明かされた真実
ユリウスは宿舎に着いた。アンドリューが先に入っていき、ユリウスも彼の後に続く。中に入ったアンドリューは「やあ、連れて来たよ」と誰かに話しかけた。その相手を見てユリウスは驚く。アンドリューが話しかけたのは黒猫姿のレヴァンだった。
(どういうことだ?先生が猫に話しかける趣味を持っているとは考えにくい・・・・・・彼はレヴァンの正体を知っているということか・・・・?)
状況を把握できないユリウスはレヴァンへと視線を向ける。レヴァンはユリウスに大丈夫だという視線を返しながら頷いた。レヴァンが大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。レヴァンを信じたユリウスは、まずソファーに腰掛けた。ユリウスの向かい側にアンドリューも腰掛け、その両隣りにソニアとダニエルが立つ。レヴァンはユリウスの傍らに座った。
(・・・・ソニアさんとダニエルさんまで関係ある話なのか?)さらに不思議に思いユリウスは思考を巡らせていたが、レヴァンが話し始めた為打ち切った。
「まず始めにユーリに言っておくことがある」
「何?」
「そこのアンドリューと名乗っている奴は悪魔だ。本名はミハエル。・・・・俺の昔からの知り合いだ」
ユリウスは特に驚いた様子は見せなかった。
(・・・・・・先生が悪魔・・・ね。妙に魔力が大きいと思ってたらそういうことか。だが、なぜ悪魔がこの学園で教師をしている?)
「先生が悪魔だと言うなら、なぜこの学園に居るんですか」
「ユリウス君、僕も疑問を持っていてね。なぜ君が悪魔であるレヴァンと行動を共にしているのか。君はいったい何者なんだい?」
ユリウスの質問にアンドリューもといミハエルは質問で返してきた。
・・・・・この先生。ではなく、ミハエルと言う男は、俺の一番嫌いな人種だ。勿論、ただの馬鹿も嫌いだが、まあ、馬鹿は使いようってね。
ミハエルのように相手の腹の内を探る奴は、扱いが面倒臭くて嫌なんだよ。俺は扱いやすい奴が大好きだからね。
まあ、彼のそんな性格が自分自身のようで嫌いなだけかもしれないけど?
とにかく、いつまでも腹の探り合いをしている訳にもいかないだろう。
面倒臭いのでユリウスは先に折れることにした。
「レヴァン。俺にこのミハエルさんと言う人を紹介したということは、君にとって信用できる相手なんだね?」ユリウスは隣に座るレヴァンに確認のため聞いた。
レヴァンは真っ直ぐユリウスの目を見て答えた。
「ああ。奴なら大丈夫だ。仮にも元魔王の臣下だった男だからな」
それを聞いてユリウスは、なるほどと思った。だが、そんなユリウスとは逆にミハエルは怪訝な表情をしている。ソニアとダニエルも同じような顔をしていた。
「レヴァン。なぜそんなこと彼に言う必要があるんだい?」
ミハエルは警戒している。無理もない。彼の素性はこの大陸では決してバレてはいけないのだから。人間や精霊にバレたら終わりだ。
レヴァンは「すぐに分かる」とだけ言った。ユリウスは周りが落ち着いてきたところを見計らって話し始める。
「俺が何者なのか、でしたね。俺は元魔王アレクシスの実の息子。そしてレヴァンは父の元従者であり、今現在は俺の従者です。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ミハエル、ソニア、ダニエルの3人は驚愕の表情をする。少しの沈黙の後、始めに口を開いたのはミハエルだった。
「・・・・見たところ、ユリウス君は悪魔混じりだよね?なら、それはありえない。・・・・レヴァンが言ったように僕は彼の臣下だったんだ。人間たちの大陸に行っていたなら、それに僕が気づかないはずがない」
「その通りですわ。私もアレクシス様のお世話しておりましたが、そんな素振り一度も見ていません・・・・・ダニエル、見たことあります?」
