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新国-神国-のフラリッシュ  作者: 楠林 シン
-第3章-一年生編
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第16話 小隊発表

飛行兵科の校舎前には先輩達が列をなしていて、「おめでとう!」と手を振りながら祝福の言葉を新入生達にかけてくれていた。


その光景を見て、シーナは改めて自分が飛行兵科に入科できた事を実感する。

春の心地良いそよ風が吹く中、シーナ達新入生は憧れの飛行兵科の校舎へと入る。


校舎内の第一講義室に通された新入生達は、出席番号順に席に着いた。教室にいる学生は大体40人前後で、教卓の前には赤い眼鏡の長い白髪の女性が立っていた。典型的な教育に熱心で、学生に厳しそうな教官だ。


「新入生のみなさん、ご入学、及びご入科おめでとう。私は、この飛行兵科の学科長である中尾鉄子だ。宜しくな!」


強い口調で中尾教官が挨拶をする中、千紘はヘラヘラとにやけながら、

「ふへへへ〜!鉄子だって!ぷくす〜」

とプルプル震えながら笑いを抑えている。


「ちょっと‼︎しっかりして、千紘‼︎」


ユサユサと中尾教官を気にしながらシーナは千紘に注告を促すが、千紘は合格が決まったという気分の高揚が抜け切れてないようで、

「う、うん……分かってるんだけど…クスクス!」


と一向に収まる気配が無い。


「そこの学生‼︎うるさいぞ‼︎静かにしろ‼︎」

千紘の笑い声に気がついた中尾教官は、持っていたチョークを勢い良く千紘めがけてぶん投げた!


「痛ーー‼︎‼︎」

千紘の額に直撃したチョークは、額の上で粉砕し、パラパラと机の上に散らばった。

患部からは一筋の赤い液体が滴り落ちる。

周りに居た学生達は「キャー‼︎」と言って後ずさりをし、千紘自身は額のそれを拭って顔面蒼白になっている。


「お前も喋っていたか‼︎」

とシーナを指差し中尾教官は詰め寄る。シーナはブンブンと首を横に振り、必死に訴えた!


「体罰だ!などとは言わないでくれよ。私は良き行動をした者はきっちりと褒めるが、逆に悪行を行う者にもきっちりと落とし前をつけてもらう!これが私の教官としての信念だ!」


「「「「「はい‼︎」」」」」

その覇気を感じとった新入生一同は、一斉に声を上げた。それは中尾教官に忠誠を誓うかの様であった。シーナは身体が硬直し、まるで狼に睨まれた羊の様に大人しかった。


中尾教官……何かとてつもない気迫、オーラを感じる……絶対に抗えない何かを……


シーナは中尾教官の気に触る様な行動には最大限注意しようと誓うのであった。


「話を続けるぞ!この飛行兵科では、「小隊」と呼ばれる一つの集団で、3年間行動を共にする事となっている。軍隊生活とは集団生活だ!それに学生のうちから慣れていく為である。軍隊の中での飛行小隊は4人が基本であるが、この士官学校飛行兵科では6人で1小隊となっている。後ほど前に小隊毎の名簿を貼っておくので、確認するように。」


「また、これまでは寮の来賓用室に宿泊して貰っていたが、小隊毎の部屋を用意してあるので、名簿と共に部屋番号も確認するように。また、君達の荷物は既に部屋へ移動してある。ここまでで何か質問はあるか?」


先ほどの教官の剣幕からか、誰も勇気を出して質問をすることはできず、静かで冷たい時間が過ぎる。


「質問は無いようだな!では、今日の講義はこれで終わりだ!後は門限まで好きにしてくれ。解散‼︎」


と言って、中尾教官は小隊名簿を黒板に貼り付けた後、第一講義室を去っていった。


「バンッ」と戸が閉まる音と同時に、学生達はワラワラと黒板の前に群がる。シーナ達もそれに続いた。黒板に貼られたその小さな紙は、衝撃的なものであった!


ーーーーー

第七小隊

小隊長:高坂シーナ

朝風千早

御上友穂

坂崎ヒナ

中井千紘

バーテンロゼ

ーーーーー


私が……小隊長……⁇


突然の衝撃的な事に、シーナはよろよろと倒れかかる。


「シーナ!ちょっと!大丈夫⁈」


ぐっとシーナの肩を支えながら、千早は続ける。


「シーナ!しっかりして‼︎シーナならきっとできるって、小隊長‼︎」


遠ざかりかけた意識が千早の一言で呼び返される。


「いやいや、無理だよっ!普通に考えたら入学試験で主席だったロゼが小隊長でしょ⁈何で私なの⁈」

混乱するシーナはロゼに助けを求めようとするが、ロゼはそれどころで無い。


「何で私がこんな類人猿と一緒の小隊なんですの⁈絶対にあり得ませんわ‼︎至急教官に抗議に行って参りますわ‼︎」


額に応急処置をした千紘も、凄い剣幕で応戦する。

「誰が類人猿だって⁈私だって、こんな人間の形をした悪魔と同じ小隊なんて御免こうむるわ‼︎」


ムムーッと2人とも腕組みをして睨み合う。一触即発の状況だ。

それを必死に止めに入る千早と友穂。そしてヒナはその周りでオロオロとしている。


ああ。この小隊、きっととんでもない小隊になるな……


そう心で思うシーナであった。



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