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2話 仲間

しびれを切らした俺は奴に斜め上から斬りかかった。


だがやつはそれを後ろにステップして難なく回避した。


そしてやつはカウンターで右のナイフを振るった。


俺はそれをなんとか回避した。


だが二撃目の左のナイフが脇腹にまともに命中した。


「ぐっ!」


そして更に三撃目の右のナイフも食らってしまった。


俺は痛みに耐えながら後ろに下がって剣を構える。


すると奴は右の手を前に向けて伸ばした。


その直後、突然物凄い突風が吹いた。


「うわあ!」


俺は突風に吹き飛ばされて背中が木にぶつかった。


どうやら風の攻撃魔法のエアーシューターを食らってしまったようだ。


「くそ!」


俺は気を取り直してすぐ立ち上がった。


だが目の前の光景に驚愕する。


なんとあの男の姿がどこにもないのだ。


「そんな!」


周辺を見渡して見るがやはりどこにもいない。


あんな一瞬で身を隠せるはずがない。


となると瞬間移動系の魔法を使ったのだろうか。


しかし優勢だった奴が逃げるメリットはない。


思考を張り巡らせていたその時、背中に衝撃が走った。


「ぐあっ!!」


俺はうつ伏せになって倒れ剣を落とした。


「くくく……」


と不敵な笑い声が聴こえてきた。


「驚いたか? これが俺の切り札、バニッシュだ」


どうやら奴は自分の体を透明にできる魔法、バニッシュを使っていたようだ。


不意打ちをまともに食らってしまい直ぐに立ち上がることができない。



さすが悪名高い盗賊団の一員というだけあって半端な相手ではない。


明らかに俺より格上の戦士だ。


このままでは殺られるのは明白だ。ならばこちらも切り札を使うしかないだろう。


「どうだ? 大人しく魔導石を渡す気になったか?」


俺は相手が余裕を見せている間に何とか立ち上がった。


そしてポケットからあるアイテムを取り出した。


それはリミットブレイクの魔石と呼ばれるアイテムだ。


使うと5分間だけ強さが飛躍的にアップする。


もしもの時のためにずっと温めていたアイテムだったが今こそ使う時だろう。


俺が魔石に魔力を込めると身体が白い光に包まれ魔石は砕け散った。


「なんだ? 何を使った?」


「さあな」


「くっ」


その男は両手のナイフで斬りかかった。


俺は上半身を逸らして避けた。


続いて二撃目も躱し三撃目も余裕で回避した。


「くそ!」


その後も奴はナイフで何度も攻撃するが一発も当たらない。


身体が軽い。力が漲ってくる。今なら誰が相手でも負ける気がしない。


「くそったれ! リミットブレイクを使いやがったか」


すると奴は手を前に向けた。


そして風の攻撃魔法エアーシューターを放ってきた。


しかし俺も同じくエアーシューターを撃ち放つ。


突風同士がぶつかり相殺され周りの草や木の葉が激しく揺れて音を立てる。


そして今度は俺が攻勢に出る。


一瞬で奴に届く間合いまで距離を詰めロングソードを振りかぶり肩を狙って袈裟斬りを喰らわせた。


「うぐっ!」


奴は苦悶の表情を浮かべナイフを地面に落とす。


そしてすかさずもう一撃を左の脇腹に叩き込んだ。


「ぐはぁ!」


更にそこから何回も剣撃を喰らわせていった。


すると奴はとうとう倒れた。


仰向けになり苦しそうな表情を浮かべて胸を上下させている。



因みに俺たちのように魔力を持っている人間は攻撃を受けても肉体を魔力で保護されている。

そのため例え殴られようが斬られようが焼かれようが痛みはあるものの肉体は傷つくことがない。

だがダメージを受けた分だけ魔力を消費してしまい、もし魔力が底をつくと常人と同じように怪我をしてしまう。



今なら止めを刺すことは容易だろう。


だが俺はロングソードを背中の鞘に戻した。


そして奴の傍で膝をついた。



もし先ほど魔導石で手に入れた力、ブレインウォッシュが本物だとしたら今こそ試す時だろう。


俺はその男の頭を右手で掴んだ。


そして右手に魔力を込めた。


そのまま3秒が経過し頭を離した。


そして奴が動けるようになるまでしばし待っていた。



すると奴は上半身を起こした。


先程までと違い視点が定まっておらず虚ろな表情をしている。その上瞳が薄っすらと赤く光っている。


俺は恐る恐る尋ねてみた。


「お前……名前は?」


「…………ライズだ」


「…………歳は?」


「…………25だ」


と、素直に返答する。


「俺はジェイクだ。ところでライズ……」


いよいよ核心に迫る。


「お前は俺の仲間か?」


「……………………そうだ」


「お前は俺のいうことに何でも従うか?」


「……………………ああ、勿論だ」


どうやら本当に洗脳する事が出来たらしい。


俺はまだ半信半疑のまま更に質問を投げかけた。


「今どんな気分だ?」


「…………なんというか…………とてもいい気分だな」


ライズは晴れ晴れとした表情で答えた。


「俺たちはこれから一緒のパーティだ。よろしくな」


俺は恐る恐る手を出した。


するとライズは俺の手を握った。


「ああ、よろしく」


「それで…………この兵士は一体なんだったんだ?」


「ああ、それは………………」





話をまとめるとあのブレインウォッシュの魔導石はネルビア軍が移送中だったらしい。

その情報を掴んだザーリック盗賊団が魔導石を奪おうとした。

だが魔導石をもっていた兵士は瞬間移動の魔石を使用してその場から逃げた。

なのでザーリック盗賊団は手分けをして周辺を探していたらしい。

そして魔導石をもって逃げた兵士は運悪くあのオーガに遭遇して殺されてしまう。

そしてたまたまその場にいた俺が魔導石を手にしブレインウォッシュを習得してしまったということだ。


「それでこれからどうするんだ? ジェイク」


「そうだな…………」


このまま奴らザーリック盗賊団から逃げるのは容易ではあるがリスクを置かせば更にパーティメンバーを増やせるかもしれない。


するとその時。


「おーーーい! ライズーー!」


甲高い女の声が聴こえてきた。


「まずい! キャルティだ」


「仲間か?」


「そうだ、どうする?」


「俺は隠れている。なんとかやり過ごせ」


「分かった」


俺は直ぐに近くの木の陰に隠れた。


しばらくすると向こうから2人の男女がやってきた。


「どう? みつかった?」


そう聞いてきたのは金髪でツインテールの美女だった。

華やかな刺繍が入ったミニスカートを履いており腰にはレイピアを装備している。


もう一人は坊主に近い短髪で眉毛が太く鋭い目つきをしている男だ。袖のないシャツを着ており筋肉質な体をしている。



「ああ、見つけたことは見つけたんだが……」


「あれ? なんだ、死んじまってんじゃないか」


短髪の男が兵士の死体に気づいた。


「実はどうやらモンスターにやられちまったらしい」


「そうなの? それで? 魔導石は?」


「それがどういう訳かなくなっちまったんだ」


「まじか!?」


「そんな」


「誰かに横取りされたってのか?」


「どうやらそうらしい」


「ならそいつを探そうぜ、まだ近くにいるはずだ」


「ちょっと待って」


すると金髪の女がライズの顔を凝視した。


「ライズ。あんたどうしたの? その眼」


「え?」


「なんか赤く光ってない?」


「……………………」


ライズは何も答えることができなくなりしばし沈黙が続いた。


すると突然、金髪の女は雷の攻撃魔法サンダーボルトをライズに向けて撃ち放った。





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