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3話 オーガ


だがライズは横に跳びのき紙一重で回避する。


「な、なにするんだキャルティ!!」


「おいどうしたんだ!?」


「気をつけてマックス、こいつ洗脳されてる!」


「なんだって」


マックスとよばれる短髪の男は驚く。


「あの赤い眼はブレインウォッシュで洗脳された証よ」


「ま、待ってくれ。誤解だ。俺は洗脳なんかされてない」


と、ライズは必死に抗議する。


「しらばっくれても無駄よ」


「まてよ、だとしたらライズは一体誰に洗脳されたっていうんだ」


「そこの木の陰に隠れてるやつ! さっさとでてきな」


その言葉に心臓が飛び跳ねそうになった。


完全に隠れていたはずなのになぜばれたのだろうか。


俺は仕方なく木の陰から出て姿を見せた。


「こいつがライズを洗脳してるってのか?」


マックスが俺を睨みつける。


「んで、どうすりゃ洗脳を解けるんだ?」


「簡単よ。魔力を込めて3秒間頭に触れればいいだけよ」


どうやらこの女はブレインウォッシュという魔法についてよく知っていたようだ。


「おいジェイク。どうするんだ?」


この二人がライズと同格の強さだとしたら魔力を消耗したライズと俺ではとても勝てないであろう。


「どうするって……逃げるしかないだろ」


俺がそう言うとライズは頷いた。


俺たちは揃って腕を前に突き出した。


そして風の攻撃魔法エアーシューターを同時に撃ち放った。


「ぐあっ!」


「きゃあ!」


二人が怯んでいるその隙に俺とライズは脱兎の如く駆け出した。


草を押しのけ木々の隙間を縫うように走っていく。


そしてしばらくして後ろを振り返るともう二人の姿は見えなくなっていた。


「よし。撒いたか?」


俺は胸をなでおろした。


「いやダメだ!」


「なに!?」


「キャルティのやつは感知魔法のサーチが使える。撒くことはできねえ」


サーチとは半径500m内にいる人間の位置を知ることが出来る感知魔法だ。


つまり射程内にいる限りこちらの居場所は手に取るように分かるということだ。


先程俺が木の陰に隠れていたのがばれたのもこのサーチによるものだろう。


「くそ! そうなると500m以上差を開かない限り逃げられないってことか」


するとその時、俺は前にいた何かにぶつかった。


「うわっ!」


仰向けに倒れ直ぐに上半身を起こす。


なんとそこにいたのは2mを超える巨漢だった。


短い角と牙と紅い眼球。獣人タイプのモンスター、オーガだった。


「オーガだ!」


ライズが叫んだ。


するとそのオーガの剛腕が俺に襲いかかる。


「わっ!」


俺は地面を転がり間一髪で回避する。


そして直ぐに立ち上がり距離をとった。


口から胸に垂れている血を見るとどうやら先程あの兵士を殺した個体だろう。


「グオオオォ!!」


オーガは威嚇をするように咆哮をあげる。


「くそ! 面倒だなこんな時に!」


ライズが苛立ったように言った。


だが俺はこの時一つの名案が浮かんだ。


「よし! こいつを利用しよう!」


「なんだと!? どういうことだ?」


「こっちに逃げるんだ!」


と言って俺は今まで走ってきた方向を指差した。


「そっちは奴らがいる方向じゃねえか!」


「いいから来い! 早く!」


俺たちは逃げてきた方向へ引き返し走り続けた。


それをオーガがどこまでも追いかけていく。


すると前方にあの二人の姿が見えてきた。


「なんだ!? 引き返してきたぞあいつら」


「それに、後ろにいるのはオーガじゃ……」


二人は戸惑いながらも迎撃態勢になる。


「よし! ライズ! バニッシュだ!」


「そうか! よし!」


ようやく俺の意図を理解したライズは俺の手を握った。


そして補助魔法バニッシュを発動させた。


すると俺とライズの体は透明になり周りからは何処にいるのかわからなくなった。


この補助魔法バニッシュは自分と自分に触れている人間を透明にさせることができる。

ただし透明になっている間はゆっくりとしか動くことができない。


俺たちが透明になったことで標的を見失ったオーガはキャルティとマックスに狙いを定めた。


「くそ! こんな面倒なモンスター連れてきやがって」


「こうなったら戦うしかないよマックス」


キャルティはオーガに向かってサンダーボルトを撃ち放った。


それに続いてマックスが拳で右ストレートを胸に食らわせた。


さらに立て続けに左右の拳を交互に撃ち込んでいくとオーガは仰向けに倒れた。


このマックスという男は武器などを使わない珍しいタイプの戦士らしい。


だが耐久力が高いオーガは何事もなかったかのように起き上がった。


「くそ! タフな野郎だな!」


その後もキャルティとマックスはオーガと戦い続けていった。


そしてしばらくするとようやく倒すことが出来た。


しかしその時にはもう既にかなりの魔力を消耗してしまっていた。


「よし! 今がチャンスだ」


ライズがバニッシュを解き俺たちの姿が露わになった。


そして背中のロングソードを抜いて戦闘態勢なる。


「ライズ、お前は筋肉野郎を頼む」


「分かった」


そう言うとライズは二刀のナイフを逆手に持ちマックスの前に立ちはだかった。


「ちくしょう。俺たちが疲れるのを待ってやがったな」


俺は剣を構えてキャルティに歩み寄っていく。


「くそ! この野郎!」


キャルティは右手に魔力を集中させ炎の攻撃魔法ファイアフォースを発動させた。


だが俺も同じくファイアフォースを撃ち放ち相殺する。


その後もキャルティは攻撃魔法を連発するが俺は全て相殺していく。


キャルティはもうすでにかなりの魔力を消耗し肩で息をしている。


そこへ俺はロングソードで左の脇腹を狙って斬りかかった。


「うぐっ!」


剣は命中しキャルティは苦悶の表情を浮かべた。


そしてそのまま膝をつき四つん這いになった。


俺は止めに雷の攻撃魔法サンダーボルトを食らわせた。


キャルティは横向きに倒れた。


どうやらもう身動きは取れなそうだ。


俺はキャルティのそばに近寄ると片膝をついた。


そして魔力を込めた手でキャルティの頭を掴む。


3秒間が経過し頭を離した。


しばらくするとキャルティは上半身を起こした。


眠そうな虚ろな表情をしていてライズの時と同様に瞳が赤く光っている。


「立てるか?」


俺はキャルティに手を差し伸べた。


「あ……うん……」


キャルティは俺の手を握り立ち上がった。


「キャルティっていったな。お前は俺の味方か?」


と、ライズは時と同様の質問をしてみる。


「味方?…………うん……味方だよ」


「俺の言うことはなんでもきくか?」


「うん」


どうやらブレインウォッシュは効果を発揮したようだ。


「よしキャルティ。それじゃ俺たちと一緒に戦ってくれ」


「うん、分かった」


俺たち3人は武器を構えてマックスと呼ばれている男を取り囲んだ。


「おい、嘘だろ! お前まで洗脳されちまったのかキャルティ!」


と、マックスは狼狽えた。


「3人相手じゃ勝ち目はないだろ。大人しく降参すれば命は助かるぞ」


俺はマックスに降伏するよう促した。


「そうだ、お前もこっち側にこいよ。俺は今ずげえいい気分だぜ」


「冗談じゃねえ。洗脳なんかされてたまるか!」


そう言うとマックスは踵を返し走り出した。


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