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転性者が行く  作者: 金時
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第15話 精霊契約です

あの勝負の後、再び小さくなったエンジュの転移でユグドラシルの樹の元に戻ってきました。


エンジュも私がこの森に悪さをしに来たのではないと理解してくれたようです。初めからあった威圧感が今ではありません。


「さて、ここには成人の儀をしにきたのじゃろ?ハーフエルフに精霊契約を認めることは本来無いのじゃが・・・エルネスなら問題無いじゃろ。それに、精霊たちに嫌われておらんようだな、ハーフエルフには今まで無かったことじゃ。」


「ありがとうございますエンジュ様」


エルお姉ちゃんが頭を下げ礼をしています。これから精霊契約ですか。いったいどのようなものなのでしょうか?本当に知らないことばかりで興味が尽きません。


「ルナ、お主は精霊契約をしないのか?精霊に嫌われておらぬし、わしも問題ないと思っておるのじゃが。どうじゃ?」


「・・・私も精霊契約できるのですか?」


「そうじゃな。元人間と聞いていたが、こんなことは初めてじゃよ。」


「そうですか。でしたらお願いします。私も魔法を使ってみたかったので。」


私も精霊契約ができたのですね。異世界といえば魔法。こればかりは譲れない醍醐味ですね。


「良かったわねルナちゃん。」


エルお姉ちゃんが私を見て微笑んでいます。少々興奮していたのが表情に出ていたようですね。子供らしくて微笑ましかったのですかね?ちょっと恥ずかしいです。


「それではこれから精霊契約を始めます。ルナちゃんはしっかり見ているのよ。」


エルお姉ちゃんは目を閉じて集中しているのか静かに佇んでいます。僅かな時間同じようにしていましたが、目を開けて言葉を発します。


「私エルネス=カーティスが精霊契約を求めます。私と共に栄光と祝福の道を辿ることを望む精霊よ私の求めに答えなさい。」


そう言うと、私には見えていなかったはずの精霊の姿が見えます。青・赤・緑・黄の4人で、6枚の羽をつけている人の姿をしています。これが精霊ですか、すごく綺麗ですね。ホバリングしているのか微かに羽が震えています。その震える羽からは精霊属性の光が零れ落ちています。エルお姉ちゃんの周りを4色の光が舞い降り祝福しているかのようです。


「・・・うそ」


「ほう、すごいな各属性の精霊王たちが契約に現れるとは。よほど精霊たちに好かれているのじゃな。」


「エンジュ、あれは凄いことなのですか?」


「凄いなんてものじゃないぞ、今まで精霊王と契約を交わしたものなぞおらんのじゃから、そして各属性の精霊王たちじゃ。普通のエルフなら1つから2つの属性を扱えるだけじゃぞ。・・・ハーフエルフで精霊王の契約者、話題になるじゃろうな。」


「そうなのですか」


4人の精霊たちは皆女性で美しい容姿をしています。その内の火の精霊王が代表するかのように前に出、エルお姉ちゃんに言葉を投げかけます。


「エルネスよ、我等4属性の精霊が契約をしよう。契約の魔力を我等にいただきたい。」


「っはい!私たちに祝福を、コントラクト」


そういうと、円状の魔方陣が現れ、光り輝きます。


「契約完了じゃな。これでエルネスは4属性精霊王の契約主となった。」


そのエンジュの言葉に精霊契約が終わったことを理解しました。今まで視えていた精霊が忽然と姿を消し、未だ驚いた表情のエルお姉ちゃんだけが残されています。


「おめでとうございます、エルお姉ちゃん。エンジュに聞きましたよ4属性の精霊と、それも精霊王と契約を交わすのはとても凄いことだそうですね。」


「・・・ええ、私も驚いてるわ。まさか精霊王と契約できるなんて・・・。」


「それだけお主は才能があり、精霊たちに好かれておるということじゃ。その才能わしも羨ましいぞ。」


「ありがとうございます、エンジュ様。・・・ルナちゃん次はあなたの番よ。できそう?」


「そうですね、エルお姉ちゃんの契約の姿を見ていましたし、言葉も覚えています。問題無いと思いますよ。」


「ではルナよ、お主が精霊契約をする番じゃ。」


「はいです。」


私は返事をした後、静かに目を閉じて精神を集中します。心を落ち着け平静にします。周りの森と同化するくらい意識を薄めていきそこで私はゆっくり目を開けて精霊契約の言葉を発します。


