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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第一部 アーレン王国編 

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一期一会

「特に、退屈はしていませんよ。私にとっては読書は至福の時ですから」


 私はそう答えて、読書に戻る。前世も暇さえあれば、読書していた。知識を得る事は視野が広くなるし、知識は嘘をつかない。物語を読んで妄想するのも好きだ。

 私は運動しないとどんどん太るタイプだった為、運動系のクラブに入ったり、大人になってからもスクールに通ったりして、体は動かしていたが、基本はインドア派だ。

 運動はグレゴリーさんの鍛錬で充分なので、特に外出したい訳ではない。


 「それは、遠慮しているからではないですか?

 最近、反王国派である過激な者達の動きが活発になって来てると言われていますし」


 オリバーの言う事は間違いではない。

 けれど以前から過激派の動きは少しずつ勢いを増してはいるのは今に始まった事ではない。

 私は首を横に振り否定する。

 


 「私も最初は困惑しました。

 ようやく魔法使いの安寧の地と言われているアーレン王国に辿り着いたと言うのに、中では揉めていたのですから、ここでもかと言う思いはあります。何が一体不満なのか……理解に苦しみます。

 フィリア様はいまだに私が主従契約をした真意を図りかねている様ですが、至って単純ですよ。

 私はこの国では後ろ盾がなかった。国が揺らぎかけてる時にそう言った者たちは使い捨てにされる可能性が高いのですよ。

 良いように扱われて、最後はトカゲの尻尾切りにされるのです。私はそうならない為に少ない情報から最適な後ろ盾を得ただけです」


 オリバーは、今は平穏に暮らしたい事が1番らしい。

 そうなると穏健派である国王派に所属したいと思ったそうだ。文官は身元保証人が何名かいる為、入職するのは難しいらしい。

 職業の選択を考えた時に王国騎士団に所属も考えたらしいが、王国騎士団の中も一枚岩ではなかった。

 グレゴリーさんは家名を捨てているので、実家には頼らないだろうし……。

 流れ者の職業は、本人の希望により斡旋されるが、信頼を得るのは確かに時間がかかる。

 そこで私だったらしい。私がグレゴリーさんの指導を受ける関係で、私に対する秘密保持契約を既に交わしていたらしい。

 おっと、それはすみません。

 私と言う存在は隠されてはいるが侯爵家にて大切にされている所を見て、私の護衛をしていれば、自分も守られると言う打算もあったとか。

 信頼を得るには方々に愛想良くするよりも、一点集中の方がいいし、私と言う縁でルクセル侯爵家を選んだとの事。

 交渉している時にお兄様を見て、信頼出来る人と判断したとか? 


 「私は巡り合わせ、特に縁はとても大切だと思っております。まぁ受け売りなんですが……。

 その時たまたまそこに居合わせただけかもしれませんが、私はそのお陰で助けられて今ここにいますので」


 オリバーは少し懐かしむように話しながら笑みを浮かべる。



…………



 『どんな出会いだったとしても、それは縁あっての事だ。

 一期一会だよ。それで人生が変わるかもしれない』


 軽い感じなのに、何故か四字熟語で話しかけてくる青年に、私は曖昧に返事を返す。


 『はぁ……そうですか……でも私は今のままで良いです』


 『そんな事言わないで〜!!

 一歩踏み出してみよう?

 とりあえず俺とご飯食べに行こう?』


 『…………うぇ』


 更にナンパするように軽い感じで返して来た青年に思わず眉を寄せた。

 

 『辛辣〜』


………… 





 

 少し前世の記憶と重なり、オリバーがあの人に見えた。なんとも言えない感情が渦巻いた。顔も性格も全然似てないのに。そういえばあの人は縁を大切にする人だったな。

 確かに、あの時私達が迷いの森に行かなければ、オリバーは助からなかったかもしれないけど……。

 お兄様を信頼出来ると言うのはちょっと、こじつけの様な気がしてならない。


 「まぁ、償いなのかもしれません」


 オリバーは呟くような声で言ったが、私にはその真意はやはりわからなかった。


 「そうではなくて、外出しましょう!!

 せっかく専属護衛がついたのですから、フィリア様の思うようにしたらいいのです!!

 私は何度も侯爵家のメインストリートには足を運んでいますが、一度も行ってないなんて勿体無いですよ!!」


 やはりオリバーは、私を外出させたいらしい。


 「私は思うようにして、今こうしていますよ」

 

 何となく外へ出る事はフラグのような気がして私は断った。まぁ私のフラグは当てにならないけど。


 「そんなはず……どうか私の就任祝いだと思って是非お出かけしませんか? 私にお役目を果たさせて下さい!!」


 何なんだろう。この強引さは……。私は困ってマーサを見た。

 マーサは私とオリバーとの会話には入らず始終無言を貫いていたけれど、私の視線を感じて話してくれた。


 「私は、フィリアお嬢様のお好きなように……と言いたい所ですが、私も一度は馬車の中からではなく、侯爵領を是非見ていただきたいと思っておりました」


 マーサの意外なオリバーへの援護射撃に驚いた。

 マーサは少し苦笑いをしてるが、それが本心だったようだ。周りから見ると私は外にも出ない可哀想な子だと思われてたのかしら……?

 2対1で天秤が傾いてしまった。このまま押し問答していても、これから先、何度も言われそうな気がしたので、今回は私が折れる事にした。

 

 

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