第6話 エルフです
成人の儀当日、朝早くから起き禊をする。
お父様と言葉を交わし結界の入り口に行くと、そこには全身を黒い服で被い顔を隠している人間がいた。
「こんな森の奥に人間が?」
普通この森に人間が入った時に精霊が教えてくれる為、こんな森の奥に人間が入り込んだことは未だない。
それに、私の周りの精霊たちが何も言わずおとなしくいている。人間が目の前にいるのにだ。
結界内から人間を観察していると、人間の手元が輝きだした。
魔力は感じない。何をするのかと見つめていると、「いやー!!」「やめてー!!」
今まで聴いたことのない悲鳴を精霊が叫び始めた。
この時になりようやく人間が何をしようとしているのかに気づいた。
結界を破壊しようとしているのだ。それもとてつもない力で。
「実力行使です。こんなもので隠れている貴方たちが悪いのです。」
まずいと思った私は咄嗟に声をだしていた。
「お待ちください!!」
~Side Out~
実力行使をする為に拳に纏っていた氣を収める。
声がした方に目を向けると、今まで人がいなかった場所に一人の女性が立っていた。
「貴方は?」
「私はこの里に住むエルフのエルネス=カーティスといいます」
不審な私の質問に律儀に返してくれるエルネスという女性。
見たところ慌てていたのか息が切れているが、敵対する意思はないように見える。
女性のところに近づきながらその容姿にとても驚いた。
腰まであるウエーブのかかった軟らかな金髪に碧眼。一つ一つ美しく造られた美形。特徴的な長い耳もよく似合っている。
背は私より少し高いくらいですね。
女性の3m前まで行くと今度は向こうから質問をしてきた。
「あの、あなたは?」
ふむ、なんと答えましょう。前の名前は当然使えない。今思いついた名前を答えましょうか。
「私の名前はルナといいます。ここに人がいるとわかったので訪ねて来ました。」
「・・・そうですか。」
何でか驚かれてしまいました。
目を見開いている姿もとても美しいですね。エルフは皆美人なのでしょうか?
ふと、女性の服装に目が留まる。
レースのついた薄での白いワンピースのような服に薄く文字が刻まれている。
「気になったのですが、その服は儀式装束ですか?」
「はい。良くわかりましたね。今私は成人の儀で精霊と契約しにいくところですよ。」
「精霊?この世界には精霊がいるのですか?」
「はい。目に見えないだけで確かに精霊は存在していますよ。」
精霊までいるとはかなり驚きです。この世界は予想以上に楽しそうですね。
「もしよければ、その儀式に立ち合わせていただきたいのですが」
「え??・・・わかりました付いて来てください。」
なんだか微妙な顔をされてしまいました。もしかして人が付いていくのはまずかったですか?
「無理でしたら断ってもらっても良いのですが?」
「いえ大丈夫です!!お願いですから付いてきてください!!」
「そうですか?ではお言葉に甘えて。」
「(ここに一人残したら何をするのか不安すぎます)」
早くも問題児認定されたルナであった。