表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第一部 アーレン王国編 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/159

お出かけ

 私は今侯爵領のメインストリートに来ている。

 私の髪色は目立つので今はオリバーと同じ焦茶色の髪と目に変装してみた。服装も少し裕福な商家のお嬢様風の装いだ。私好みのシンプルな紺のワンピースに身を包み、靴は歩きやすいようにヒールの低い白のブーツを履いている。

 髪は緩く編んでもらい帽子はワンピースとお揃いだ。


 護衛はオリバーだけで充分らしく私はマーサを伴って3人で来る事になった。

 馬車からちらりとメインストリートを覗いたことはあったけれど、私と言う存在がバレてはいけないのでなるべく外は見ていなかった。今思えば変装して外を覗けば良かったんだ。

 こうやって歩いてゆっくり見て回ると、また違った景色が見えてくる。


 メインストリートは舗装されていてとても歩きやすい。質感は石であるが、石畳ではなくボコボコしていないのだ。魔法で作るとこうなるのかな?

 近くに寄って建物を見ると質感も魔法で作った為か、つるりとしていて艶がある。窓もちゃんとあって、色は茶系や白系に統一されてはいるが、建物によって個性があり見ていて楽しい。

 メインストリートには少し高級そうなお店が並んでいて、少し外れると、市場やお手頃なお店が多いみたいだ。

 侯爵領の経営はうまく行っているのかとても活気がある。

 お父様の手腕はさすがだ。


 とりあえず私は欲しい物もないので、ウインドウショッピングをする事にする。

 メインストリートは高級な物が多く、敷居の高そうなレストランだったり、宝飾や装飾、魔道具なんかもある。

 宝飾品には興味はあまりないけど見ていてキラキラしてるのは綺麗だなとは思う。少しでも気になるお店があれば入ってみてはどうかと言われて歩いていると、時計のお店が目に入った。

 これまでは、神殿に行く位しかなかったので必要なかったけれど、前に魔の森でグレゴリーさんを待ってる間の時間感覚がわからなくて、凄く長く感じた。今思うとすぐだったんだろうけど。こう言う時、時計があると便利だなと思った。

 神殿に入ったらマーサもいない訳だし、自己管理が必要になる。そう思うと時計が欲しくなって来た。

 店に入ってみると左側に女性用、右側に男性用の時計、奥には大きな時計と子供用の時計が飾られてあった。

 

 「マジェッタ時計店へようこそおいで下さいました」


 奥から品の良い30代の女性が現れた。


 「少し拝見させてもらいますね」

 「どうぞご自由に、気になるものは試着できますので気軽に声をかけてくださいね」


 私は12歳で少し中途半端だから、子供用でもいいかもしれないが、長い目で見てやはり女性用から選ぼうと思う。


 デジタル時計は流石になかったけれど、アナログ式の時計で、女性の腕にフィットする大きさの時計がある事に驚いた。てっきり懐中時計の様な大きな物しかないと思っていたのだ。勿論懐中時計が主流で、店の半分以上を占めている。


 「すごい小さい時計でしょう?

 こちらはルルーシオ王国の技術です。ルルーシオ王国に伝手がありまして、取り寄せているのですよ。腕時計という名前です」


 「すごい小さいですね。腕のいい技術者が沢山いるのでしょう」


 「そうなのです! 素晴らしい技術ですよね!

 それにこれの凄いところは魔石で動くので巻く必要がない時計なのですよ。年に一度魔石に魔力を補充するだけでいいので巻き忘れる方にはおすすめの商品です」


 「ふふふ、私にぴったりの商品ですね」


 私は前世の時計はソーラー電波時計一択だった、巻き忘れないし、ソーラーは太陽光に当ててあれば半永久的に止まらないので重宝していた。これは、半永久ではないけれど一年に一度なら自分の誕生日に補充すると覚えておけば充分だろうし、それ以外に気が向いた時に補充すればいいのだ。多分大丈夫。

 私は魔石時計に狙いを定める。

 その中に一つなんとも懐かしい時計が目に入った。

 ベルトはメタル調で円盤はあこや貝の様にみる角度によって虹色に輝く土台に、可愛い花の模様があしらわれている。インデックスは控えめなダイヤモンドで出来ており上下左右の四つの石は他のよりも少し大きい。全く同じではないけれど前世の記念日に買った時計を彷彿とさせ、私は釘付けになった。


 「ではこちらの時計をお願いします。ベルトの調節もお願いしますね」


 「マーサ!」


 「気に入ったのでしょう?

