ルーチェ草
それからルーチェ草の研究がはじまった。
行き詰まっていた研究に希望の光が出てきて興奮する。寝る間を惜しんで頑張った。ジョアンナにはだいぶ呆れられていたが、ルーチェ草が誰かの役に立つかも知れないと少し嬉しそうなのは見てたらわかる。私も嬉しい!! なので頑張った!!
ジョアンナとも相談しながら、ルーチェ草を乾燥させたり煮詰めたり色々したが、1番魔力の効果を発揮出来たのは、乾燥させて、すりつぶした物だった。
それを既存の薬草に混ぜて、煎じるとその薬効に合わせた治癒ポーションが完成する。
念の為ブレンにも鑑定してもらったが有害物質は検出されなかった。
薬草は穏やかにゆっくり効くものが多いので、早い物でも効果までに10分はかかる。遅いものは1ヶ月ほど時間がかかるものもあるのだ。
それをルーチェ草を入れると飲んで直ぐから遅いものでも数日で効果が現れる!!
凄い日数の短縮だ!! 凄すぎる!! 飲んで直ぐ効く物は治癒ポーションと言っても良いだろう!!
ポーションと薬は分けて考えられている。
ポーションとは魔法使いが魔力を込めて作られた物であり、即効性のある物。薬は薬草や果物、樹液など魔力以外で作られた比較的穏やかに効く物だ。
これは厳密に言うと薬だろうが、魔力を帯びている。新しい薬だ。ポーションと薬草の両方の性質を持つ薬……魔法薬だ。
更に低級治癒ポーションにルーチェ草を加えると中級ポーション並みの治癒ポーションになった。ルーチェ草は万能過ぎる!!
ただ、どんなにルーチェ草を加えても、高級や特級にはならなかった。どうやら底上げは一段階止まりの様だ。
そして……ルーチェ草はそのまま飲むとレベル上げの効果もあるみたいだ。効果は私がメイソンさんに魔力移行していた時よりも更に少ないが、その方が安全なので良しとしよう。ルーチェ草をそのまま沢山服用しても、レベル上げの効果はある量を境に一定でしか上がらず。残りは体から排出されてしまうようだ。魔力を使って、減った分も補ってくれる作用もあるので所謂、魔力ポーションとしての役割も熟せる。
色々制限されてる部分はあるが、それでもルーチェ草は凄い発見だ!!
私たちが実験として服用して問題なかったけれど、オーディナリーの方が飲んでも大丈夫かはわからない。念のためオーディナリーの方達にも治験して頂かなければいけない。オリバーに相談したら、すぐに実施してくれて、安全性と有効性は担保された。
私が悩んでいたこと一気に解決だわ!!
ルーチェ草は居住区の収入源としても、私が魔力移行しなくても希望する人には魔力を上げることができる!!
凄い!
私達は個人区画をいくつか更に借りて、ルーチェ草を植える事にした。ただ少し行き詰まった。
理由は、思った以上にお世話をするときに魔力を与える必要があるのだ。丁寧な声掛けと、魔力を与えるには、半端者では一区画がやっとだった。共同区画のお世話もあるので無理は出来ないし……。一区画でもそれなりの収入にはなりそう(ここはオリバーに相談)だけれど、2人で2区画じゃぁ流石に収入としては足りない。
これは、人数が必要な事に気がつく。誰か他にも土や緑の魔法の使い手が必要だった。
誰かに頼めないか……ジョアンナも居住区の友達はいないみたいだし、私はエイムの中では浮いている存在だし……それでも私が顔を合わせているのはエイムの人達だ。
なんだかんだとケイティさんにまだ、話ができていない。心配かけてた様だし、謝りついでに相談させて貰おうかと思っていると、ドンと前にぶつかった。
個人区画から外に出るアーケードを抜けたところで人とぶつかってしまった。
個人区画は殆ど人の出入りがないので油断していたのだ。私は急いで腰をおり謝った。
「すっすみません。考え事しててちゃんと前を見てませんでした」
「何をそこそこしてるのよ! 前より少し良くなってきたと思ったら、また目にクマ作ってぼーっとしてるし、イライラするのよ!! メイソンが帰ってきた時にそんな顔してたら私が怒られるんだから、ちゃんとしてよね!」
怒涛のキンキン声に驚いて顔を上げると、そこには目を吊り上げて怒っているキャサリンさんがいた。
「ごっごめんなさい? ちょっと研究が楽しくて夜更かししてました。消灯時間があるのは分かってはいたんだけど、こっそり布団の中に隠れて研究してました。考え出すと寝れなくなって……あっ、悩んでてとかじゃなくて嬉しくて? 興奮して寝れなかったんです。それなら研究したほうがいいかなぁと思って……すいません」
私が楽しく研究をしていた事にキャサリンさんは、更に鬼の形相になってしまい慌てて再度謝った。
「……いいからこっち来なさい!!」
謝って頭を下げていたら、キャサリンさんに声をかけられた後、急に手を取られて引きずられる様にどこかに連れてかれる。
「あっあの。フィリアは何も悪い事してないの。何処かに連れて行くのは止めてください!!」
キャサリンの鬼の形相に恐れをなして隠れていただろうジョアンナは勇気を出して、声を上げてくれた。俯きながら全身が小刻みに震えているのでとても怖いのだろう。人と話すのは苦手なジョアンナがそこまでしてくれた事に私は感無量だった。それだけで充分だ。無理はしないでほしい。
「貴方も酷い顔ね。いいわ!貴方も一緒に来なさい!!」
そう言われて、ジョアンナもキャサリンに引きずられて一緒に何処かに連れて行かれる事になった。
ドナドナされて行く私たちを廊下ですれ違う人たちは何故か助けてくれなかった。キャサリンさんの鬼の形相……キャサリンはどちらかと言うと愛らしい顔立ちな為今の顔のギャップが激しすぎて、誰も声かけられないのではないか……そんな気がした。
フィリアはルーチェ草についてあくまで研究させてもらっているだけで、ルーチェ草はジョアンナの功績だと思ってます。




