追跡者の令嬢と、場違いなピクニック
「……セシリア様。なぜ、ここが」
スープを飲んでいたカイルが、思わずスプーンを落としそうになります。
豪華な馬車を森の入り口に乗り捨て、高級な靴を泥だらけにして現れたセシリアは、エマさんの家を見渡して絶句します。
「見てなさい、今すぐ王都へ連れ戻して……あら? 嫌ですわ、その持っている『白い塊』は何?」
アル君が差し出していたのは、先ほどの「膨らみすぎた失敗パン」。
「これ、僕が作った魔法パンだよ! お姉さんも食べる?」
「お、お姉さま!? ……ふん、礼儀のなっていない子供ですわね。でも、そこまで言うなら、毒味くらいして差し上げますわ」
セシリアは手袋を脱ぎ、指先で小さくパンをちぎって口に運びます。
王宮のシェフが焼く完璧なクロワッサンとは程遠い、歪な形のパン。
けれど、そこにはアル君の純粋な魔力と、エマさんの温かな祝福、そして精霊たちが踊った跡(隠し味)が詰まっていました。
「…………。……おかわりをいただけますかしら?」
あんなに「王都へ帰る」と息巻いていたセシリアは、気づけばエマさんの家の縁側にカイルと並んで座り、二人で一つのパンを分け合っていました。
その後の日常:セシリアの「異文化交流」
• ドレスの裾をまくって: エマさんに「そんな綺麗な服じゃ汚れるわよ」と言われ、貸してもらった大きなエプロンをドレスの上から着用。意外と気に入る。
• アル君との勝負: 「私の高貴な魔法を見せてあげますわ!」と張り切るものの、精霊たちはセシリアの気取った魔法より、アル君の素朴な魔法に集まってしまい、悔しがる。
• カイルとの距離: 剣を捨てて穏やかな顔になったカイルを見て、連れ戻すどころか「私もここで少しお休みしますわ。カイル様を見張らなければなりませんからね」と居座ることに。




