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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第一部 アーレン王国編 

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類は友を呼ぶ?

 共同農園と個人農園は区画が分かれており、今回は個人農園へ足を運ぶ。


 個人農園は区画整理がされており、番号が振られている。私は38番の1区画借りていて、10メートル✖️10メートルの大きさだ。1区画だけでも結構大きく見えるが、人によっては何区画も借りている人もいるみたいなので、需要はある様だ。ただ何も植えていない場所もあるため、個人区画の空きはまだありそうだった。


 個人区画は、隣接する農地に迷惑をかけなければ、基本的には何を植えてもいい。ただ、この区画は背丈が2メートル以内の草花を植えるエリアだ。木など大きくなる植物は植えることができない。木など大きな植物を植える場合はそれ専用の区画もあるのでそちらの申請をする必要がある。つくづくこの居住区の大きさに驚かされる。


 私の区画は、気の利く護衛騎士のお陰で沢山の種類と苗をもらったので、とりあえずその植物の育て方を調べて全て植えてみている。

 私には土と緑の魔法適性もあるので、枯れそうな草花達には、それで力を与えていて何とか枯らさずには済んでいるが、素人の目で見ても何となく元気がないのは明白だった。

 隣の芝生は青いと言うが、隣の区画を見ると、青々と広がる草花が生き生きしている様に見えてしまうので、どこが悪いのか落ち込む。羨ましいなぁとぼーっと隣の区画を眺めていると


「私の区画に何か用? 貴方の区画に迷惑はかけていないと思うのだけれど……」


 声の聞こえた後ろを振り向くと、とても気弱そうな女性の姿があった。

 小さい頃の私の様に、前髪が厚く、視線を隠す様に少し長い。緑の髪はとても丁寧に手入れされているので、前髪の長さはわざとだろう。

 長い後ろ髪も艶々で植物の手入れのためか編み込みされて纏められている。

 私はここ最近サボっていたからか髪がゴワゴワしてきたので見習わなければいけないな。黒い縁のある眼鏡は更に彼女の顔をあやふやにさせていた。少し見える瞳は同じ緑色の様だが、私とは視線が合っていない様に思う。

 けれどとても不安そうな声に、私はもしかして隣の区画を睨んでいる様に見えたのかしら?

 それだったら私は申し訳なく思う。ぼーっとしてただけだ。


「ごめんなさい。貴方の区画の草花達がとても生き生きしていたから、とても羨ましく思っていただけなの。私も頑張ってるんだけど貴方の畑の様に上手くいかなくて……」


 私はしょんぼりした。言えば言うほど情けなさ過ぎる。ここ最近何も上手くいった物がなくて落ち込んだ。


「……えぇっと……。無理矢理魔力で成長させるんじゃなくて、声をかける事も大事だよ。

 嘘だと思うかも知れないけど、明るい声掛けは植物を元気にするの。

 ええっと後、貴方の区画の植物達は栄養はあるけど、貴方の気持ちが魔力から伝わって、元気がない様に感じるわ」


 私の呟きに、彼女は遠慮がちではあるが、私の区画に何が足りないのか説明してくれた。

 そんな事あるの? 私の落ち込んだ気持ちが植物に伝わってる?? 私が落ち込むとこの植物たちも同じ様に感じるんだ。私は目から鱗だった。そりゃ元気がないはずである。


「魔力が元気ないとかって、どうしてわかるの?」


「あっ、ごめんなさい。貴方が元気ないとか言って……なんとなくなの。魔力に活気がないと言うか、生き生きしてない? 淀んでるとでも言うのかな? 上手く説明出来なくてごめんなさい」


 何やら雰囲気がそうみたいだ。ブレンに聞いてみたら、鑑定のカスタマイズで植物の元気度も数値化が出来るとのことなのでブレンにお願いする事にした。さすが有能なブレン様!! と言ったら白い目で見られた……。

 都合の良い事ばかり言ってごめんなさい。いつもありがとうございます!

