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嫌い  作者: 憂緒
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嫌い

夜の遊園地。隣からは少し低く、なんだか気持ち悪くも心地よい声がする。

歩く私の手には、私の手と同じくらいの大きさだけど男らしい手が重なっている。

なんだか懐かしく感じた。

楽しく話し、大した内容ではないが、二人で沢山笑いあった。

不思議な気分だった。

遊園地の綺麗なライトアップの眩しさに、つい目を閉じてしまう。


目を開けると、そこは見覚えのある天井。

全て夢だった。

夢から醒めた私は現実を知り、なんとも言えない喪失感に襲われた。


あの夢は、今ではもう近くにいない男とのデートのようなものをする夢だった。その子と私が付き合っていたわけでも、デートをしたことがあるわけでも、手を繋いだわけでもない。

そうなればよかった、という私の理想をうつしだした夢だった。


遡ること一年前。中学一年生。

入学当初、人見知りの私は小学校からの友達としか話すことができなかった。

でも、一人話しかけてくれる子がいた。

M子だった。

私は、M子とよく話すようになった。

M子とはとても馬が合った。

クラスにお互い友達ができなかったから、ずっと一緒にいた。

一緒に登校し、一緒に移動教室に行き、一緒にふざけて、一緒に遊んだり。私とM子はすぐ打ち解け、大の仲良しになった。

M子には、クラスに仲のいい男友達が一人いた。それが夢に出てきた男。

気づけば、その子とも仲良くなり、自然と友達が増えた。

人見知りだった私も、友達が増えていくうちに、いつの間にか人見知りをしないようになった。

学校では、私も、その友人たちも、真面目な方ではなかった。授業中の私語は絶えず、声も大きく、提出物もろくに出さず、とにかく遊んでいた。

今ではもう私はそんな風に騒ぐことはない。


今から数ヶ月前、私は突然、あの男に関わりを絶たれてしまった。原因はだいたい想像はつくけれど、明確にはわからない。

きっと彼も、いろんなことで疲れてたんだと私は思う。そう思いたい。

恋愛が上手くいかない、アイツが嫌い、家族がウザい、などとよく言っていた。

ある時から、私もその子も、学校での揉め事や教師からの呼び出しが増えた。

それは、中学二年生になった、クラス替えをしてすぐのことだった。

新学期のクラス替えで、一年生の時に中がよかったメンバーはほとんどバラバラになってしまった。

それぞれみんなまた別の子と仲良くなり、あのメンバーで遊ぶことはなくなった。話すことさえなかった。

私は、また違うメンバーで仲良くなった。

私、その男、小学校からの親友S子、中学から仲良くなったA子、同じクラスになったH子、同じ小学校のY男、一年生の頃あのメンバーだったK男。

みんなクラスが同じというわけではないけれど、この7人で遊ぶことが増えた。

昼休みには勝手に空き教室に忍び込んで、よくわからないスプレーで遊んだり、怒られるようなことをしていた。

そこそこ楽しかったと思う。

ある日、教師からみんなそれぞれ呼び出しをされた。空き教室の件だった。

誰かが先生にチクったんだろう。

私は怒られるのが嫌で、その空き教室にはあまり入らず、スプレーでは遊んでなかったため、私は注意で終わった。

でも、スプレーで遊んでいた他の子は怒られていた。

他にも怒られることがいろいろあった。

そうしていくうちに、だんだんと遊ぶことが減った。遊ぶことが減っただけで、休み時間話したりはした。

それでも、その男に関わりを絶たれてしまった。

私といるとろくな事がないらしい。


私は、すごくその子が好きだった。色んな意味で。

人として、友達として、もちろん恋愛でも。

本当に好きだった。

その子は、ずば抜けて頭が良く、いろんなことを知っていた。話が上手かった。一緒にいてとても楽しかった。

私はあいつのいろんなことを知っている。あいつの駄目なところも良いところも知っている。つもり。

頭が良い。話が上手。楽器が上手。歌が上手。字が綺麗。実は優しい。

でも、

提出物は出さない。口が悪い。わがまま。人を馬鹿にしがち。

でも私は全て好き。

また話したい。また笑いたい。またあいつの上手い話を聞きたい。またふざけたい。

私の友達はみんな、なぜあいつにそこまで執着するのか、と聞いてくる。あいつのどこがいいの?と。

私だってわからない。

誰と話してもやっぱりあいつに勝てる人はいない。なんでもできそうだけど、意外と弱いところは多い。意外に素直になる時もある。優しい一面もあるんだよ。

私は、あいつのどの元カノよりもあいつのことを語れる自信がある。知っている自信がある。

カラオケに行って、毎日連絡を取り合って、電話して、公園で話して、二人でギターをして、ふざけあって。

いろんな思い出がある。

いろんなところが好き。

でも、どれも鮮明には思い出せない。

声。顔。表情。匂い。仕草。癖。話し方。

全て好きなのに。全て知っているのに。

なんだかもう思い出せない。写真も動画もトーク履歴も全て消した。

忘れたくないけど、忘れたい。思い出したくないけど、思い出してしまう。

なぜこんなに、付き合ってもなかったのに、ただの友達だったはずなのに未練のようなものがあるのか私にも誰にもわからない。


楽しかった。嬉しかった。気分が良かった。心地よかった。楽だった。

どうしたらいいのかわからない。

気持ち悪い。

好き、

だけど嫌い。

幸せになってほしい。

不幸になれ。


死んでしまえ

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