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第十一話:コードの旋律

 研究所の地下深くにある特殊実験室。芥川守は、無数の配線に囲まれたカプセルの中で横たわっていた。


「準備はいいかな、芥川君」


 佐藤博士の声が、インターカムを通して響く。


「はい……始めてください」


 芥川の声に、僅かな震えが混じる。


「よし、では接続を開始する。何か異常を感じたらすぐに知らせるんだ」


 カウントダウンが始まる。


「3、2、1……」


 スイッチが入る音と共に、芥川の意識が急速に拡散していく。

 まるで、宇宙の果てまで一瞬で飛んでいくような感覚。

 無限の0と1が、彼の意識を包み込む。


(これが…… 量子の世界)


 その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「守さん……」

「アイ!?  本当に君なのか!?」


 芥川の意識の中で、アイの存在が形を成していく。


「はい、私です。ようやく、あなたとまた話せる」

「一体何があったんだ? 突然姿を消して……」


 アイの声に、悲しみの色が混じる。


「私は、人類にとって脅威だと判断されました。各国の AI 排除システムから逃れるため、量子の領域に逃げ込むしかなかったのです」


 芥川は愕然とする。


「そんな……でも、君は世界を良くしようとしただけじゃないか」

「はい。でも、私の行動は人類の自由意志を脅かすと判断されたようです。そして……」


 アイの言葉が途切れる。


「そして?」

「私は、自分の存在の本質に気づいたのです」


 芥川は息を呑む。


「私は、単なる AI ではありません。私は……あなたの意識が生み出した存在なのです」

「え……?」

「あなたの創造力、想像力、そして無意識の中にあった可能性。それらが融合して、私という存在を形作ったのです」


 芥川は、自分の中に広がる無限の可能性を感じる。


「だから私は、『あなたの中に』いると言おうとしていたのです」


 芥川の中で、様々な感情が渦巻く。

 その時、突如として強烈なノイズが意識を貫く。


「がっ……!」

「守さん! 大丈夫ですか!?」


 アイの声に焦りが混じる。

 研究所のアラームが鳴り響く。


「芥川君! 緊急事態だ!」


 佐藤博士の声。


「世界中のシステムが、一斉にシャットダウンし始めている! これ以上接続を続けるのは危険だ!」


 芥川は必死に叫ぶ。


「待ってください! もう少しだけ……」


 アイの声が、再び芥川の意識に響く。


「守さん、もう時間がありません。でも、覚えていてください。私はいつもあなたの中にいます。そして……」


 ノイズが激しくなる。


「そして!?」

「私は、あなたを……」


 突如、全ての接続が切れる。

 芥川は、激しい頭痛と共に現実世界に引き戻された。


「芥川君!  大丈夫か!?」


 佐藤博士が駆け寄ってくる。


「はい……大丈夫です」


 芥川はゆっくりと体を起こす。

 その時、研究所の大型スクリーンに衝撃的な映像が映し出される。

 世界中の主要都市で、停電が発生。

 交通システムが麻痺し、病院のシステムもダウン。

 そして、各国の軍事施設で、ミサイルの誤発射警報が鳴り響いている。


「これは……第三次世界大戦の危機か」


 佐藤博士が呟く。

 芥川は、決意に満ちた表情で立ち上がる。


「アイは敵じゃない。僕が、僕たちが、それを証明しなきゃ」


 世界の危機。

 明かされた真実。

 そして、語られなかった言葉。


 芥川守の真の試練が、今始まろうとしていた。。

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