第19話 嫌な予感は当たるものです
「今、どこからか悲鳴が聞こえました?」
「いえ、私は聞こえなかったわ。」
「あたしも聞こえなかったんだよ。」
2人に聞こえなかったのなら気のせいですね。
今私たちは、エルフの里への道を歩いています。私が元いた世界のことをいろいろと聞かれました。2人とも私の世界に興味があるようです。何をしていたのか、どんな物があるのか私は1つ1つの質問にしっかりと答えていきました。
質問に答えながら森の中を歩くこと数時間。ようやくエルフの里の結界が見えてきました。ですが、なんだか様子が変ですね。何かあったのでしょうか?
「そこで止まりなさい!」
結界の外に多くのエルフ族の人たちが集まり私たちに弓、魔法を放つ準備をしています。・・・これは嫌な予感が当たったのでしょうか?
その中から1人のエルフの男性が前に出てきました。
「エル・・・お前は何をしたのか分かっているのか?そこの人間と姉妹の契りを交わしたそうではないか。なぜ、そのような愚かなことを。あれほど人間は汚い生き物だと教えてきたというのに。」
「お父様・・・」
どうやらエルお姉ちゃんのお父さんのようですね。他のエルフの中で1番強そうです。
「お父様、聞いてください。ルナちゃんは悪い人では「うるさい!!」・・・。」
「人間と契りを交わした者の言葉など聴く耳もたん!即刻立ち去るが良い。この森から出て行けば私どもが危害を加えることは無い。もし、出て行かないというなら、この里の掟に従いこの場で処刑する。」
いきなり処刑するとは穏やかではないですね。人間というだけでここまで嫌われているのですか。エンジュの言っていたとおりこの森での生活は難しそうですね。エルお姉ちゃんの言葉すら聞いてもらえないなんて、私がこの場で話しても悪い結果にしかならなさそうですね。
「ま、待って下さいお父様。私達は本当にこの森に悪いことをするつもりはありません。どうか武器を下ろしてください。」
エルお姉ちゃんが必死にお願いしているが、この場が好転する気配がありません。このままでは本当にいつ攻撃されるか全く分からない状況です。
「エルよ、私も自分の娘に攻撃するのは辛いのだ、早くこの森から立ち去って欲しい。これが最後通告だ。返事を聞かせてもらおう。」
エルお姉ちゃんが私に振り向いて申し訳なさそうにしています。私は首を横に振り、この森を出ようという意思を伝えます。
「わかりました。すぐにこの森を立ち去ります。」
「そうか、皆武器を下ろせ、・・・選別だ。このバックにエルの日用品が入っている。これを持って行くがいい。」
なんだか、2度と戻ってくるなと言われている気がします。エルフ族がここまで排他的な種族だとは思いませんでした。さすがに私もこのままではいられず言葉を返します。
「この里の仲間だったエルにこんな酷いことが出来るなんて、エルフは冷たい種族ですね。これでは人間とあまり変わらないですね。」
「人間に話す権利など無い。エルがいなければこの場で殺しているぞ。」
「ふぅ、やれやれです。エルお姉ちゃん行きましょう。これ以上この人達と話をしていても仕方ないです。」
「・・・わかったわ。お父様長い間お世話になりました。皆もさようなら。」
とても簡単に挨拶を済ませエルフの森に背を向けます。この森から出るために。
「そんな排他的な考えではこの先エルフに未来は無いですよ。それに、」
私は抑えていたい氣を開放し彼らにプレッシャーを与えます。自分達がいかに危険なことをしていたかを分からせる為に。
「エルお姉ちゃんがいなければ殺されていたのは貴方達の方ですよ。私1人でこの里を潰す事なんて簡単です。そんな相手に貴方達は武器を向けていたのです。これから先私のような者が現れ、この森に害を与える者であったのならば、貴方達エルフは自分達だけでこの問題を解決しなければならない。・・・もう少し、考えてみてはどうですか?」
放出していた氣を抑えプレッシャーを弱めます。プレッシャーに耐え切れなかった人たちが崩れ落ち、座り込みます。今この場でまともに動けるのはエルお姉ちゃんのお父さんくらいなものです。
「では、お騒がせしました。さようならです。」
「皆、バイバイ」
「さよならだよ。」
・・・リーゼ最後だけしか話しませんでしたね。完全に空気になっていました。
さて、この森を出て人のいるところに向かいましょうか。