ろまん……?
なんやかんや、私は3歳になった。
あっそうそう! 私自身を鏡で見てみた!! お母様譲りの薄い水色の髪に、目はお父様に似た藍色だ。目もぱっちりしてて色白、前世の私では考えられないくらい可愛いけれど、私の自信の無さからか、なんかパッとしない。人見知りなので前髪を長めにしてもらってるせいか、ちょっと暗めの子だ。けど、目立たなくてちょうど良いかもと思っていつも前髪は下ろしたままだ。
本当に家族、使用人もみんな優しい。半端者の私に対しても差別する事なく接してくれる。本当にありがたい。私が人見知りなのを察してくれてるのか、必要以上にベタベタしないし、私のやりたい様にさせてくれる、見守ってくれてる感じだ。そうそう1年ほど前に私にカイという名の弟ができた。お父様譲りの濃紺の髪にお母様の黄金の目で、とっても神秘的! そして、めっちゃ可愛い。天使が舞い降りてきたのかと思った。何でもしたくなっちゃう可愛さだ。私なんかが何もできる事はないけど……。勿論高位魔法使いのランクだ。今はお母様もやんちゃな弟のカイに手を焼いている。もう1歳になり、とにかく走り回っている。男の子の体力ってすごい。お兄様と違って物凄く活発な子だ。
……今でも前世の記憶が蘇る事が多々あるけど、なんだかんだと、今はこの世界で生きるしか仕方がないので、私はやれる事をするだけだ。
まず、この国の文字を覚えて、本を読み始めた。
最初は歴史書。
アーレン王国はまだ建国して150年ほど、他の国に比べると歴史の浅い国だ。歴史書の類は少ないが、流石侯爵家だけあって本の貯蔵量はすごい。
近代的な図書室は中央にある水晶に手をかざしブレスレットを貰う。読書スペースに行って、自分の読みたいジャンルの本を言葉にすると私の手元まで運んでくれる。
呟く言葉はタイトルでもいいし、アバウトな内容でも構わない。他の人に知られたくない時はブレスレットの画面で入力も可能だ。自分で読んでもいいし、何と音読機能もある!音読はブレスレットからイヤリングを取り出して耳にかければ、イヤホンの様な感じで聴けるし周りに迷惑かけない!
わぁお! これこそファンタジー!!
3歳だし私は専らイヤホンで聴きながら、本を目で追って読んでいる。本は浮いていてページの音読が終わると勝手に次のページを開いてくれる。3歳はページを捲るのも大変なのです。待って欲しい時は停止ボタンもあり、めちゃくちゃ便利!! 文字の勉強にもなるし、至れり尽くせりだ!
まずは薄い歴史書に目を通してみる。魔法使いの奴隷制解放運動が始まって150年、それまでは魔法使いは家畜のように扱われていたという。この世界が作られた最初の頃は皆協力し、共存していたようだったが、魔法使いの力を恐れたオーディナリー達が、魔法使いに奴隷の首輪を作り、使役し始めたのだ。そんな中、勇者アーレンが、立ち上がりこの国を作ったとのこと。なので失われた知識も多く、解放されてからまだ日も浅いため魔力に関して、まだまだ未知数の事も多いみたいだ。
本は好きだ。物語小説も好きだが、参考書も好き。この世界の今まで知らなかった事が理論立てて書かれてあり、その法則を見つけるのは楽しい! 前世、許せば私は研究者になりたかった……。まぁ夢のままで終わったけど。
研究により正誤がしっかりしているもの、はっきりしているものはわかりやすくて安心する。魔法に関しての教科書もあったがとりあえず読んでみた。勿論、半端者が使える術は少ないかもしれないが、知っていて損はないと思う。
私は半端者のままでいたい。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」ではないが、半端者であるためには、魔法使いの事も知っていて損はない筈だ。私が出来ることって勉強する事だけだし。私は1日の大半を侯爵家の図書室で過ごしていた。
◇◇◇
とうとう? 神殿に行く日が来た。本来7、8歳くらいから、神殿でレベル上げプログラムを行う事が多いのだが、私は半端者の中でも特にレベルが低いので早めに開始した方がいいとの事だった。
と言っても、今日はオリエンテーション? 面接? のようなもので、これからどう言った事を学ぶのか教えてくれるみたいだ。ずっと神殿に籠るのではなく、小さいうちは日中のみ通うような感じだ。
初日なのでお母様もついてきてくれてる。お兄様とカイは留守番だ。
お母様だけなら転移魔法も可能らしいが、魔力の弱い私のような者は魔力酔い? 船酔いの様な症状を起こすらしく、馬車での移動となる。
乗る馬車を引いてくれる馬? は前世の馬とは少し違って、前世でいうペガサスの様な感じの白馬だ。背中から羽が生えてる。
ラノベでも出てくる魔獣。真っ白なペガサス……ちょっと乗ってみたいな。厨二病……いやろまん??
前世の私はめちゃくちゃ運動音痴だったけど、ジェットコースターとかは好きだった。あんまり関係はないけど……。高いところは大丈夫。
乗れないかな。乗りたいな。今度お願いしてみよう。
お母様に連れられて馬車に乗り込む。一瞬、ペガサスと目が合った気もするがいつもの調子で私が目を逸らしてしまった。ペガサスが鼻を鳴らす音が聞こえる。
今のはわざとかな……? 笑われた……? 嫌われた……?後、側まで行くと思った以上にペガサスは大きくて私は萎縮してしまった。むむむ……無理だ。
扉が閉まると、すぐに出発した。いつの間に御者さんがいたのかな? と言うか……飛ばないんだ……?