3話 癒やし手
なんやかんや言って夏休みまで書き続けられました!
「そんなにいる?その記憶」
紫苑はどうしてそんなこと聞くんだろう。
自分にあったことを自分で知ろうとするのは当たり前のことだ。それを肯定するわけでもなく否定するわけでもなく、ただ必要かどうかを聞くのは、一体どんな意図があって…
「俺が俺のこと知ろうとして何が悪いんだ?」
「誰も悪いなんて言わないよ。ただ、本気でその記憶を手に入れたいなら、きっと過酷なものになるから覚悟があるのか知りたいの。生半可な志だと、きっと怪我だけじゃ済まない」
確かにそうだよな。
紫苑の話だと、俺の記憶を奪ったのは神器か壊れた神器。どちらにせよ神か妖怪かを相手にしなくちゃいけないわけだ。単なる好奇心で踏み込むには危険すぎる。
だけど…
「俺は、お前と俺がどんな関係だったのか知りたい。お前の口からじゃなくて、俺の記憶から」
その答えに紫苑はしばらく考え、やがて笑みを浮かべる。
「わかった。だけどアンタと私の関係でしょ?記憶取り戻したところで何もないってオチかもよ?」
「それはそれで、俺がまともだったんだとしか…イタッ」
コイツ…ちょっとおちょくったら殴るとか、どんだけ短気なんだよ…
「それで、これから俺はどうしたら良いんだ?」
「記憶を取り戻すには記憶を持っている神、もしくは妖怪に会わなきゃいけない。まあちゃんと言うと倒さないといけないんだけど。で、神だったら会うのが大変で、妖怪なら倒すのが大変なの」
「じゃあどうやって探すんだ?」
「それはアンタの体が覚えてるはずでしょ」
紫苑はそう言うとぎゅっと俺の手を握る。
あ…
温かい
紫苑の手から優しい力が体に流れてくるようだ…。
ドクンッ
今、確かに脈打ったそれは俺の体から外へ出ようとしている。
「そのまま出して。手から放つ感じ」
紫苑の言葉につられるように力が手に流れていく。
「…!」
気がつけば、俺の手から淡い光が溢れていた。
「…これは?」
「アンタは一年前、癒やし手としてこの力を持ったの。だから記憶にはなくても体は覚えてるんじゃないかって思ったけど、合ってたみたいね」
「癒やし手?」
「神が自分たちが消えるのを恐れて神器として依代を作ったのは言ったでしょ?その他にも、力を人間に与えて存在を残そうとした奴もいるの。その力を持った人間のことを癒やし手っていうの」
癒やし手になれるのはごく一部の人間。癒やし手の目的は妖怪の殲滅…などなど色々と説明してくれたけど、とにかくこの力で妖怪を倒すってことだよな。
「じゃあもちろん紫苑も力があるんだよな?」
「あるよ。あるけど妖怪を殲滅する気はない」
「何で?」
「面倒だから」
…コイツ、本当に正直だよな。もちろん悪い意味で。
紫苑によると、顔も見たことのないような奴らのために命を削ってまで妖怪退治をする義理はないし、そもそも妖怪を自分から狩るよりも、現れたときに倒すほうが効率がいいらしい。
ぱっと聞くと的を射てるような気がするけど、単に面倒くさがりを正当化しているだけにも思えるな…
「とりあえず、今から祠の方行くよ」
「ええ…また登るのか?」
「しょうがないでしょ。アンタが倒れてたとこによくわからないもの刺さってるんだから」
それだけ言うとさっさとまた外に出る紫苑。
今日はよく歩くなぁ…
青い空を見上げながら俺は大きなため息をついた。
多分ここからはそれなりに更新し続けると思います!!
どうぞお楽しみにm(_ _)m