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出会い

 それから毎日神殿に通う様になった。



 私は思い切って、お母様にレベルを上げたく無い旨を伝えた。幻滅されるかもと思っていたけれどお母様は真剣に聞いてくた。

 お母様は、まだ私が小さいから、考えが変わるかもしれない。試練までは受けなくても、今はある程度までレベルを上げておいても良いのではないかと言葉を選びながら向き合ってくれた。

 お母様から見れば、私は試練を怖がってる幼な子にしか見えないのだろう。中身はオバサンなんて知らないのだ。まぁ問題ありありのオバサンなのだが。

 それでもお母様は私の意を汲んでくれて、今までより魔力のペースを落としてくれてるみたいだ。

 そして2年が過ぎ、私は5歳になった。私のレベルは上がってない。

 それに、最近はお母様はローザ様にかかりきりだった。今ローザ様はご懐妊中なのだ。あんなに大変な事があったのにも関わらず、3人目とは……気丈な方だ。でも新しい命が生まれるのはおめでたい。



 神殿に行く時間は、特に決まってない。神殿に行くには誰か付き添いの人が、必要なのだ。付き添いは、お父様とお母様は忙しい方なので、基本的には乳母のマーサが付き添ってくれる。

 マーサは薄い緑の髪に同じ緑の目をしてて、見た目は30代位? 少しふっくらした優しい雰囲気の人で、私にとって、今世の第二のお母様だ。日中は殆ど側にいてくれる。もう5人も子供がいるらしい! 肝っ玉お母さん?? 1番下の子も寮に入っているらしく、もう手がかからない子達ばかりらしい。えーめちゃ若い!!

 私は案の定、人見知りを最初は発揮してたが、マーサは気にせずに、ニコニコ根気よく話してくれ、私も打ち解けれる様になった。

 

 馬車をけん引してくれるペガサスにもとりあえず、挨拶はする様になった! ペガサスの名前はデューイ。ペガサスはとても賢い魔獣らしく人が使ってる言語も理解してるらしい!! ペガサスに許可を貰って、デューと名前を呼べる様になった!! あの鼻をならされたのは、気にしてないよーって意味だったみたいだ。良かったデス。

 ペガサスは気性が荒い奴もいるけど、デューは紳士なオスらしい! 特に女の子には優しいとか?

 私は乳母のマーサに見守られながら、なでなでもさせてもらえる様になった!!

 挨拶は大事!これは社会人の基本!! 前世も挨拶だけはちゃんとしてた。目を合わせれたかは微妙だけど……はひ。

 すいません……。



 えぇっと……あっ! 後、御者にも会った!! 見つけられた? シドという名前の結構若い? 二十代半ばくらい?もう少し上? くらいの人で見た目は結構強面で黒髪黒目の人だ。

 王宮騎士団に勤めていたが、結婚を機にこちらに就職したらしい。

 今では二児の父親で、1人は私と同じ歳の子供だ。

 どうやら結婚相手が領民の人らしい。今はお父様の下で騎士として日々鍛錬したり、遠征に行く時もある。子供が小さいので日帰りばかりらしいが、その忙しい合間に御者もしてくれているのだ。結構無口というか無駄口たたかない人で礼儀正しい。こんな私にも敬意を示してくれる。それに適度な距離感が私には有り難かった。多分私が怖がるのではないかと心配して距離をとってくれている。強面だからかな?


 1番初めに神殿に行く時にいなかったのは、初めての外出に緊張している私に配慮してくれたのだと思う。

 見た目は怖くても気遣いの出来る人だ。私は見た目なんて気にしない。見た目ではなく、初対面の人はどんな人でもダメなのだ。自慢じゃないが……。こうやって何年も毎日顔を合わせているうちに私の人見知りは軽減されていく。それにシドはとてもいい人だ!! 信頼できる!!


 今日はシドが1日がかりの遠征があるとの事で、かなり早朝に神殿へ行く事になった。

 

 「私の都合でこの時間になり、申し訳ありません」


 そう言って頭を下げるシド、律儀な人だ。遠征に行くのはシドのせいでは無いのに。


 「大丈夫。私はいつもヒマだから……」


 「…………」


 私はうつむき加減で、呟いた。シドに対して怖いとかはないが目を合わせるのは苦手なのは、変わらない。シドは強面だし、必要最低限の会話しかしないが、とても誠実な人なのは伝わってきていた。

 なので誠意には誠意を! コミニケーション能力が低くても、何かしら喋らなければ!! 私は1日中本を読んでるだけだし、暇なのには間違いないのだ!! えっへん!

 

 ……何故か無言でシドに撫でられた。


◇◇◇


 いつもの様に、礼拝堂の扉を開けると、今日は先客がいた。後ろ姿しか見えないが、緩いウェーブのある夕日の様な鮮やかなオレンジ色の髪の少年だ。少年というより幼児かもしれない……。線の細い小柄な子だった。私も年齢の割に小柄な方だが彼も同じくらい大きさだ。


 礼拝堂は1人ずつというわけではないが、何というか近づき難いオーラがあるので、回れ右をしてまた後で来ようと思った。今日はシドの迎えが遅いので、私は急がないし、私はレベルを上げたくないので、長時間いる訳でもない。祈る時は勿論、レベル上げのことなんて考えず、前世と今世の大切な人の事を祈ったり、瞑想してる時もあった。

 祈りの時間以外は、お迎えが早い時はそのまま帰るし、遅くなる時は神殿の貯蔵書を読ませてもらってる。神殿なので創造神様の事も沢山あるが、童話や小説もあり、飽きることはない。将来ここに住むのも私は落ち着いていて良い場所だと思う。


 今いる礼拝堂はレベル上げの為の特別な礼拝堂と後から知った。一番最初に大司教様とお母様もお祈りしてたけど、一回でレベルが上がるのはほぼないので、私に付き添ってくれてたみたいだ。なので普段は誰かとかち合うことは殆どない。それくらいレベルを上げたい者が、今は少ないとも言える。マーサもレベル上げは必要ないので、いつも控え室で待っていてくれてる。


 椅子が沢山並んでるのは、この国ができて最初の頃、奴隷解放のためにみんなが切磋琢磨して、レベルを上げていた時代の名残りらしい。確かに年季の入った長椅子だ。けれど手入れはされている様でとても趣がある。わたしはこの礼拝堂を気に入ってる。けど……ちゃんと祈ってなくてごめんなさい。


 じゃなかった……マーサの所に戻ろうと再び扉を開けようとすると…。


 「なんで、帰るの? 別に祈っていけば?」


 …………気づかれていた。床は大理石でコツコツなるし、扉の音も結構するから、そうなりますよね……。

 

 こちらを振り返りもせずに少し棘のある言い方だが、一応気を遣われたらしい。

 

 人見知りの私としては脱兎の如く退散したい所だが、あのなんとも言えないオーラに私は敗北した。


 「……あ、ありがとうございます」




今回は、人見知りより小心者が勝ちました。

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