「いいえ・・・・・」
3人とも否定する。だが、これは事実であって今さらどうすることもできない。信じてもらうしかないのだ。
「お前たちがいくら否定しようと、これは事実だ。それに、アレクの力ならお前らの目を欺くくらい簡単だろう。仮にもあいつは魔王だったんだ」と、レヴァンは3人に言い放ち、3人は苦い顔をする。
「・・・・なぜ僕らに子供の存在を隠す必要があるんだい?それに、アレクがユリウス君を隠していたならレヴァンはどうやって彼の事を知ったんだい?」ミハエルはレヴァンに問いただした。
「・・・・・・ミハエル、お前、聞かなくても分かってるだろ。ユーリは悪魔と人間の子だ。お前や他の者にも受け入れられるはずがないと思ってアレクは隠してたに決まっている。それと・・・・・・俺がユーリの存在を知っているのは、アレクに聞いたからだ」
「いつ?」と、ミハエルはさらに問いただす。
レヴァンは一瞬口を閉ざしたが、またゆっくりと開く。
「・・・・アレクが殺される前日だ」
「・・・・・・・・・」
みんな嫌なことを思い出したのか、黙り込んでしまった。沈黙が続く。
ユリウスはいい加減この空気に疲れてきた。
「で、結局3人は悪魔ということでいいんですね?」とユリウスは沈黙を破る。
ユリウスの言葉に3人は一応頷いた。
「では、ミハエルさん。俺はまだあなた達がここに居る目的を聞いていません。そろそろ答えてもらいたいんですけどね?」
ミハエルは腹の探り合いを諦めたのか、一度溜息をついてから話し始めた。
「最初は、現魔王。ラザロスを倒すためにこの学園を利用しようと潜り込んだ。勿論、今もその思いは変わらない。だが、それよりも先にやりたいことができてしまったんだ。」
「何を?」
ミハエルは苦笑いし、瞳を伏せた。
「・・・・・悪魔混じりの子たちの保護だよ。始めにリヴァインに来た時、僕は驚いたよ。彼らの受ける扱いの酷さにね・・・・・」
ミハエルの言葉を聞いて、ユリウスは苦虫を噛むような顔をした。ユリウス自身も悪魔混じりの身。彼らとは同じ境遇だった。だから、彼らがどれ程の扱いを受けているかは痛いほど分かる。
「彼らの扱いは家畜以下だ。家畜ですら餌と寝床は与えられるというのに、彼らはそれすら与えられない。ただ一つ、与えられるのは暴力だけ。僕はそれを目の当たりにして、本当に悲しかった。僕ら悪魔の住むローデリアでもそこまで酷い扱いをされている者は見たことが無かったよ。この大陸に来て、人間の非道さに心底飽きれた。だから僕は少しでも多くの悪魔混じりの子たちをこの学園のDクラスに保護しようとしているんだ」
「・・・・この学園のDクラスはあなたが作ったんですか?」
「そうだよ」
「・・・・・よく、人間や精霊が許しましたね」
「うん、まあ、ほとんどの者には受け入れられていないけど、ここの学園長がね、話の分かる人だから。学園長にだけ許可をもらった感じなんだ。彼は僕が悪魔なのも知っている」
「・・・・あなたを悪魔と知っていてこの学園に留め、悪魔混じりの保護まで認めるなんて・・・何者なんですその学園長は」
「さあ?・・・・見た感じはただの人間だよ」
・・・・・よく分からないが、この学園の最高権力者は悪魔を嫌ってはいないようだ。うまくいけば、簡単に学園を利用し、魔王と対峙できる日が早く訪れるかもしれない。これはいい事を聞いたな。
・・・・・・とりあえず、まずはミハエルたちを仲間にする必要があるな。彼らを仲間にすれば、ローデリアからリヴァインに逃れてきた悪魔たちも仲間にできる可能性が高くなる。
「ミハエルさん達の目的は最終的には魔王ラザロスを倒すことですよね?」
ユリウスの問いにミハエルは頷いた。
「でしたら、俺と手を組みませんか?俺がこの学園に入ったのも貴方たちと同じ目的ですから」
