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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第一部 アーレン王国編 

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sideメイソン 6、交渉

「そうなのか。ここにいると時間の感覚があやふやになるからな。3週間か、まぁ今の俺ならそれくらいはかかるのは妥当だと思うが……って言うか、ちょっと覗きに来れるものなのか? 今までそんな話聞いた事無かったぞ?」


 事もなげに、さらりとオリバーが発した言葉は爆弾発言だった。


「まぁ、ちょっとした伝手がございまして、許可を貰って来ています。

 これからはこうして、指導役が試練の受験者を助けることも可能になるでしょう」


 それは凄いことだった。半端者の試練では一定数帰って来ない者もいた。その者達がどうなったかは判らないが……。

 それをこれから指導役として高位の魔法使いが手助けできると言う事は安全に試練を受けれると言う事だ。

 帰還率が上がる。

 もしくは時間が掛かっても、100%帰って来れるのでは無いか? 

 それは半端者にとっては希望の光だった。

 帰ってくる保証が有れば試練を目指す者もこれから増えるだろう。


「じゃぁ今回はオリバーが俺を助けてくれるのか?」


「……まぁ、そうですね。致し方ありません」


 一々癇に障る言い方であるが、ここは我慢だ。

 いち早く元の世界に帰りたいのは俺も同じ、ここは大人になるべきだ。


「ただ、少し条件があります」


 そう言ってオリバーは条件を提示してきた。

 条件とはフィリアとジョアンナと言う者が共同で開発した魔法薬と呼ばれる薬の開発者として、学会に発表する事。

 その利益は半端者の居住区の運営に回す事。

 フィリアとジョアンナの名前は一切出さない事。

 これから試練への扉が開いた場合、俺が試練へ同行する事だった。

 疑問が浮かぶ。


「ちょっと理解が追いつかないが、なぜフィリアとジョアンナさん?は、自分で発表しない?

 それに俺が試練への指導者になるって事か?

 今見ても判るように、自分の試練ですら手一杯の俺が??」


「フィリア様もジョアンナ様も目立つ事を望んでおりません。

 2人とも少し特殊な事情があります。

 それは教える事は出来ません。

 ただ、2人とも名前を出す事は希望していないのは間違いではございません。

 確かに今のままでは、試練の指導者は無理でしょう。

 ……本当に致し方ないですが、私が危なげなく指導が出来るよう訓練して差し上げますよ」


 本当に致し方ないと言う苦悶の表情に、更にイラッとしたが、事実なので手の拳を握りしめるしか出来なかった。

 オリバーが出した条件は、俺にとっては名誉な事ばかりだ。

 魔法薬の原料となるルーチェ草は治癒だけではなく、原薬のみで服用すれば、半端者のレベル上げの効果もある。

 そんな夢のような薬だった。

 他人の功績を横取りするような事は気が引けるが、本人達が嫌だと言うのなら、その代わりを務める事は吝かではない。

 寧ろフィリアの役に立つなら喜んで引き受ける。


 試練の指導者だって、今後指導に当たるのはエイムのメンバー達の可能性が高い。

 人となりを知っている俺の方がいいだろう。

 俺ならオリバーのような居丈高な態度なんてしないしな。

 オリバーに指導されるのは、気が重いがそれを加味してもお釣りが来る。

 ただ俺にその実力をつける事が出来るかどうかだ。

 だがオリバーが、出来ると言うのだ。

 信じてみる事にした。いけすかない奴だが、見極めは確かだろう。


 オリバーは底が知れない。

 大体、フィリア達の功績だと言うが、本当にそうなのか? 

 俺が試練の扉に入ってから3週間あまりでそんなに進むものか?

 そんな全てが解決する方法をたった3週間で? 

 フィリアが、優秀なのは判るが、そこまでなのか? 


 俺の疑問が伝わったのか、さっきまで馬鹿にしたような態度だったオリバーがニヤリと笑い話しかけてきた。


「意外ですが、思っていたよりは聡い様ですね。

 これは鍛え甲斐がありそうです。

 こちらも真剣に指導して差し上げますよ。

 さて、お返事は?」


 俺は開いてはいけない扉を叩いてしまったのではないか。

 背筋にひんやり汗が流れ落ちた。

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