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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第二部 ルルーシオ王国編

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旅立ち

 アーレン王国から出国する事が決まったので、私は皆に挨拶や引き継ぎをして忙しくしていた。


 皆には、ルイス王子の事は言わずに、「ただ新しい事を始めるためにアーレン王国を離れる」と話している。

 皆が寂しがってくれる事に、私も後ろ髪を引かれる思いだけれど、決めた以上やるしかない。


 荷造りは、空間魔法で詰め込むだけなのでそれ程かからず。あっという間に出国の日を迎えた。


 ◇◇◇


 事前に別れの挨拶は個々にしていたため見送りはない。

 と言うか移送方法を聞いて皆が遠慮したと言う方が正しい。

 私はいつものように礼拝堂で祈りを捧げていた。


 私は、いつもの修道服ではなく、森の中でも歩きやすいように長袖の白シャツに紺のズボン、淡いブルーのポンチョ、編み上げの丈の長い黒のブーツだの装いだ。

 両親には国外に出る事をとても心配されたけど、私の意を汲んでくれて許してくれた。ただ、もう2つほど魔道具のアクセサリーが追加された。ネックレスとピアスだった。小ぶりの青石のついたネックレスの効果はよくわからないが2つとも、いつもつけておくように言われている。

 お兄様はいつもなら1番心配してきそうなのに、何故か嬉しそうにしていて、歓迎してるようだった。

 お兄様は私の願いの一つの通信用魔道具を用意してくれた。その魔道具である淡いブルーのピアスを私の耳につけてくれ、何かあればすぐに連絡する様にと、そこだけは物凄く念を押された。

 カイは、「俺の出る幕は無いんだろうけど、まぁ他の人に相談できない事があればいつでも言ってくれよ」と何とも大人な発言をしていた。この数年に何だか諦観した人になってしまったようだ。やんちゃなカイがいなくなってちょっと寂しい。でも大人びた姿も成長を感じるので嬉しい。それに、なかなかセンスのある普段使いの洋服を餞別にくれた。後から知ったが、すんごい防御魔法のかかった服だった。やっぱり家族みんな私に過保護だったのは何ともむず痒かった。


 出国に関しては、アーレン王国外の安全な場所で引き継ぎ出来るように、教皇様自らが転移魔法で送ってくれるらしい。

 平民の私がそんなVIP待遇で申し訳ないが、自分ではどうする事も出来ないのでお任せする。

 時間通りに礼拝堂にいらっしゃった教皇様に挨拶をする。


「では行くか」

「よろしくお願いします」


 教皇様に差し出された手に、私の手を重ねる。男性の手に触れたのはいつ振りなのだろう。ちょっとドキリとした。今世の私の身長は女性平均よりも少し低めだ。きっと手もその分小さいのだろう。教皇様は長身なのもあり、手はとても大きく感じた。だからなんだと言われれば何でもないが、自分の不慣れさにちょっとドギマギしてしまった。

 これから新たな一歩を踏み出す。何と言うか、地に足がついていない、何だかフワフワした気分だ。

 そんな私のドキドキをよそに教皇様はあっさりと転移魔法を展開させた。

 視界が歪み、新たな景色が顔を出す。


 先ほどまでの白を基調とした景色から一転、一面森が広がる。目の前には、虹色に輝くオーロラのようなカーテンがゆらゆらしているように見えた。以前はドーム上に天井を覆っていた結界が目の前に見える。

 結構あっけなくアーレン王国を出国したのがわかった。

 ちょっと感傷に沈んでいたら教皇様が誰かに声をかけた。


「やぁバネッサ嬢、久しいな」

「教皇様、ご機嫌麗しく。この度はこのような機会を与えてくださったこと、光栄に存じます」

「ふふふ。これも神のご導きなのだろう」

「ふふふ。そうですね」


 私が慌てて振り返ると、肩より少し長い水色の髪に、翠目を柔らかに細め、笑顔で出迎えてくれた女性がいた。

 話し方や仕草からとても落ち着いた、出来る人、前世で言うキャリアウーマンと言うか姉御と呼びたくなるようなしっかりした女性のようだ。多分私より少し年上かな? 彼女も森での待ち合わせのため濃いブルー系で合わせたパンツスタイルだった。ただ持ち物はポーチのみの軽装だ。魔法使いか、あのポーチが魔道具なのだろう。

 教皇様の挨拶の後、立ち上がったバネッサさんは、高身長でスタイル抜群だった。

 ふぉ〜とちょっと見惚れてしまった。

 そんな私にバネッサさんは視線を移す。


「はじめましてバネッサです。私が案内人になります。よろしくお願いしますね」


 バネッサさんは挨拶の後、じっとこちらを見つめていた。

 何だろう……。観察されている感じ?? 

 初対面だし、私がどんな人物か気になるのかな?

 と言うか、バネッサさん……誰かに似ているような?

 普段の私なら人見知り全開、視線を逸らしたい衝動にかられるのだが、何故か絶対に視線を逸らしてはいけないと、そう言う気持ちにかられた。


「フィ、フィリアです。こちらこそよろしくお願いします」


 とりあえず、何とか自己紹介をした。

 グレゴリーさんの指導で慣れてるのでは? と言われそうだが、もう何年も昔の事だ。許してほしい。……元々、生粋の人見知りだ。許してほしい。


「じゃぁ、後はよろしくね」

「かしこまりました」

「あっ……ここまで送ってくださり、ありがとうございました」

「ふふ。私の役目はこれで終わり。これからの未来に多幸あらんことを」


 そう言葉を残して、私の緊張をよそに、教皇様はあっという間にいなくなってしまった。バネッサ様がお辞儀をしたのをみて、私も慌ててお辞儀をした。



「許してほしい」は2回言ってます。

間違いではありません。

切実に許してほしいのでしょう!

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