第18話 甘味処での出会い
1日1話を目標にこのところ書いておりますが、なかなか大変ですね……(笑)
しかし、めげずに頑張っていきますので、ぜひ読んで頂ければ幸いでございます!
暫くして、シーナたちの席に給仕が和菓子を運んできた。シーナと千早は粟餅ぜんざい、友穂は三色アイス、ヒナとロゼはあんずあんみつ、そして千紘は白玉あんみつだ。
色とりどりの和菓子が次々と並べられ、卓上は一気に華やかになった。千紘はその並べられた和菓子に目を輝かせる。
「うわぁー、美味しそう!地元には甘味処なんて無いからな〜」
と口元をじゅるりと言わせて待ちきれない様子だ。
「じゃあ、食べよっか!」とシーナが音頭をとる。
「「「「「「いただきまーす‼︎」」」」」」
みんなで一斉にそれぞれの和菓子を口に運ぶ。
……
…………
………………
「「「「「「おいし〜い‼︎」」」」」」
「何これっ!地元の甘味処の粟餅ぜんざいと全然違う!何で粟餅がこんなにモチモチフワフワなのっ⁈そしてこのぜんざいの爽やかな甘み!たまらなく美味しいよ〜!」
とシーナは頰を赤くして頬張る。
「こんなにみずみずしくて甘みの強いあんずは食べたことがありませんわ⁉︎流石は「敷島一の甘味処」と言われる大和屋ですわね。想像を遥かに超えていましたわ!」
その一種の芸術作品とも言える和菓子に、他のみんなも悶絶するようにその味に感動していた。
千紘も、そのツヤツヤな白玉団子を口いっぱいに頬張り、プルプルと震えながら、
「う…美味すぎる…」
と向こうの世界に行っていた。
皆がその美味しさを堪能していると、厨房の方から一人の少女がこちらへ近づいてきた。
「ご満足頂けたようで光栄で御座います。陸軍士官学校の学生の方ですよね?」
そう尋ねてきたのは、落ち着いた色合いの着物を着た、シーナたちと同じ年頃の古風で美しい女の子だった。
「私は、大和屋 千鶴と申します。こちらのお店で女将をさせて頂いている者です。」
そう言ってペコっとお辞儀をする。
こんなに若いのに、女将さんなんだ!きっとしっかりした人なんだろうなぁ。
千鶴の大人びた雰囲気とその対応に、シーナは感心する。
一旦箸を置いて会釈をし、
「はい、私たちは士官学校の学生です。こんなに美味しい粟餅ぜんざい、初めて食べました!千鶴さんはこちらのお店の女将さんなのですか?とてもお若く見えますが……」
「私は16歳で御座いますよ。母が遠方で仕事をしておりますので、私がこのお店を代わりに切り盛りしているんです。」
「え、16歳ですか!私たちと同い年なんですね。若いのに女将さんなんて、とても立派ですね!とてもじゃないですけど私にはできませんよ。」
シーナは千鶴が自分と同い年だと聞いて、驚きを隠せなかった。
「いえいえ、小さい頃から店の手伝いをしておりましたので、慣れると案外簡単なものですよ?お店の方々もお力添えをしてくださいますし。それよりも、私は士官学校の学生にとても憧れているのですよ!特に私と同じ女性の学生に!」
千鶴はその美しい瞳を輝かせながら、シーナたちを見つめている。
いやいや、絶対に女将さんの方が立派だよ……少なくとも私たち第七小隊のメンバーよりは……
そう思いながらも、ロゼたちの手前そんな事も言えず、シーナは無難な対応をする。
「いえいえ、女将さんの方がずっと立派ですよ!私たちはまだ入学したばかりですし……」
しかし、相変わらず千鶴はシーナたちに羨望の眼差しを送り続ける。
「そんな事ないですよっ!士官学校の学生さんの多くは軍の高官になられますし!皆様もきっと立派な軍人になられると思いますよ!もし良ければ、これからもぜひ立ち寄って下さいね!おまけ致しますので!」
千鶴は小声で、「他の方には内緒ですよ?」と言ってシーナたちにミルク金時をそっと差し入れ、
「また今度いらして下さった時は、学校でのことも教えてくださいねっ!」
と言って、楽しそうに厨房に帰っていった。
あんなに良い子がこの世の中にはいるんだなぁー、千鶴さんも応援してくれていることだし、私もこれからもっと頑張らないとっ!
と千鶴の言葉に励まされ、これからの努力を決意するシーナであった。
それから寮に戻ったシーナたちは初めて、これから3年間生活する自分たちの部屋へと向かった。
入り口には、「飛行兵科一年 第七小隊」と書かれた木板が取り付けられている。
「ここがこれから生活する部屋だね!」
と千紘が嬉しそうにガチャっと扉を開ける。
部屋は12畳ほどの広さで、目の前には6人が座れるほどの大きな机が一つあり、部屋の両端に3段ずつのベッドが取り付けられた、畳敷きの比較的簡素な造りであった。
「え……これが天下の陸軍士官学校の寮の部屋……なの……」
と千紘は絶望していたが、どこの学校の寮も、だいたいこの様なものだろう。ロゼもあまり良くは思っていなかった様だが、千早と友穂はこの様なものだと納得している様子だった。
兎にも角にも、シーナは明日から始まる新たな学校生活に、期待を膨らませるばかりであった。




