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MONQVI  作者: 路瀕存
3/5

夏の昼間は希望にみちあふれたふりをしている

 夏の昼間は希望にみちあふれたふりをしている。

 だれしもがやいばをたずさえて、だれかがトリガーを引くことを待っている。

 夜はすぐそばで手を拱いていて、狩人のような目つきで付け狙うのに、だれもがそれに気づかないふりをしている。

 空を仰いだわかいおとこは、あつさゆえ。憎むべき相手を見定めて、恨みつらみを吐き捨てて。

 連れたち歩くあのひとは、楽しく痙攣しながらも腋汗を隠すことに余念がない。

 隣り合わせの初老のおとこは、松脂と既婚の匂いに蝶がむせぶ金のなる木、実は肩書きに肩甲骨は陥没して、胃はすでにぺしゃんこで、なおも仮面を被るから。鬱の。

 あすこでベビーカーを押している、紫外線対策ばっちりな黒装束のご婦人は、陽気な未亡人。陽炎と、太陽にはにかみながら、マタニティブルーにかたかたふるえている。

 それをつけまわすベンチの若造は徒競走にやぶれた席取りゲームの敗者で、やぶれた新聞としわくちゃのフィリップマロウと日課の裁判傍聴を携えて松田優作ごっこを夢にみている。

 しかしそれを病室の高層から覗く家政婦は、きもちのわるいストーカーだと思いながらボタンをおして通報した。

 −−おまわりさん、あいつ、ストーカーなんです。おくさまをつけまわして、犯すつもりなのだわ。

 −−ね、おばあちゃん、きょうはいい天気だねえ。お部屋に戻ろうねえ。ああそうだねえ、きのうは火曜日だったものねえ。

看護師は、けたたましく鳴るビープ音源のスイッチを切って、さも安寧たらんと努めている。あと二日たったころにやってくる、向かいの金融業とのお食事会に着て行く服を夢想することで心の安寧をかろうじて保つ。

 夏の街でまもるべきは一つ−−我が身のことでさえなければ。

 さもなければ春に追われ、秋に巻き込まれ、冬の餌食となるのだ夏は。

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