書いてみました!
皆様宜しければ是非ご一読頂けると幸いですm(_ _)m
Twitter:@shinkoku0
「ドンッ」という音と共に、船が揺れた。どうやら船が接岸したようだ。
中尉が下船後の説明をする。
「下船したら、陸に軍楽隊が待機している。皆はその軍楽隊に続いて行進してくれ。大講堂に着いたら、入学式だ。敷島皇国の要人達も出席しているから、くれぐれも非礼のないように」
シーナは湧き上がる興奮を抑えながら、その時を待った。
下船口が開かれ、外の光が燦々と入ってきた。ようやく眼が慣れ、外を見たシーナは、その目を疑った。
港には島に住む住民が殺到し、新入生を歓迎している。皆、手には敷島皇国の国旗と敷島皇国軍旗を持って、こちらに向かってたなびかせている。下船口から大講堂に伸びる道際にも、永延と歓迎する島民が続いている。
新入生を先導する軍楽隊も、100人以上で構成された大軍楽隊だ。
予想を超えた規模の歓迎を目の当たりにしたシーナは、先程の興奮を通り越して、足を竦ませた。
「とんでもない所に入学してしまったのかも……」
隣を振り向くと、千早も顔を引きつらせている。2人は改めて士官学校の権威を思い知らされた。
下船口付近にいた新入生から、随時下船を始めた。ある程度の人数が下船したところで、軍楽隊の演奏が始まり、行進を開始した。道際で旗を振る島民の歓声も、一層大きくなる。
ついに、シーナ達に下船の順番がまわってきた。乗船口を出ると、海風がフワっと煽った。ずっと船内で過ごしていたので、久しぶりの新鮮な空気が美味しかった。
暫く行進を続けていると、少しずつ緊張感も解れてきた。
「この歌、高等中学校で習った歌だね。懐かしいね!」
千早が小さな声で囁いた。
「『進軍の歌』だったっけ…?懐かしい‼︎」
シーナは去年まで通っていた高等中学校を懐かしみながら思い出す。
暫く行進していると、目の前に白い立派な建物が現れた。これが陸軍士官学校の中心的な施設だ。
その頃にはすっかり周りの雰囲気にも慣れ、シーナは再び希望に胸を躍らせていた。
「雲わきあがる この朝〜♪」
それこそ、軍楽隊の演奏に合わせて小声で歌うほどに…
絶好調のシーナを含む新入生は大講堂に入り、順番に席に着いた。
大講堂の中は緊張感が張り詰めており、静まりかえっていた。
シーナは着席し、チラリと来賓席を見た。
来賓席には、皇族、陸海軍や政界、財界の重鎮の方々が顔を揃えていた。
先程まで鼻歌を歌っていたシーナも、気を取り直して背筋を伸ばす。
暫くして、開式の言葉が簡単に述べられ、入学式が始まった。
その後は他の学校の入学式と同じように、国歌斉唱、校長式辞、来賓祝辞と執り行われた。
この士官学校の校長は北白川 章友陸軍大将。皇族でありながら軍人となり、先の戦争で功績を挙げ、現在では軍事参議官も務める大物である。
来賓祝辞は朝香宮殿下の叔父にあたる高松宮 甚三郎殿下が曰われた。
皇族2人が出席されるという前代未聞な入学式に、シーナは只々圧倒されていた。
「続きまして、新入生代表の挨拶で御座います。」
そのアナウンスと共に、1人の少女が演台の前に立つ。
白い肌、金色の髪、尖った耳。その少女にシーナは見覚えがあった。
「麗らかな日が続き、桜の若葉も日ごとに色濃くなり、春を実感する季節となりました。本日は、私達新入生の為にこの様に盛大な式を挙行して頂き、厚く御礼申し上げます。これから新入生一同は……」
演台で新入生代表の挨拶をするのは、晩餐会の時に千紘と口論になった、バーテン ロゼであった。
新入生代表の挨拶は、入試試験でトップの成績を収めた学生が行うのが、この学校の仕来りとなっている。
シーナは感心しながら、ロゼの挨拶を聴いていた。
因みにエルフ族の学生が代表挨拶を行うのは、ロゼが初めてであった。
そうして新入生代表挨拶が終わると、校歌斉唱、閉式の言葉がアナウンスされ、入学式は幕を閉じた。
入学式が終わり大講堂を後にすると、そのまま寮に案内された。持っていた荷物を寮の玄関先で寮母さんに預けたところで、教官からアナウンスがあった。
「荷物を預けた学生から、前に停まっているバスに乗車してくれ。席順は適当で構わん」
そこには10台弱のバスが停車していた。
これからどこに行くのだろうと少々不安に思いながら、シーナと千早は偶然落ちあった千紘達と共に、バスに乗り込んだ。
「どこに行くんだろうね?」
少し不安を感じたシーナが、3人に尋ねた。
3人は、うーんと腕を組んで考える。周りの新入生達も、事情は知らないようだ。
「お兄ちゃんがこの学校の出身なんだけど、この事については教えてくれなかったなー。軍事機密にでも触れるのかも」
友穂はこう説明した。
シーナ達新入生を乗せたバスは、教官から行き先を告げられないまま随時出発した。シーナは先程の興奮から一転、一抹の不安を胸に抱えていた。
イラスト提供:もっち様