第18話 エンジュの苦難
今回はエンジュさんのお話です
~Side エンジュ~
「行きおったか。」
あの2人は時の人になるじゃろうな。あのルナの魔法はこの世界の誰にも使えん。それに、エルネスの4大精霊のこともある。あの2人がこれからどんな道を辿るのかとても楽しみじゃ。
「・・・ぬ、やはりきおったか。何の用じゃババァ。」
わしの頭上に魔力の糸が伸びてきておる。おそらく同じ神獣のやつじゃ。そして他所に関わってくる物好きはあやつしかおらんからな。
「うっさいわね、ジジィ。あんたが死にそうだから心配してあげたんじゃない。感謝しなさいよね。」
勝気な少女の声がわしの頭に直接伝わってきておる。まったく、心配しておるなら、もっと優しく声を掛けて欲しいもんじゃ。頭に響いてかなわん。
「そいつはすまなかったな。じゃが余計なお世話じゃ!わしはまだ死にはせん。」
「嘘ね!あんた結構魔力も消費してるし、そのお腹の傷かなり深いでしょ。私にはわかるんだから。」
ふぅ、どうやら本当に心配させていたようじゃな。
「お見通しか。ここに面白いハーフエルフが来ておってな、わしと1勝負したいと言うから相手になってやったのじゃが・・・」
「なによ、もったいぶらずに早く言いなさいよ。ボロ負けしたんでしょ?ジジィらしく。」
「うっさいわ!わしはまだ若いわ!」
いつも思うのじゃが、このババァわしを馬鹿にしておらぬか?わしに対する気遣いや遠慮が全く無いわ。
「・・・そのハーフエルフはルナと言うのじゃが、魔法を一切使わず、自身の体だけで、わしに傷をつけおったわ。何やら面白い術を使っていたようじゃが、その身体能力はわしら神獣に匹敵する程の凄まじさじゃった。」
「本当なの?私たちに匹敵するなんて。唯のハーフエルフには考えられないわよ。あんたの腕が訛ってたんじゃないの?老いぼれジジィ。」
「だからうっさいわ!わしの腕は訛ってなど断じておらん。・・・少々油断したことは認めるが。」
「ふ~ん、で勝負はどうなったのよ、勝ったの?」
「引き分けじゃったよ。あのままやっておればわしが勝っていたじゃろうがな。じゃが、次に闘うときは十中八九わしが負ける。そう断言できる力をルナは持っておった。この世界の誰も持っていない唯一の魔法その魔法を使われたらわしもお主もルナに勝つことは不可能じゃ。」
「そんなに凄いんだ。私も見てみたいわね。・・・ねぇその人たちどこに行ったの?一度会ってみようと思うんだけど。」
こやつ、ルナに会いにこの森に来るつもりではなかろうな?そんなことになったらこの森が大変なことになる。
「ルナは・・この森にまだおるが、決して会いにくるでないぞ。」
「しょうがないわね、貸し1つよ。さーて何してもらおうかな?そうね、今回は私のペットになってもらうわよ。」
「ま、まて。なぜ貸しになるのじゃ!」
「ジジィの頼みごとを聞いてあげるんだから当然でしょ。その子に会いに行くのはまた今度にするわよ。どこにいるかは常に把握できるしね。じゃあペットのエンジュちゃんには、私自ら芸を仕込んであげるわ。出来なかったら前の恥ずかしい記録をその森の奴らにばらしちゃうんだから。」
な、なんてことじゃ。またこやつに貸しを作ってしまった。ルナよわしの犠牲を無駄にするでないぞ。
「じゃあ初めにお座り。」
「ま、まつんじゃー!」
~Side Out~