魔道具免許
「じゃぁフィリアさん、これからの事を歩きながら説明するわね。申し訳ないけれど、アーレン王国以外では転移での移動は目立つの。だから、移動は徒歩。良い運動になるわよ? ふふふ」
さっきまで観察されていたのが嘘のように、にこやかな笑みを浮かべてバネッサさんは話し始めた。
先ほどまでは教皇様がいたからトーンを抑えていたのか、今は更にハキハキとしゃべりとても元気な方で、こっちまでパワーを貰えそうな人だ。
話しながらも、周りの索敵を行ない防御魔法も展開してくれているみたいだ。とてもありがたい。
私もかなり広範囲を索敵を行うけれど、近くに魔物はいないみたいだ。アーレン王国側の魔の森は、索敵範囲を広げれば何かしらの魔物が察知出来たので、外側の方が魔獣が少ないのかもしれない。
「これから住む場所については、事前にある程度知っているのかしら?」
「はい、期間は短かったので、書庫にあった薄い冊子くらいですが……」
これから向かうのはルルーシオ王国にある20年ほど前にできたトライアと呼ばれる特別地区だ。
ルルーシオ王国はここ数十年で、魔道具大国とも呼ばれるようになり、魔道具の開発、生産に力を入れているそうだ。
その中でも、トライア地区は最新の魔道具の試験場であり、そこの住人は平民であってもその恩恵に預かる事ができる。
最新技術の特区である為、人の出入りが制限されていそうだが、逆で様々な意見を取り入れたいからと幅広く移民を受け入れているから今回私も入国出来るらしい。
多くの移民がいると治安が悪化しそうだが、技術保全や治安維持のしっかりした法整備がされていて、法に触れると厳しい罰則もあるみたいなので、その辺はとても良い環境らしい。
ざっと確認した限りでは、常識的な法律であり、小心者の私が法に触れるような事なんて出来ないし、何より最新の魔道具が身近にあるなんて心踊る!!
以前、魔道具の研究をする事を考えたけれど、道具も教科書もなく頓挫した。しかーし!!
今回は教皇様のお墨付きで、魔道具師の助手として住み込みで働かせてもらう予定なのだ!!
「楽しみですか?」
バネッサさんの話を聞きながら、私は魔道具の事を考えていたらニヤニヤしていたみたいだ。
「はい! 勿論! 魔道具の事を学ばせてもらえると聞いているのでワクワクしています!!」
小さい頃はリモコンを分解したり(←良い子は真似しないように)、お小遣いで化学実験キットを買い、遊んだりしたものだ。
何かを作るのはきっと楽しいと思う!!
勿論地道な研究も必要だが、黙々と作業するもの好きだし、オタクの私にピッタリだ!
「ふふふ。やっぱり似たもの同士ね」
「似たもの同士?」
「ふふふ。そうそう、フィリアさんはまずは魔道具作成免許の5級の講習と試験を受けてもらうの。合格すれば、私の師匠の弟子になる予定だから、私はフィリアさんの兄弟子になるからよろしくね。
師匠の弟子が嫌になったら、私のところに来てくれて良いからね?
自慢じゃないけれど、私は魔道具研究免許持ってるから私でも弟子はとれるのよ。作成免許は大型1級、精密はまだ3級だけど、わからないこと、聞きたいことあれば言ってね?」
「ほぇ!? すごいです!!」
サラリと仰天発言をされた。ルルーシオ王国では魔道具研究は、その免許もちか、免許持ちの指導下で弟子が行うことのみ許されている。
ルルーシオ王国では、魔道具に関する免許は2種類あり魔道具作成免許と、魔道具研究免許だ。
魔道具作成免許は設計図に基づいて作成を行うことが出来る技術者で、量産に関わる免許だ。5級は2週間程の演習と講義を履修して試験に合格すればとれるので、比較的取りやすい。3級からは、精密免許と大型免許に分かれていてそれぞれ1級まである。
3級になると、魔道具研究免許の受験資格が得られる。
魔道具研究試験に合格したら、晴れて独自の研究と弟子をとることが出来るのだ。
魔道具の弟子は5級魔道具作成免許があればなれる。弟子は魔道具研究免許を持っている師匠の指導下であれば研究が可能なのだ!! 心踊るよね??
とりあえず、生活が落ち着いたら5級魔道具作成免許を取るために2週間の演習と講義だ!!
3級でも凄いのに1級は、この地区で一握りしかいない最高の技術者だ。1級になるまでには平均20年以上と言われていて、全体の数%しかいないと言われているのに、バネッサさんは私と同年代はず。若く見えるけど……。
どれくらい凄いのかは明白だ。