ミハエルは、まさかそんな事を言われるとは思っていなかったという顔をする。
「・・・・・君もラザロスを殺したいと?」
「ええ、これは仇討ちですからね」ユリウスは微笑む。
「・・・アレクシスの子というのが本当かどうか定かではないけど、仇討ちとは、父親の?」
「まあ・・・・父と母の、ですよ」
「・・・・母というのは、人間の方だろ?亡くなってしまったのかい?」
ユリウスは冷笑を浮かべて語る。
「ええ、悪魔に・・・・・ラザロスの手下に殺されました。本当の狙いは俺だったんですけどね・・・・この通り、俺は生き延びてしまった」
ユリウスの話を聞き、ミハエルは「すまない」と言った。何に対しての言葉なのかは深く追求はしない。別に同情は必要としていないからね。今、必要なのは力と共に闘う仲間だ。
だが、彼らまだは俺が元魔王アレクシスの実子だと信じていないようだ。やはり、このままでは仲間にはなってもらえないかな。
・・・・・・・・・しょうがない。
「まだ俺が元魔王の実子と認めてもらえないようなので、証拠を見せましょう。その方が手っ取り早いですし」
そう言うと、ユリウスは立ち上がりレヴァンに結界を張るように言った。
ユリウスはゆっくりと目を閉じる。
「では、いきます」
その言葉の直後、リビングの気温が一気に下がり、部屋の家具がガタガタと動き始める。
張り詰めた空気にミハエル、ソニア、ダニエルは息を飲んだ。
ユリウスの魔力がぐんぐん上昇していく。ミハエルはユリウスから感じる膨大で禍々しい魔力に恐怖さえ感じた。
(・・・・・・この魔力の感じは・・・アレクシスと同じ・・・・)
ユリウスの銀色の髪が徐々に濃くなっていき、漆黒の髪に変化した。閉じられていた目がゆっくりと開かれる。
その瞳は―――――――
「・・・・・・あか・・・」
ぼそりとミハエルが呟いた。
そう、ユリウスの瞳はまるで、血のように真っ赤に染まった深紅の色。普通、悪魔たちの瞳の色は黄金色だ。だが、極わずかな者だけが異なる瞳の色を持つ。そのわずかの者とは、魔王の直系の者達だ。彼らだけが、赤い瞳を持って生まれる。
そして、ユリウスの深紅の瞳は魔王の血筋という証。これでは疑いようもない、彼は紛れもなく魔王の子・・・。
「・・・・・確かに、間違いないようだね。・・・・まさか、アレクシスが人間と子を作っていたとは・・・・」ミハエルは驚き半分呆れ半分といった表情し、「本当に赤い瞳をしているのね・・・・驚きました」と、ソニアはビックリ仰天の顔をしている。ダニエルも同じく。
「で、どうですか?さっきの俺の申し出、受けてもらえますか?」
ユリウスは深紅の瞳で三人の顔を順番に見ていく。ソニアとダニエルは困ったというようにミハエルの様子を窺う。どうやら、彼らはミハエルの指示に従うようだ。ミハエルさえ説得すれば二人も仲間になる。
ミハエルは静かに目を閉じ、じっとしていたが、数分後、彼はフッと表情を緩め、「分かりました。その申し出お受けしましょう。ユリウス様」とソファーから立ちあがり、胸の前に手を置いて恭しく首を垂れる。ミハエルの今までの口調とは打って変わった話し方にユリウスは苦笑いをした。
「有難うございます。ですが、・・・・・その呼び方は今後しないようにして下さい。いくら魔王の血を引いているといっても俺はただの悪魔混じりです。あなた方が気を使う必要は一切ありません。ラザロスを倒し、新たに魔王となった者に尽くして下さい」ユリウスは淡々と言った。
正直、こういう扱いは慣れない。今まで蔑み怖がられるだけの生活しかして来なかったのだから。
だが、ユリウスの言葉に、なぜかミハエル、ソニア、ダニエルは悲しいような、困り果てたようなよく分からない表情をする。
ユリウスは怪訝に思い「どうしたんです?」と聞いた。