 じゃ無かった、話を聞かなければいけない!!


「あとは栄養を少しあげすぎかな。栄養剤を沢山あげても元気がなくなるの。ちょっと栄養を減らしてもいいと思う。半月ぐらいは栄養剤はいらないかな?」


 彼女は遠慮がちに答えてくれた。私は感心して心からお礼を言った。


「なるほど、為になる事ばかりだわ! ありがとう!」


 植物図鑑には基本の育て方は載っていたが、細かい栄養剤の量や見極め方は書いていなかった。きっと、毎日、世話をして、それを何年も積み重ねてきたからこその知識だろう。彼女は植物が好きなんだろうな。

 私がお礼を言うと彼女はとても驚いた様だ。メガネであまり見えないがそれでもわかるくらいだから相当だと思う。私は不思議に思い首を傾げた。


「お役に立てたらよかった。私は……いつも何にも役に立たないから……規格さえちゃんとあれば植物の元気さは要らないと……以前言われたの」


 彼女はそう言って俯いてしまった。

 彼女は今まで自分の事を認めてもらった事が無いのだろうか? その言葉を聞いて私の心も痛くなった。前世の私と重なる。それで余計に苦しくなる。私は前世の事から気を逸らす為、今の問題に集中する事にした。


 アーレン王国は飢饉が無い。それは魔力である程度の植物は育つからだ。けれど食材の良し悪しはきっと違う筈だ。前に街に行った時も産地名は書かれてあったから、同じ食べ物でも違うんじゃ無いかな? 前世でもどこの産地や農家を大々的に表示してあったしね。彼女が言ってくれたことはとても大切な事だ。それを初めて会った人に教えてくれる優しい人なんだと思った。


「そんな事ないよ。私はとても助かったの。もし良かったらこれからも植物の育て方を教えてもらっていい?」


 私の問いかけに更に驚いた様だ。


「意味のないことなのに?」


「私にとってはとても大事な事なの」


 不安そうに、小さな声で確かめる彼女に、私はメガネ越しの彼女の目をしっかり見つつ、大きく首肯した。意味のない事なんてない。実際、許可をもらって目の前にある薬草を鑑定すれば力価は雲泥の差だった。素人目で見ても彼女の植物畑はとても美しく、癒される空間だった。


「わかったわ。でも、どういう事が役に立つのかわからないから、具体的に聞いてくれるといいな」


「わかった!! 大丈夫! 答えがわからなくても良いの。その時はその時で一緒に考えれば良いのよ! 失敗は成功のもとって言うしね!! あっ! 今更だけど、名前聞いていい??

 私はフィリア」


 更に念を押す彼女に、再度首肯した。そういえば名前聞いてなかった。昔から名前を聞くのが苦手だ。一回聞いても覚えられない事もあり、なかなか聞きづらい。聞いたくせに覚えてないのかと思われる事が怖くて聞けないのだ。

 何名かいたら全部名前を覚えるまでに3、4回会わないと覚えられないのだ。でも今回は私は既に親近感を持っている! 大丈夫だ!!


「私はジョアンナ」


 ほんの少し口角を上げて自己紹介してくれたジョアンナ。私は何故かもうジョアンナと仲良く出来ると確信していた。

フィリアの場合は、前世、極度の人見知りな為、顔に目線を合わせられないので、顔をあまり見れませんでした。なので顔を覚えるまでに時間がかかります。グレゴリーさんの指導でだいぶ改善はされている筈ですが……今は少しはまっし? 今回は親近感が湧いているのですぐに覚えた様ですね。

親近感が湧いたのでフィリアも思いの外、初対面なのに饒舌です。フィリアが普段の何気ない話をリードしているなんて……成長してます。


今月中に、第一部、アーレン王国編は完結する予定でいます。

書き始めて3ヶ月以上、漸くここまで来れたのかと、感慨深いです。

いまだに忙しいですが、後少し頑張ります。お付き合い頂ければ嬉しいです。

よろしくお願いします。

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