「私ルナが精霊契約を求めます。私と共に栄光と祝福の道を辿ることを望む精霊よ私の求めに答えなさい。」


エルお姉ちゃんの場合目の前に光が現れていました。私にも同じように精霊が現れると思ってドキドキしていたのですが。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何も起こりませんね。


「エルお姉ちゃん、エンジュ私には見えないのですが精霊がここにいるのですか?」


「・・・いえ、私には精霊を確認することができないわ。エンジュ様はどうですか?


「・・・わしにも確認できんな。おかしい、決して精霊に嫌われておらんし、充分精霊と契約できると思えるのじゃが。」


2人にも確認できないとなるとこの場には本当に精霊がいないということですか。・・・まさか精霊と契約できないなんてことではないですよね?私とても楽しみにしていたのですよ?諦めきれない私はもう一度先ほどより集中し完全に森と同化し、自身の深層まで意識を潜って行きます。


真っ暗な何も無い深層世界を潜り、最奥まで到達します。そして、そこに何者かの意識を感じます。・・・信じられません、私の中にもう一人の意識が存在しているなんて。今まで全く気づきませんでした。私はその意識に直接手を触れます。するとその意識が私の中に流れ込んできます。


・・・それは夢で見ていた内容と同じ感情をもった意識でした。辛く、寂しく、悲しいそんな意識。私には意識の声が直接聞こえます。


「いや、皆あたしを嫌わないで。一人にしないで。・・・あたしは化け物なんかじゃない!!」


その悲しく必死な感情を乗せた言葉が私の心を打ちます。あぁこの意識は一人で寂しかったのですね、強大な力を持っていた為、戦いたくもなかったのに無理やり戦わされ、その力から化け物扱いされ、周りに嫌われる。そんな寂しく、悲しい人生を送ってきたのですね。気がついたら私は意識に言葉を返していました。


「大丈夫ですよ。貴方には私が付いています。もう貴方を一人にしませんし、化け物とも決して呼びません。」


その声音には私自身驚くほどの慈しみの感情を纏っていました。こんな悲しい貴方を決して1人にはしておけないという感情が溢れてきます。すると、驚いたことに意識のほうから返事が返ってきました。


「本当?私を1人にしない?化け物と呼ばない?いつまでも一緒にいてくれる?」


その言葉に私は即答します。


「はい。これから私たちは友達ですよ。私はルナあなたは?」


「あたしの名前はベアトリーゼ=アスペルマイヤー。よろしく私のお友達。」


そう言葉にしたとたん今まで感じていた寂しさと、悲しみの感情が薄まっていくのを感じます。良かったです。あのまま1人でこんなところにいるなんて寂しすぎますからね。私はその意識から離れ表層意識まで戻って行こうとしましたが、ベアトリーゼに呼びかけられました。


「ルナ!!あたしの名前を呼んで!!ずっと一緒だから!!ずっと友達だから!!」


私はその言葉を聴きながら意識を戻しました。


「・・・はい。これからもずっと友達ですよ、ベアトリーゼ=アスペルマイヤー。」


ゴウッ!


私の言葉に私自身の身体から白い光が溢れ出してきます。エンジュのブレスト同じくらいの光量に目を細めます。エルお姉ちゃんも、エンジュも何が起こったのかとても驚いた表情をしています。


そして、静かに光が収まった後目の前に1人の女の子が立って私をみつめていました。


「これからよろしく、ルナ。」


その少女はそう言うのでした。



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