第5話 晩餐会(2)
前話から少し間があいて、申し訳ありません(>人<;)
もう少しペースを上げたいです( ´ ▽ ` )ノ
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五話
晩餐会が始まって1時間近く経ち、一通り食事を終えた新入生達は、新しい学友達と、故郷の話やこの軍学校の話などで盛り上がっていた。
ざわざわとした食堂に、再び岡田中尉が姿を現し、マイクの前に立つ
新入生は話を止め、さっと中尉の方に顔を向けた
「新入生の皆さん、食事は楽しんで頂けただろうか。歓談中すまないのだが、少しこの軍学校について、また、軍人の心構えについて説明をさせて頂く。少しの間、宜しく頼む」
中尉は続けて、
「この軍学校は、旧八洲国時代に創立された歴史ある軍学校だ。ヴィルト帝国支配時代には一時閉鎖されたが、敷島皇国建国と同時に大幅に規模を拡大して再開された。ここで教鞭をとっている教官は皆、先の独立戦争で武勇を上げた将校ばかりだから、きっと充実した学校生活を送れるだろう」
「学校施設も充実していて、広い教室や射撃練習場だけでなく、大規模演習場での戦車の操縦訓練や、戦闘機の操縦訓練などもできる。また、学生模擬工場も完備していて、兵器の設計、整備の学習も行える。その為、整備士から、兵器設計士、戦車乗り、飛行機乗り、指揮官など、自分に最も合った仕事に就く事が可能だ!この学校で大いに学業、訓練に取り組み、自分のしたい事を見つけて、立派な軍人となって頂きたい。応援している」
中尉は一息付き、最後に、
「軍人に一番大切なものは何だか皆は解るか? それは、平和を願う心だ。戦闘を実際に行う軍人が言うのに違和感を感じる人もあるかとは思うが、最前線で戦う我々こそ、平和の大切さを知り、誰よりも平和を願わねばならん。戦争が起これば人々の生活空間も、その国独自の文化も破壊される。また、軍人も、全く関係の無い一般市民も、たくさん死ぬ。人が死ぬと、その家族、親戚、友人と、多くの人が悲しむ。戦争には、良い事など一つもありはしないんだ。
しかし、主義主張の相違などの理由から、世界から戦争は無くならない。もし、外交手段の全ての手を尽くしても摩擦が解消されない場合、戦争となるだろう。その時は、我々軍人は命に代えても祖国敷島を守らねばならん。
それは何故かというと、国というものの重さは計り知れないほど重いものだからだ。我々をここまで育ててきてくれたのは、親であり、地域であり、国である。国が我々に与えてくれたものとは、敷島人各々が持つ、「魂」だ。我々はその魂を守る為、我々軍人は時として戦わなければならない」
中尉は腕時計をチラッと見ると、
「おっと、話が長くなってしまったな。すまない。明日の昼ごろには高雄島に着くだろう。入学式や入寮式などいろいろ忙しいから、今日は早めに寝ると良い。では失礼する」
と言い残し、食堂を去った。
中尉の話が終わって間もなく、晩餐会はお開きとなった。新入生達は、ぞろぞろと各々の部屋へと向かった
シーナはデッキの違う千歳達と別れ、千早達と自室に戻る途中、廊下を歩きながらポツリと、
「平和の大切さ……か……」
と少し俯いて、感慨深そうに小さく言った
機嫌を取り戻した千紘は、その言葉を聞いていたらしく、
「ん? どうかしたの⁇」
とシーナの顔を覗き込むようにして問いかけたが、シーナは、
「ううん!なんでもないよ!」
と顔を小さく横に振り、微笑んで見せた
部屋に着くと、すぐに就寝着の用意をし、シーナは千早達と4人で浴場に向かった
脱衣場に着くと網かごの中にはまだ一つも衣服が入っておらず、一番乗りだった
「早めにきて正解だったね!」
と千早がにっこりと言う
「そうだね!」とシーナは返し、服を脱いでいると、千紘があせあせと衣服を四方に散乱させながら服を脱ぎ、
「おっ先〜っ‼︎」
と言って浴室に飛び込んで行った
「もーっ、ちゃんと畳んで網かごに入れなさいよ!」
とその散乱した衣服を拾いながら友穂は言う
服を脱ぎ終えたシーナは浴室に入った
浴室は決して大浴場というくらい広くはないが、丁寧に掃除されており綺麗で、10人くらいが入れる位の広さだった
「最高〜‼︎」
と声をあげながら、千紘は浴槽に沈んでいた
シーナはシャワーの前に腰掛け、身体を洗い始めた
固形石鹸の懐かしい香りが、四方に香る
隣で洗っていた千早が、
「シーナの肌って、透明感があってツヤツヤでキレイだよねーっ!何か特別な手入れでもしてるの⁇」
と問いかける
「うーん…いつもこの石鹸だけだよ⁇他に特別な事はしてないけど。」
「へぇー、そうなんだ!この石鹸だけなんだね!」
-泡立て方に秘密があるのかな⁇-
と千早は不思議そうに自分の石鹸を眺める
その時、
「ひゃっ‼︎」
と突然シーナは小さく悲鳴を上げた
見ると、さっきの話を聞いていた千紘が、シーナの後ろから、背中をスベスベしながら、
「ほーっ!本当にスベスベツヤツヤだー!絶対エステとか行ってるでしょ⁈」
と珍しい物を見るように、目を丸くして言う
「ちょっと……やめっ……!」
とシーナが訴えるが、千紘は一向に止めようとしない
その時、
「シーナが嫌がってるでしょ‼︎やめなさいよっ‼︎」
と友穂が自分の石鹸を握りしめて振りかぶり、千紘に向かって投げた
発射された石鹸は、一直線に千紘の後頭部に飛んでいき、見事命中した
「ぎゃんっ‼︎」
と千紘は一言発し、その後は
「うぐぐぐっ…」
と膝間付いて後頭部を両手で抑え、唸っていた
「もう、千紘は本当にバカなんだから…ごめんねシーナ。」
とハァとため息をつきながらシーナに謝る
「私は大丈夫だよ!それより千紘が…」
とシーナは後ろで唸る千紘を心配する
「いいのいいの、放っといて!悪い子にはお仕置きが必要なのっ!」
と友穂はフンと顔を横に振る
「せっ、石鹸を投げなくてもいいじゃん……しかも後頭部に……」
と千紘は痛みをこらえながら小声で言った
その後、「平和に」入浴を済ませた4人は、就寝着に着替えてそれぞれの部屋に戻った
ベッドに横になり、電気を消したシーナと千早は、「明日が楽しみだねっ!」と明日の上陸を楽しみにしながら、就寝した
真っ暗な海の上を、シーナ達を乗せた輸送船はゆっくりと高雄島を目指して進んで行く
イラスト提供:もっち様