ミハエルは、慎重な面持ちで話し出す。
「・・・・・・実は、魔王の血を引く我らが王族はもう、貴方だけなのです」
一瞬、ミハエルが何を言ったのか理解できなかった。
「それは・・・」どういうことです。と、問おうとしたが、レヴァンが先にミハエルに詰め寄ったので言葉を飲み込んだ。
「それはどういうことだ。王族は一人二人だけではないだろ。なぜ十年やそこらで王族がいなくなるんだ。俺がローデリアを出てから何があった」
ユリウスは、レヴァンから乱れた魔力を感じた。常に魔力を完璧に消しているレヴァンのこの動揺ぶり・・・・・いや、きっとこれは動揺などではないだろう、行き場のない怒りが漏れ出しているのだ。多分、レヴァンはミハエルの口から告げられることが、何なのか分かっている。だから怒りが抑えきれないのだろう。ユリウス自身、なぜ王族がいなくなったのか、大体見当はつく。
ミハエルはユリウスの想像通りの答えを口にした。「現魔王ラザロスの命により、王族全員が殺されました。しかし、これは極少数の者しか知らないことです。これを知っているのは、我々とリヴァインに逃げてきた者、そしてラザロスとその側近だけです」
ユリウスは先ほどから疑問に思っていることがある。
(王族はもう俺だけだとミハエルは確かに言った。なら、あいつは・・・・)
「ミハエルさん、ラザロスは王族ではないんですか?」
「ええ、彼は王族の血を引いていません。ただの貴族でした」
「・・・・では、王族以外で魔王になることは可能ということですか?」
「いえ・・・・本来は王族の者が魔王となることが決まっています。ですが、今回は異例のことです。ラザロスは自らを魔王と言っていますが、実際は多くの悪魔が彼を魔王と認めていないのが現状です」
「認めていない?でも父が死んで既に十年は経っています。十年も魔王をしていて、未だに民衆に認められていないと?」
「理由は簡単です。ラザロスは歯向かう者には容赦しません。彼のやり方に不満を持つ者はことごとく殺されていきます・・・・民衆たちはただ言うことを聞くしかないのです。彼は暴力によって魔王という地位を守っているに過ぎません」
・・・・・倒すべき敵はラザロスとその駒だけのようだ。多くの悪魔はラザロスを憎んでいる・・・ね。
「では、・・・・・ラザロスさえ倒せば全て解決ということですか」
ユリウスのこの言葉をミハエルは否定した。
「いえ、解決ではありません」
「なぜ?」
現在、繰り広げられている戦争は、現魔王が人間を根絶やしにしようと始めたものだ。全ての元凶であるラザロスさえ倒せば、人間や精霊と争うこともなくなり、悪魔たちも暴君魔王がいなくなり安心して暮らせるではないか。これの何が解決でないのか。ユリウスにはまったく理解できない。
ミハエルは真剣な表情で「新たな魔王が必要です」と言う。
それはそうだろう。生き物には必ず従える者と従う者がいる。従える者がいないと民はまとまらないものだ。従える者が気に入らず反乱を起こすことはあるが、結局、別の者がその役目を負うことになる。だが、そんなことユリウスにはどうでもよかった。ユリウスはラザロスを殺せさえすればいいのだ。その後のことなど悪魔たちが勝手にやっていれば済むことだ。
「確かに新たな魔王は必要ですね。ラザロスを倒してから頑張って決めて下さい」
ユリウスの返答にミハエルは又もや否定する。
「いえ、その必要はありません。もう決めましたから」
「準備が早いですね。それは良かったです。では、後はラザロスを倒すだけですね」
ユリウスはどうでもいいといった風に淡々と言葉を交わす。が、ミハエルの次の言葉にユリウスは唖然とした。
「はい。次期魔王はユリウス様にお願いしたいと思っております」
・・・・・・・・・こいつの頭は虫でも湧いたのか?
