sideメイソン 2、デザート
金曜日も更新しています。お読みでない方は前話からよろしくお願いします。
「この居住区でのデザートは金銭には変えれない幸福感があるのですよ? 甘いものですよ! 甘い物!! 1日最後のご褒美であるデザート!! 頑張っただけ美味しく感じるのですよ!! お金なんてもらってもここでは使えません。そんな物は不要ですので、これからもデザートでよろしくお願いします」
と斜め上の返事が来た。俺が驚いていると
「あっ……。もしかしてデザートでの支払いはそんなに嫌ですか? ……そうですよね。この居住区での楽しみは少ないですものね。寧ろ1番の楽しみと言ってもいいデザートを取られるのは耐えがたい苦痛ですよね……。それを毎日……私じゃ耐えられないかも。あぁ……最近食べ過ぎだと思っていましたし、毎日じゃなくて2日に1回でもいいですよ?」
フィリアはデザートがいかに重要か力説した上に、俺がデザートを取られて凹んでいると思われたらしく、デザートの日にちを減らしても良いと提案して来た。
因みに俺は毎日何かしら怪我をしてフィリアに治療してもらっているので、最近は毎日デザートを渡していたからそんな提案をしてきたのだろう。他のメンバーも毎日ではないがデザートを渡している為、フィリアはいつもデザートを沢山食べている。目をキラキラさせて幸せそうに。
あんなに小さい体なのに何処に入るのか?
デザートは別腹と言うが、もらったデザートは殆どその日に食べ切り、どうしてもの時はこっそり次の日に食べているらしい。
いや、俺はデザートにはあまり興味はないのだが、どちらかといえば甘いものは苦手だ。
デザート以上に他の物をと思っていた俺に対して、更に斜め上の減額返答に開いた口が塞がらない。俺が黙っていると、
「えぇっと…………では3日に1回で!!
これでどうですか!? これ以上は楽しみが減るのでちょっと寂しくなります」
と、俺が呆気に取られて何も言わないから、まだ不満に思われたらしく、フィリアはとても苦渋の決断をしたという表情で、更に減らして来た。ちょっと寂しそうに凹んでいる姿は思わず抱きしめたくなる可愛さだ。俺は慌てて返答した。
「いやっ、そうじゃなくてデザートだけでは足りないと思って他に何か出来ないか相談しようと思っていたんだ」
「へ? そうなんですか? 私はデザートで大満足していますし、ケイティさんとの最初の交渉でそう決まっていたので不満はありませんよ? けれど確かに毎日だと私が太ってしまいそうなのでこれからは2日に1回にしましょう!!」
フィリアはお腹を少し触った後、脇腹をプニプニして、減らす提案をして来た。おいっ! 男の前でそんな事したらダメだろう!! とお説教したいのを、何とか堪える。きっと指摘すればもう2度と話してくれない気がしたからだ。自分はやはり男として見られていない事に凹んだ。いつかフィリアよりも強くなって男として意識させたいとそう思った。
デザートを夕食時に毎日渡す。その少しの会話を俺は楽しみにしていたので、これまで通り毎日渡す事で構わないと言った。
「本当に大丈夫なの? 無理をしてない?」と念を押され、頷くと神妙な面持ちで
「食べたくなったらその時は言ってくださいね。1日くらい大丈夫ですので。では、今日もいただきますね?」
と俺がデザートがなくて凹んでいないか伺ってくる。
夕食を一緒に食べることはない。キャサリンに遠慮しているのだろう。
本人は気づいてないだろうが、いつもはよそよそしいのに、いつもと違う表情を見せるのは反則だなと思いつつ、俺があげたデザートを嬉しそう頬張る姿を遠目で見て、どんどん惹かれていくのを抑えることはできなかった。それにしてもデザートに関しては饒舌だったな。また今度甘い物の話をすれば話が広がるのだろうか。
フィリアは治癒魔法を使う事に関して偉ぶるわけでも無く淡々と治療してくれる。どういう症状か、どう言った場面で起こった怪我なのか詳しく聞いてから、鑑定をして、真剣な顔をして考察した後に治癒魔法をかける。魔力が多ければ全体的に治癒魔法を掛ければ済む事も多いが、魔力量の多くない半端者はなるべく多くの人を治せる様に魔力を温存したいのだとか。その為に適切に最小限の魔力で治療を終えたいらしい。
普段距離を置かれているだけに、治療中のみは近くにいて、真剣に話を聞いてくれるので、その時間が愛おしくて、更に鍛錬に身が入った。そう思う人は他にも沢山いて、更にみんなの士気が上がっていった。ライバルが多いなと思いつつ士気が上がるのであればリーダーとしては良かったと思うべきなのだろう。
そのおかげだろうか? 最近自分の体の中にある魔力が徐々にだが増えている様に感じた。
思わぬ副産物だった。そう思えば更にやる気が出て、もっと鍛錬を積む。好循環だと感じていたのだが、あまりの危機せまる鍛錬に、普段口を出さないフィリアが
「少し飛ばしすぎです。焦りは禁物ですよ」
と、声をかけて来た。
フィリアに、心配されて、俺の事を少しは考えてくれていると思うと更に頑張ってしまった。
ケイティには、
「心配させるなんて……馬鹿ばっかり」
と呆れられてしまったが男とは単純だ。
仕方ないだろう?
少しでも俺の事を考えてくれる時があるのは嬉しかった。
それでもキャサリンの事を考えてか、フィリアは誰に対してもよそよそしい。……それ以外にも理由があるのか、男性とは距離をとっている。そういえば最初からあまり人とは関わらないでいようとそんな雰囲気が出ていた。フィリアは半端者である事以外にも何か大きな物を抱えているのか? いつのまにかフィリアの事を考える時間が多くなった。
そもそも、これほど治癒魔法を使える人が何故半端者なのか……? 疑問が湧いた。確かに魔力量は少ない。でも、多分骨折してたであろう怪我も時間はかかったが、見事に治してしまった。あれは半端者の治療レベルを超えているはずだ。フィリアは小心者で臆病な部分があるが、魔術の知識、魔力操作、魔術の展開、魔力と鍛錬の熟練度においてどう考えても半端者としては適さない。ここに入れると言う事は半端者で間違いないはずだが……フィリアの抱えている闇は思った以上に深いモノだと感じた。それでも俺に何か出来ることはないのか考えてしまうのだった。
フィリアはしっかりしている様に見えて、ちょこちょこ抜けてる。ツメが甘い?
骨折の所見をフィリアが見た時、フィリアは治療するか迷いました。フィリアも半端者の治療の範疇を超えていると思ったからです。けれど何ヶ月も痛みが続き、鍛錬が出来ないことにフィリアは心を痛め、無茶をしない様に釘を刺した上で治療する事を選びました。
別視点で見るとフィリアはこんな感じにうつってます。
フィリアは普段距離をとっていますが、琴線に触れる本と甘い物の事となるとつい、その事を忘れて饒舌になってしまってます。多分、後で反省して、次の日から更にメイソンにはよそよそしくなったはず?
フィリア視点の話をそのままなぞっている訳ではないのでフィリア視点で出てきてない話もあります。