 屋敷を出る前にも言いましたが、お嬢様は本以外にほとんど予算を使っておりませんからこれくらい大丈夫ですよ」


 いやいや、どう考えても物凄く高そうな時計だ。

 前世ではイミテーションなる物があったから値段はそこまで高くなかったけれど今世にはそんなものはない。きっと本物だ。

 絶対に高い。それにこんなものを神殿でつけていたら絶対にやっかみを受けるのは間違いない。そう言うのは避けたいのだ。

 

 「マーサ、私はもう少し実用的な物が欲しくて……」


 「ではもう一つ、実用的な時計を買えば良いのですよ」


 マーサに押し切られてしまった。

 もう一つは魔石時計だけどシンプルで実用的な懐中時計にした。腕時計はどれも高級だったので……けれど魔石時計は譲れなかった。

 今世の初めての買い物は上々だったと思う。

 あの高そうな時計は良かったのか悪かったのか……マーサが満足しているので良しとしよう。

 ウインドウショッピングは余計なものを買いそうになるので注意が必要! 前世でも失敗談ありありです。

 でも、今から言うことは間違ってないと言い切れます!!

 私はくるりと振り返りオリバーとマーサを見た。

 

「マーサにはいつもお世話になっているし、オリバーは就任祝いという事で私から時計をプレゼントしたいです。是非贈らせて下さい」


 「えぇ?私は……」

 「私の予算は余っているのでしょう?

 だったら市井に還元しないといけないと思うのね」

 マーサが断りの言葉を言う前に私は言葉を重ねた。


 「私もそんなつもりで連れ出した訳では……」

 「あら? 「私の就任祝いにお願いします」と言ってましたよね? なら主人として贈るのが常識ではなくて?」

 私はこてんと首を傾げ、お嬢様らしく言ってみた。

 前世なら痛い子にしか思えないが、今世なら許されるはず……?

 「いや、それはそう言う意味ではなくて……」

 オリバーもこれは予想外だったらしい。驚きを隠さないでいるオリバーは新鮮だ。してやったりである。

 勿論オリバーが、何かを強請ろうと思って連れ出そうとした言葉ではないのはわかっているが揚げ足をとってみた。いつもは言い負かされてますからね!

 それにお祝い事はケチるなとよく言われたものだ。線を引いてはいてもお祝はケチるものではない。

 私が稼いだお金ではないけれど、予算は余っているらしいし大丈夫なはずだ。


 私は2人に有無を言わさず、ニコリと微笑んだ。

 2人は恐縮して選んでくれなかったので、私が選ぶことにした。

 あまりに高価な時計だと、他の人から妬みが出てくるかもしれないので、私の実用的な懐中時計と同じシリーズの模様が少し違うがお揃いの型にした。見た目はシンプルで、どこにでもありそうなオーソドックスな時計なので大丈夫だと思う。裏にネームを掘ってもらった。ネーム入れって特別感があって良い!




 後日、それを聞いたお兄様とオリバーの仲が余計に拗れてしまったので私は慌ててお兄様とカイの懐中時計も買った。

 勿論お兄様のは私と全くお揃いの時計だ。お兄様の懐中時計としてはシンプル過ぎるのではないかと思ったのだがお兄様が譲らなかった。

 流石にお兄様と同じでは後々まずいので私はお兄様にお許しをもらいお兄様の懐中時計には家紋を入れた。裏に勿論名前を掘って誰のかは分かる様にはなっている。

 カイはもう少し大きくなってから絵を入れて貰えば良いと思っている。今入れると残念な絵が入る気がするので……。

 お兄様がこんな事で拗ねるとは予想外だったけど、兄妹弟お揃いの懐中時計は絆ができた様でとても嬉しい。


 ……あぁ!! 甘い物食べるの忘れてた!! 次は食べ物巡りしなくては!! あれ? オリバーの思うツボ?


 

諸事情で、夜更新になる事があります。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