「・・・・・先ほども言いましたよね?俺は悪魔混じりです。魔王になる資格もないし、そのつもりも全くありません。王族が滅びたなら、悪魔たちの中で納得できる者を選んで下さい」
ユリウスは断固拒否したが、ミハエルはしつこく食い下がって来る。
「確かにユリウス様は悪魔混じりです。ですが、前魔王に匹敵するその強大な魔力と悪魔たちを従えるに相応しい深紅の瞳を持つ貴方様に是非、魔王なって頂きたいのです」
ユリウスはうんざりしてきた。
「俺はそんな器じゃありません。他を当たって下さい」
「いいえ、貴方が承諾して下さるまで言い続けます。ソニアとダニエルも賛成でしょう?」
ダニエルはどうすればいいか分からずでオロオロしているが、ソニアは「勿論ですわ!」と大賛成だ。
ユリウスはどうしたものかとレヴァンを見やる。レヴァンは溜息をつきながら「その件はラザロスを倒してからでいいだろう。ユーリもそんな重大なこと今すぐには決めれない」
レヴァンの言葉にミハエルはしょうがないといった顔をする。
「そうだね。まずはラザロスを魔王の座から引きずり降ろさないと」
ミハエルはそう言ってレヴァンからユリウスに視線を戻した。
「ですが、ユリウス様。ラザロスを倒した後には、良いご返答をお待ちしております」
・・・・・・良い返答ね、あくまでこいつは俺を魔王にしたいらしい。その気は無いと言っているのに。
「とりあえず、いい加減その話し方やめてもらえませんか?そういう話し方された経験がないので正直気持ち悪いです。普通に話して下さい。仮にも貴方はこの学園の教師で、俺は生徒なんですから」
ミハエルは肩をすくめる。
「分かった。でも、いずれはこの口調にも慣れてもらわないといけないから、このメンツの時だけは魔王陛下に対する話し方で行くよ」
・・・・・だから、ならないと言っているだろう。ユリウスは溜息を吐きながら、扉へと足を向ける。
「俺は一旦、訓練に戻ります。今後の動きに関しては、また後日話し合いましょう」
そう言い残してユリウスは扉を開け訓練場へと戻って行った。
ユリウスが宿舎を出て行った後、ミハエルはレヴァンに顔を向ける。
「ところでレヴァン、なぜ君がアレクシスの死に際にそばにいなかったのかずっと疑問だったんだ。あの時一体どこに居たんだ。なぜ主のそばを離れた」
ユリウスが居た時とは打って変わってミハエルの問いただす言葉には怒気が含まれていた。ミハエルが怒るのも当然のことだろう。もし俺がアレクのそばを離れなければアレクは死ななかったかもしれないのだから。
「・・・・・・アレクに命じられたんだ。ユーリを守れと・・・・どうやって情報を掴んだか分からんがラザロスはユーリの存在を知っていた。アレクはユーリとその母親の命を脅しに使われたんだ。そして、アレクは殺される前日、俺にユーリと母親の存在を明かし、自分に何が起きようと二人を守り抜くよう命じた。その後、俺は急いでリヴァインに向かった。が、一足遅かったんだ・・・・既に母親はラザロスの手下に殺されていた。そして、俺の目の前には怒り暴走するユーリの姿があった・・・・。俺は、アレクの最後の命令を果たし切れなかった・・・・・だから、ユーリだけはこの命に代えても守り抜くと誓った」
レヴァンの話を聞いたミハエルの顔からはもう怒りの感情は出ていなかった。それと変わって、悔しさと悲しみの表情をしていた。
「アレクシスは・・・・妻と我が子を守るために・・・・・君を・・・」
「ああ、あいつは昔からそういう奴だった。自分より他人のことを優先する、王らしくない王だ・・・・・確かに俺がアレクの命に従わなかったら今とは違う未来になっていただろう。だが、その違う未来をアレクは決して望まなかった。その未来を受け入れてしまったら、アレクが命よりも大切にしていた宝を失ってしまうからだ。俺も、ユーリを優先した事を悔やんだことはない。ユーリは、アレクにとっても、俺にとっても大切な宝だ」
「宝か・・・・・レヴァン。君の判断は正解だよ。アレクシスはもう死んでしまったが、ユリウス君の中に彼の存在を確かに感じるんだ。ユリウス君は父親にそっくりだ。・・・・・・今まで、彼を守っていてくれて有難う。これからは僕も命か掛けてユリウス君を守るよ。アレクシスの代わりにね」
ミハエルは柔らかく微笑み、レヴァンはフイッとそっぽを向き「当たり前だ」と言い返す。
二人のやり取りを見守りながらソニアとダニエルも共に微笑んでいた。