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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第一部 アーレン王国編 

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お兄様の怒り

 「私は認めていない」


 普段では考えられない様な低く唸る声を発したのはお兄様だ。オリバーさんを鋭い目で睨みつけている。お兄様がこんなに感情を露わにする事にも驚きだ。

 対するオリバーさんは、先ほどの余裕な笑みは隠し、お兄様を見て困った様な申し訳ない様な顔をしている。何と言うか、お兄様には一目置いていると言うか、遠慮がある様だ。


 ……何となくだけど、お兄様とオリバーさんとの意見の対立でこれ程までに時間がかかったのはわかった。それに両親が疲れているのも……。


 お兄様の反応は、むず痒くもあるけれど、素直に嬉しい。私の為を思ってくれているのがわかるから……普段感情を表に出さないお兄様なら尚更だ。

 対して、オリバーさんはそこまで私の護衛になりたいのか、その意図が掴めない。私が外に出ないのは可哀想だと言うが、多分私が望めばオリバーさんじゃなくても、例えばシドとマーサ付きであれば街に行く事は今でも可能なのだ。私が今まで望まなかっただけで、態々、オリバーさんが専属護衛になる必要はない。

 私が不審な目でオリバーさんを見ていたのが伝わったのか、こちらに視線を向けて話し始めた。


 「これは、フィリア嬢のためでもあるが、私個人のためでもあるのだよ」

 

 オリバーさんの為? 

 私がよくわからないでいると、お父様が契約内容について話してくれた。


 「オリバー殿が、フィリアの専属護衛になる際は主従契約をしてもらう事になった。私はこそまでする必要はないと言ったのだが、これはオリバー殿からの申し出で、本人の強い希望だ」


 ……はい?

 主従契約とは、誓いを立てる本人が主人に対して一生仕える、決して裏切る事はない、宣誓の様なものだ。その宣誓は魔法契約により縛られて決して違える事は許されない。

 宣誓内容は宣誓時の契約によって異なるけれど、基本的には主人を崇拝していたり、主人に信用してもらいたい時に自ら行う事で、多くは主人に生殺与奪を握られる事になる。生殺与奪……つまり主人が望めば死ぬ事もあるし、主人が死ねば契約した従者も死ぬ事もあるのだ。主従契約での護衛なんて聞いた事ない。

 普通の護衛契約では、秘密保持契約に護衛契約を付加して結ぶ場合が殆どだ。護衛契約では、せいぜい主人に不利益になる事が制限されるのみで、生殺与奪までは関知しないのだ。

 ますますわからない。オリバーさんは一体何を考えているのだろうか? 私は人の生殺与奪なんて握りたくないです。


「私が奴隷落ちしていた事は、フィリア嬢もしっているだろう? 主従契約は奴隷契約と同じ様な契約種類だ。重複は出来ないのだよ。契約の殆どは魔力量ではなく先着順で効果を発揮する。つまりフィリア嬢と主従契約していれば、私に奴隷契約をする事が出来なくなる。私はもう2度と奴隷落ちにはなりたくないのだよ」


 オリバーさんがそう言って私を見る。嘘をついている様には見えないが、なんせ腑に落ちない事ばかりだ。

 確かに、戦時中は、敵国の奴隷落ちにならない様に、主従契約を信頼できる人としていた事はあったそうだが、今は戦時中ではない。百歩譲って奴隷契約を2度と結ばないようにするための先制処置だとしても、何故私なのか疑問が大有りだ。助けてもらったグレゴリーさんならともかく、私はオリバーさんに何もしていない。私達はまだ会ってから数ヶ月であり、その間に会ったのも十数回程。私の方が剣や魔法の指導をしてもらっている方でどちらかと言えば逆の立場だ。崇拝される様な事はないし、私の信頼を得た所でオリバーさんのなんの特にもならない。


 「因みにオリバーさん程の人が、何故奴隷落ちに?」


 「ははは……若気のいたりかな」


 オリバーさんは苦い顔をしながら肩をすくめてみせた。

 オリバーさんの普段の教養や対応の様子からだと、幼少期に奴隷狩りにあったとは思えない。大人になってからは更に奴隷狩りに引っかかるとは思えない。何か理由があると思って聞いてみたけど……もしかしてハニートラップとか?

 

 「フィリアであれば、自分がコントロールできると思っているのか?

 フィリアはオリバー殿のおもちゃではない」


 怒りを滲ませた声で辛辣な言葉を発したのはお兄様だ。

 なるほど……そう言う側面もあるのね。主人が無能なら従者の意のままに操られる人形になる訳ね。

 えっ? 私ってコントロールされやすい?


 「フィリア嬢との主従契約が不服なら、フィリア嬢とは、一般的な護衛契約にして、主従契約は侯爵令息殿でも良いんだよ?

 侯爵令息殿にも迷惑をかけた自覚はあるからね。これなら安心できるかい?」


 「は?」


 オリバーさんの提案にお兄様は理解できないという表情をしている。オリバーさんは意外にも真剣な表情で提案している。覚悟しているとも言えた。


 


 

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