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新国-神国-のフラリッシュ  作者: 楠林 シン
-第2章-入学編
14/28

第13話 見学会(3)

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@shinkoku0

新入生の女学生たちは、飛行兵科の校舎ではなく、隣接している飛行場へと案内された。


春の心地良い風が殺風景な砂利敷きの飛行場を抜ける。滑走路には航空機は一機も見当たらず、どの格納庫のシャッターも閉じられていた。


あれ?飛行機を飛んでいるところが見えると思ってたんだけどな……


シーナが少し気を落としていると、遥か遠くからバリバリという轟音が少しずつ近づいてきているのを感じた。


何時からか学生達の隣に立っていた飛行兵科の教官が、

「今からお見せするのが、我が敷島皇国の誇る最新鋭戦闘機、『一式戦闘機 隼』だ!一瞬だから瞬きするんじゃないぞ!」


一旦は急降下していたシーナの胸の高鳴りが、再燃する。


段々と近づいてくるその戦闘機は、遠くからだが少しだけ見えてきた。深緑色で塗装されていて、一見すると敷島皇国海軍の零式艦上戦闘機に似通っているようだが、プロペラから操縦席にかけて黒いラインが引かれている。小さく見えていた機体は、グングンと大きくなってゆく。


『ゴォォォーー バリバリバリバリバリバリ』

挿絵(By みてみん)


シーナたちの頭上を、あたかも隼の様な素早さで駆け抜けてゆく一式戦闘機。

凄まじい風が滑走路に吹く。

その轟音と、翼背面の銀色の輝きに、シーナは心を奪われた。


教官はとても満足気な表情だ。

「ワハハハハッ!見ただろう、一式戦闘機の素晴らしさを!運動性能は抜群、970馬力の発動機を搭載、最高速度は495km/hだ!海軍の零式と比べても劣らないぞ!」


「うわぁぁぁ〜!」

目を輝かせて、シーナは教官の説明を聞きながら、感激の声を漏らしている。千紘や千早も同じように心酔している。


やっぱり、飛行兵科はカッコイイな〜!あの銀翼の機体で大空を駆けることができたなら、どれだけ爽快なんだろう!

やっぱり、志望するなら航空兵科にしよう!

シーナは心に誓う。


「シーナシーナっ!さっきの飛行機凄いね!バリバリ〜って大きな音を立てながら、一瞬で彼方に消えていったよ!やっぱり私は飛行兵科を志望するよ!」


「そうだよね!千紘も飛行兵科なんだ!私も!」


「千紘っ!シーナだけじゃないよ!私、千早も飛行兵科にするよ!」


他の学生たちも、次々と飛行兵科への志望を口々にしている。


「キュキュッ バルンバルンバルン……」


先程彼方に飛んで行った戦闘機が、滑走路に着陸する。新入生たちの視線は、操縦席に釘付けにされた。


操縦席から翼に足を掛け、タンッと地面に降りたったのは、スラッと背の高く、美しい長髪をした先輩女学生であった。


「綺麗な方だなぁ〜」

思わず口にしてしまったシーナは、ハッとして口を紡ぐ。


地獄耳の千紘は、それを聞いていたらしく、

「シ〜ナ〜、どういう事なの〜。もしかして、そういう趣味なわけ〜(笑)」

クスクスと笑いながら、最大限にウザい表情でシーナに詰め寄る。


「そっ、そういう意味じゃないからっ!普通に美しい人だなと思っただけだから!別に、そういう趣味がある訳じゃないんだからねっ!」


「え〜、どうだか〜(笑)」


流石のシーナもムカついたのか、千紘の頭にゴンッと拳を食らわせる。


「痛っ!ひっひどい、シーナ!めっちゃ痛いんだけど!」


「歯止めの効かない千紘が悪い!」


2人のいざこざを尻目に、降りてきた先輩女学生が説明を始める。


「こんにちは、皆さん!私は飛行兵科3年生の小倉 楓。皆さんの中で飛行兵科に入ってくれる人がいたら、宜しくね!」


シーナと千紘は、先輩の話が始まった事に気付いて、スッと姿勢を正す。


「この飛行兵科には、現在約100名の学生が在籍しております。練習用の航空機は予備機を合わせて52機、ここまで航空機が充実している学校はうちだけです!日々の練習や体力作りは少し大変だけど、大空を飛ぶのはとても気持ちの良いものですよ!皆さん、是非志望して下さいね!」


「では、新入生の皆さん。何か質問はありますか?」


多くの学生が辺りをキョロキョロと見渡して様子を探る中、天高々にシーナは手を挙げた。


「はい、ではそこの黒髪のあなた」


シーナはスクッと立ち上がり、敬礼をする。

「はっ、はい!陸軍上等兵、高坂シーナと申します!そ、その、飛行兵科に入るにはどの様な事が必要でしょうかっ?」

緊張で声が裏返ってしまったシーナは、顔を真っ赤にする。


「飛行兵科を志望して下さるのですか?ありがとうございます。そうですね、敷島皇国を愛する心と、飛行機が好きという気持ちがあれば、きっと立派な飛行兵になれると思いますよ。是非、頑張って下さいね!」


「はい!ありがとうございます!」


スッと座ったシーナの顔は、まだ赤いままであったが、シーナの飛行兵科への憧れは膨らむばかりであった。

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