第27話 街で宣伝です
少しずつ更新が遅れていく予感がします。
あぁ、お仕事が恨めしいです。
洋服屋マロンの前にルエリの何でも相談所の看板をたててから数日特に仕事が入ることなく過ぎています。こういった仕事は知名度が上がらなければいつまでも仕事が入る事はないです。魔獣を売ったお金が未だ充分に残っている為、こちらから慌てて行動を起こす必要が無いのです。今日も私達は白いローブをかぶり3人並んで街の見物を続けています。
路上に売り物を並べてあるのを一つ一つ見て行きます。私達には初めて見るものが多く、興味がそそられます。
「見て欲しいんだよ、あの魚くりっとした目がとても可愛いんだよ。」
リーゼが指をさした方を確認すると、路上に魚が並べられている中にこちらをギョロミしている魚がいます。死んでいるはずなのに飛び出した目に見られていると思うと気味が悪いのですが、リーゼにはお気に入りのようです。
「そうですか?私はその隣の猫耳が生えたようなお魚が気になるのですが、とても可愛いですよね。」
「そうね。どちらも可愛いと思うわよ。でも私はあの丸い形をしたお魚がいいと思うわ。」
・・・3人共好みが違うようです。
「!!ルナ!ルナ!見てよ!あの丸いのボールみたいだけど、ワンちゃんなんだよ。可愛いな~。」
「あの白くて柔らかそうな毛がふかふかで気持ちよさそうですね。それに、あのつぶらな瞳が可愛いです。」
「ワンちゃん、ワンちゃんお手なんだよ。」
ぺろぺろ
「あはは、くすぐったいんだよ。」
ガブ
「ミギャー!い、痛いんだよ。」
「ふふ、さっきお肉を食べていたからきっと美味しそうな味がしたのですね。」
「あら、そうなの?今度は私が食べようかしら?」
「うう、皆酷いんだよ。少しくらいあたしの心配をしてほしかったんだよ。」
「ごめんなさい、リーゼが可愛かったからつい苛めたくなってしまうのよ。」
「はい、そのとおりです。」
「ううう~。」
本当に恨みがましい上目使いが可愛いです。
「さてと、この街を充分見て周りましたから、そろそろお仕事を積極的にいきたいです。」
私の言葉にエルお姉ちゃんが頷いてくれます。リーゼは少し不満そうにしていますが。
「ここはこの街の中央広場です。あまり派手なことをして大きく目立つつもりはありませんが、私達の事を知ってもらおうと思っているのです。」
「いいけど、どうするのつもりなの?」
「この街には医療魔法が使える人がとても少ないそうです。使える人は全員国の管理下にあり高額な医療費を支払わなければ治療をしてもらえないそうです。そして魔法治癒以外では薬草に頼るしかないですが、大きな怪我や病気は魔法に頼らないといけないそうです。なので、ここで怪我や病気の人を助けて良い印象を与えてお店に来てもらおうという考えです。良いと思いませんか?」
「それは良い考えだと思うわ。でも、どうやって怪我をしている人を見つけるの?」
「私が見て確認するです。外傷の怪我は見ただけで確認できますからね、あと医療魔法は基本的に複数回に分けて治療するようです。治療をエルお姉ちゃんにお願いしますが、1回で治さないで魔法使いの平均くらいの回数で治療をして欲しいのです。」
「わかったわ。」
「あたしは何をすればいいのかな?何でも言って欲しいんだよ。」
初めてのお仕事をやる気充分ですね。
「ごめんなさい、残念ですがリーゼは今回見学をしていて欲しいのです。」
「そっかー、残念なんだよ。次から頑張ってお仕事するんだよ。」
私はリーゼに謝ってから丁度良い外傷の人がいないか見回します。重すぎず、軽すぎず傍から見ていて治っていく様が一目でわかる外傷が望ましいですね。そう思い見回しているとマロンに襲撃してきた騎士達が小さな女の子を苛めているのを見つけました。見てみれば女の子は頬を叩かれたのか赤く腫れ上がっています。
あの子にするです。
人混みを掻き分け女の子の前に立ちます。
「こんな小さな女の子にも暴力を振るうなんて最低ですね。」
「何だお前はその口の利き方、不敬罪で叩ききるぞ!!」
「ふぅー。着ているものが違うのでしょうがないのかもしれないですが、数日前に自分達を負かした相手の声くらい覚えていたらどうです?」
「何だと!?我々は誰にも負けていない、出鱈目を言うな!!」
恥をかかないために嘘をついているのか、・・・それとも本当に忘れているのでしょうか?リーダ格の取巻き連中は感づいているのか青ざめています。
「隊長こいつあの洋服店の時の奴ですよ」
「・・・そうだったか、魔族の時といい今回といい余程我々の邪魔をしたいようだな。今回はここで勘弁してやるが、貴様にこの街で生活することができないと思い知らせてやる。行くぞ!」
二流どころの捨て台詞を吐かれてしまいました。私達に何かしてきたらただでは済ませませんよ。あんな奴らのことはほっといて女の子です。
「大丈夫ですか?」
「あの、助けてくれてありがとうございました。」
とても礼儀正しい子です。こんな子に絡むだなんて本当に最低な人達ですね。
「頬が腫れてしまっていますね。エルお姉ちゃんお願いするです。」
「ええ、わかったわ。水の精霊よ私の願いを聞き入れこのものを癒してください」
魔法と精霊魔法とでは詠唱が全然違う為、周りに聞こえないように静かに精霊達にお願いしているようです。女の子の腫れが半分になったところで魔法を止めると周りからも感嘆の声が上がっています。目立つ場所で私達の有用性を示す作戦は成功のようですね。
「わぁ、凄いもう痛くないよ。ありがとう!!」
「どういたしまして。私はエルネス。こっちがルナとベアトリーゼよ。貴女のお名前を教えてくれませんか?」
「私はイリーって言うの。」
「そう、イリーちゃん私達は洋服やマロンで何でも屋としてお店を開いているから、そこに来ればまた治療してあげるわよ。」
「そうですね、イリーは私達の最初のお客様ですから無料で癒してあげるです。今日は家に帰ってゆっくり休むといいです。」
「うん、ありがとう!またね!」
女の子は元気良く走って行きました。子供の元気な姿を見るのは気分がいいですね。それに初仕事を終えた達成感があります。
私はこの場に集まっている人達に聞こえるように声をかけます。
「私達は洋服店マロンにルエリ何でも相談所を開いています。何か御用があれば遠慮なく来て欲しいのです。」
私達3人はそのことを伝え家に戻るのでした。