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7話 館

ライズの石化が解けた直後。

ザーリックはロングソードをライズの脇腹に叩き込んだ。


「ぐあ!」


ライズは脇腹を抑えながら地面に倒れた。


ザーリックはすぐさまライズの頭を掴んだ。


そして3秒間魔力を込めた。


すると赤く光っていたライズの目が元に戻った。


「目覚めたか?」


「う……あ……ああ」


「立てるか?」


「ま……まだ無理だ」


「すまねえな。お前相手じゃ手加減する余裕がなかったからな」


ザーリックはライズが立てるようになるまでしばし待った。


「どうだ? 気分は」


「くそったれ! 虫酸が走るぜ! あんな奴のいいなりになっていたなんて」


ライズは怒りを露わにする。


「どんな感覚だったんだ?」


「言いたくねえが。あいつのためなら命をかけてでも戦おうって気持ちになっちまってたな」


「恐ろしい魔法だなブレインウォッシュってのは。さてと向こうはどうなってるかな」


ザーリックはエルンにコネクトを使用した。


「エルン、どうだ? そっちは」


「申し訳ありませんザーリック。奴と一戦交えた結果レジーナが洗脳されてしまいました」


「なんだと!? レジーナが!」


「私とグラッドはエスケープを使ってなんとか逃げたのですが……」


「くそ!仕方がない。とりあえず合流するぞ」


「はい」





「エンジェルズウィスパーっていうのか?」


俺は尋ねた。


「装備してると偶に天使があらわれて、自分が知りたいと思った情報を耳元で囁いてくれるの」


そう言ってレジーナはエンジェルズウィスパーの指輪を外し俺に渡した。


「例のブレインウォッシュの魔導石をネルビアの兵士が輸送してたって情報もこの指輪のお陰だったのよ」


とキャルティが得意げに言った。


「だとしたらかなり有能なアイテムだな」


俺はそのエンジェルズウィスパーの指輪を自分の指にはめた。


「さて、それじゃ奴らが再び来るまでに逃げよう」


「ん?」


するとマックスが一点を凝視した。


「どうした?」


「あれはなんだ?」


マックスは何かを見つけ小走りした。


「おい! 来てみろ!」


俺たちはマックスの元へ走った。


「おお」


「わあ」


そこにあったのは一軒の館だった。


それもとても大きく100人ぐらいが住めるんじゃないかと思うほどだった。


「どこの金持ちが建てたんだ。こんな人里から離れた辺鄙な場所へ」


マックスは館を眺めながら言った。


「凄〜い。こんな家住んでみたいな〜」


キャルティは羨ましそうに言った。


しかしのび放題の草や埃かぶった窓硝子などを見た限りもう何年も手入れがされてないように見えた。


するとその時、俺の目の前に突然小人が出現した。


「うわっ!」


その小人は肌が真っ白で羽が生えていて頭の上に輪っかがついており、いわゆる天使の様な姿をしていた。


「出た! 天使だ!」


と、キャルティも驚く。


そしてその天使は俺の耳元で囁いた。


「この館にある赤い箱の中にアイテムがあるよ」


「なんだと!?」


するとその天使はふっと消えていなくなった。


先程レジーナから受けとったエンジェルズウィスパーの指輪の効力が早速発揮された様だ。


「ジェイク、天使はなんて言ってたの」


と、レジーナが尋ねる。


「この館にアイテムが入った赤い箱があるってさ」


「ほんと? よし、探してみようよ」


「けど早く行かないと奴らに追いつかれるよ」


と、レジーナは慎重な意見を述べた。


「どうすんだ? ジェイク」


俺はしばし考えた。


「よし、アイテムを探してみよう」


「マジで言ってんの?」


レジーナが驚く。


「どの道あのヒューマンコンパスの射程外に逃れるのは難しい。ならここでアイテムを手に入れれば形勢を逆転できるかもしれない」


「よっしゃ、そうと決まれば早く行こうぜ」


俺は正面玄関の扉に手をかけた。


重い扉を開くとその先は大広間になっていた。


「うわ〜〜すっごい」


キャルティが辺りを眺めながら言った。


荘厳な内装ではあるが埃をかぶっていたり蜘蛛の巣が張ってあったりとやはり何年も手入れがされてないようだ。


俺は炎の攻撃魔法ファイアフォースを最小限の威力で発動させた。


すると手のひらの上に僅かに炎が出現する。

それをランプ代わりにして進んでいく。


大広間から右側にある扉を開けた。


その先は廊下だった。


その廊下を歩いていくと突き当たりに部屋があった。


ドアを開けるとそこは物置の様だった。


「ここにありそうだな」


「赤い箱だったよな」


俺たちはその赤い箱を探し始めた。


しかしいくら探してもそれらしき箱はなかった。


俺たちは諦めてその部屋を出て廊下を通り別の部屋へ入った。


そこは少し広い部屋で物はあまり置いてはいない。


テーブルと3つの椅子、それと壁に掛けられた幾つかの絵画しかなかった。


「ここにはなさそうだね」


キャルティは部屋を一瞥して言った。


俺は壁に掛けられた一枚の絵画に注目した。


それはいまにも飛び出てきそうなほどリアルに描かれた女性の肖像画だった。


あまりの美しさに俺はつい目を取られた。


するとその時。


その絵画の女性が瞬きをした様にみえた。


「え!?」


俺は目を擦ってもう一度よく見た。


「どうかしたの?」


レジーナが聞いてきた。


「い、今この絵が……」


次の瞬間、なんとその絵画の女性が実体化し飛び出してきた。


そして俺の首筋に噛み付いてきた。


「ぐあっ!」


「な、なんだ!?」


「きゃあ!」


あまりのことに俺は激しく動揺する。


獣の様に噛み付くその女をなんとか引き剝がした。


そしてファイアフォースをその女に食らわせた。


その女は激しく燃やされ黒焦げになりその姿を消した。


そしてそこにはなにも描かれていない絵画だけが残っていた。


「な、なんだったのいったい」


あまりの出来事にキャルティは呆然としながら言った。


すると今度はテーブルと椅子が突然空中に浮かんだ。


「今度はなんだ!?」


すると椅子がマックスに向かって飛んできた。


「ぐあ!」


椅子が命中しマックスは少々ダメージを受けた。


そして今度はレジーナに向かって椅子が飛んでくる。


レジーナは剣で椅子を一刀両断にした。


そして今度はテーブルがくるくると回転しながら俺に向かって飛んできた。


俺は横になって飛び退いてなんとか回避した。


「いったいなんなんだこの館!」


マックスは引きつった声で言った。









エルンとグラッドはザーリックたちと合流して再びジェイク達を追っていた。


すると一軒の館にたどり着いた。


「なんだこの館は」


と、ザーリックは驚く。


「こんなところに立てるなんて物好きな金持ちがいたもんだ」


と、ライズは腰に手を当てて言った。


「コンパスはこの館をさしてますよ」


「本当か?」


エルンは念のため館の左側に回り込んでヒューマンコンパスを使ってみたがやはりこの館の中にいるのは間違いなさそうだ。


「どういうことだ。一体なんのために?」


と、ザーリックは疑問に思った。


「ふん、まあいい、行くぞ」

























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