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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第一部 アーレン王国編 

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sideメイソン 1、新たな仲間


本日から時間が少し遡り、メイソン視点のお話が続きます。まずはフィリアとの出会いからの話です。

フィリア視点の話では出てきてない部分もありますので読んで頂けたらと思います。

 フィリアに会った当初は、また自分と同じ哀れな人が1人増えたなくらいにしか思ってなかった。

 ケイティから治癒魔法を使える人が見つかったと言われていたが、所詮半端者だ。そんな大した治療は行えないだろう。それでも数日痛みが続くよりは、いてくれた方が鍛錬に集中出来るのは確かだ。まぁ俺はもうとっくに諦めているんだが……。フィリアという名前の成人して間もない少女が、エイムに加入することになった。


 ケイティに連れられて初めて来たフィリアは、目をキョロキョロさせて挨拶をしていた。かなり不安な様子で人見知りもありそうなフィリアに、エイムのリーダーとしてはフォローしないといけないくらいには思ったがそれだけだ。


 それなのに隅でしていた自主的な鍛錬はオドオドした所は一切なく、意志の強い真剣な目をしていた。鍛錬自体も、力強さ、速さは無いのに、熟練の騎士から教わったのが一目でわかるくらい洗練されていて、それでいて柔軟で何故か華やかに感じてしまうので、思わず見入ってしまった。これは所謂ギャップと言うものだろう。この時点で自分の心の変化を感じていた。


 フィリアは目立つのが苦手なのだろう。いつも隅の方で鍛錬をしていたが、あんな剣舞を見せられては周りが黙っていなかった。周りがチヤホヤ仕掛けた時に、それを不満に思ったキャサリンが先手を打ってフィリアに、釘を指す。それにフィリアはとても焦っていた。その後何やら考えていたが、次の日からフィリアの行動は変わった。積極的に鍛錬に参加する様になり、メンバー皆を容赦なく倒し始めた。メンバーとは距離を置いたまま。

 チヤホヤされるために来たのでは無いとキャサリンに、示したかったのだと思う。技量が足元にも及ばないのは男としては情けなかったが、関わりが少しでも増える事に自分は嬉しかった。メンバーのみんなもフィリアの行動がキャサリンの事と関係しているのは分かっていたので概ね嫌悪を抱いている人はいなさそうだ。


 キャサリンは、決して悪い子では無い。フィリアが来るまでは、キャサリンが怪我の手当てをしてくれたし、メンバーの精神的なフォローをしている時もあった。よく周りを見て、フォローや手伝いをするキャサリンはみんなから慕われていたし人気もあった。

 それを、治癒魔法が少し使えるからという事だけでレベル上げをしないフィリアにそのポジションを奪われてしまったのを良く思わないのはわからなくもない。こうなる事を予測できなかった。

 今までのキャサリンであれば一緒に怪我の治療をしつつ、フィリアをフォローしてくれるのではないかと思っていた。けれどフィリアの治癒魔法が思いの外、有用でキャサリンの出番がなくなってしまったのは予想外だった。自分の考えが甘かったと思う。どうにかフォローしたいと思うが、今の俺が、何をしてもいい方向に行かないのは現状を考えれば明らかだった。キャサリンは今頭に血が上っている。時間が必要だった。


 キャサリンの事で波風が立っているが、エイムの運営は、概ね良好だった。フィリアの治癒魔法が、優秀なので皆が怪我を恐れず更に取り組む様になったからだ。


 居住区に入れる神官に治癒魔法をかけてもらうと実は今はお金がかかる。以前はそんな事はなかったが、半端者を排除する動きがどこかにあるらしい。国王は予算を減らす事に眉を顰めたらしいが、反対勢力の貴族の反発がひどく、国から出る半端者の予算は年々減らされ予算だけでは運営に支障が出てきていた。今の所は居住区にいる半端者の親族が寄付金として賄っているのが実態だ。今は潤沢にあるらしいので心配ないらしいが、寄付がいつまで続くかなんてわからない。寄付金は計画的に使うべきだろう。

更に、神官を呼ぶ事自体にもお金がかかる様になった。反対勢力の入れ知恵だ。神官の中にも過激派がいる様だ。ただ、一部の元半端者の神官達の好意で、2、3日に1回は偵察という名目で無料で来てくれる。それも治療は無料で治療してくれていたが、何処からかバレて厳しくなった。治療は自分の親族達の寄付金で負担してもらう事になった為に皆、怪我をしない様に、怪我をしても神官が来てくれる日に纏めて治療を行い、鍛錬も細心の注意を払って訓練していく事になってしまった。そうするとどうしても保守的になる。鍛錬の伸びも悪くなるのは必然で……。ここ数年レベルの上がった人はいなかった。もうレベルを上げるのは諦めるしかないそう思っていた。


 それをフィリアは、治癒魔法を惜しげもなく使ってくれる。半端者で魔力量が少ない分、「今日はこれ以上、治癒魔法は使えません。ごめんなさい」と申し訳なさそうに言われることはあるが、それを夕食のデザート一つでしてくれている。どう考えても等価交換には程遠い。


 俺は居た堪れなくなり、正直に金銭を本来なら払うべきなのだと打ち明けたが、それに対してフィリアは普段は無表情で、無関係を装っているのに、今回は真剣な顔で返して来た。




フィリアはキャサリンの居場所を取ったという認識はありませんでした。自分の出来る事をしようとしか思ってません。良かれと思ってやったら……。難しい問題です。

今回の場合、フィリアの治癒魔法のお陰で、フィリアが魔力を与えなくても自己成長しているメンバーは多くいたので、フィリアのやっている事はプラスに働いているはず。キャサリンごめんよ。


次の更新は日曜日です。

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