第10話 姉妹になれたようです
始まります。
~Sideエルネス~
『姉妹の契り』
それはただの契りではありません。同族同士で契れば本当の姉妹になることができますし、相手と魔力を受け取ることで精霊との交感に使用できる魔力を増やすことができます。
『姉妹の契りは』同族内では頻繁に使われ、里に住む全ての者が家族です。
ですが、異種族との契りが結ばれることはほとんどありません。
『姉妹の契り』には相手との信頼、親愛などの感情が不可欠です。
異種族では見た目、考え方、生活など様々な違いが出てきます。
僅かでもそんな不信感があるとお互いの魔力が体内で反発し、身体に激痛が走ります。
そして、私がルナちゃんと契りを結ぶのに一番悩んだことが種族変異です。
これまであまり例がありませんが、異種族と契りを交わした前例があります。
1つ目の例では、エルフが精霊魔法を使えなくなりました。
2つ目の例では相手の容姿が変異しました。
3つ目の例では精霊魔法が使えなくなった変わりに魔法が使えるようになりました。
これらの少ない前例で様々な違いが出ています。私がルナちゃんと契りを交わすことでルナちゃんにどんなことが起こるのか全くわかりませんでした。
ですが前例にとても嬉しい話がありました。それは例え相手の容姿、能力が変わってもお互いに信頼しあい、姉妹でいられたことです。
私はルナちゃんが変わっても愛し続けられる自信があります。
ですが、ルナちゃんは?何も知らないであろうルナちゃんに何の説明もせず、契りを結び何かが変わっても私を信じてくれるでしょうか?愛してくれるでしょうか?不安で不安でしかたありません
言ってしまいたい。でも、ルナちゃんに嫌われたくない。ずっと一緒にいたい。共に歩みたい。
気づいたときには、私はこの胸の逆らいがたい衝動にまかせ言葉を発していました。
「私と姉妹の契りを結びましょう!!」
あぁ、言ってしまいました。ルナちゃんはどんな反応をするのでしょうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・
あれ?何の反応も無いですね。
「私と姉妹の契りを結びましょう!!」
今度はしっかりと聞こえていたみたいです。
何かを真剣に考えているようでした。
もしかして、『姉妹の契り』のことを知っているのでしょうか?
ルナちゃんは真剣に考えた後とても嬉しい返事を私にくれました。
「いいですよ。私からもよろしくお願いします。」
私は声が弾むのを自覚しながら『姉妹の契り』の説明をしました。
私は指先に精霊魔法で切り傷をつくり、ルナちゃんと指先を合わせます。
ルナちゃんは魔力制御をできないとの事でしたので、私が変わりにすることにしました。
驚いたことにルナちゃんの魔力量は私と同等かそれ以上でした。
エルフ族でトップクラスの私と同じ魔力量だなんて、人間では世界最高クラスでしょうね。
魔力の交換を終え、誓いの言葉を唱えます。
これで私とルナちゃんが姉妹になれるかがわかります。
どうか『姉妹の契り』が結べますように。
どうかルナちゃんに嫌われませんように。
私はそんな想いと共に言葉を発しました。
指先から暖かい赤い光が零れ、私たちを照らしています。
光が収まると何も変化がないように見えるルナちゃんがそこにいました。
「ルナちゃん、これで姉妹の契りは完了です。これから私たちは姉妹よ♪」
『姉妹の契り』を結べた嬉しさ、ルナちゃんが私のことを愛してくれていることの嬉しさ、相手が何も変わっていないことの嬉しさで私の声はとても気持ちよくでてきました。
「私はエルネスと姉妹になるのですね」
「違うでしょ。私のことはエルお姉ちゃん、もしくはエルと呼んでね」
妹が欲しかった私はお姉ちゃん風を吹かせてルナちゃんにお願いしました。
「わかかりました。エルお姉ちゃん」
う、嬉しい。そして、恥ずかしい。お姉ちゃんと言われることがこんなに嬉しいことだったなんて。
「これからよろしくお願いしますエルお姉ちゃん」
「こちらこそよろしくねルナちゃん」
最高の妹ができて、私は今最高に幸せです。
~Side Out~