表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第一部 アーレン王国編 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

31/159

健康診断 アン編後半

 私の直感が嫌がっていると思った。

 私はみんなが健康でいてくれたらと思ってやっているだけだから、無理強いするつもりはない。アンさんは若いし多分大丈夫だ。なので、中止しようと思う。


 「アンさん、やっぱりやめておきま……」

 「アン、やってもらったらいいよ。それでとても楽になった人達が沢山いるんだ」


 私が、中止しようとすると何処からともなく、お兄様が現れて、健康診断をする様に進言してきた。

 お兄様にしては珍しい。人が話をしてるのを遮るなんて……。

 私はアンさんとお兄様を見比べた。

 アンさんは複雑そうな顔をしていて、お兄様は貴族特有のアルカイックスマイルだ。

 こっ困った。こういう時はどうすべきなのか?

 

 もう一度2人を見る……。アンさんは諦めた様な顔をしていて、お兄様は笑顔のままだ。

 お兄様のアルカイックスマイルは、侯爵家の嫡男としての顔だ。つまり今は私のお兄様としてではなく、次期後継者としてここにいるんだと思う。

 お兄様はいつもは感情はをあまり見せないけれど、普段は優しいのだ。

 そのお兄様が健康診断をしろという事はきっと何かがあるのだろう。

 ……あまり見たくないような気がするが、お兄様が譲る素振りは見せないので、アンにもう一度聞いてみた。


 「アンさん。あの……健康診断しても良いですか?」


 「はい……」


 消えいりそうな声で返事があった。こんな表情させる為に始めた事じゃなかったんだけどなぁ……と思いつつ健康診断してみる。私は労わるようにアンの両手を取り、目を閉じて(・・・・・)詠唱した。


「鑑定」


 …………。お兄様が何を言いたいのかはわかった。

 多分、複雑な事情があるんだと思う。

 お兄様は私に知らせておきたかったのだろうけど、私はそんな事より気になった事があった。


 「アンさん、頭痛に悩んでたりしませんか?」

 

 「えっ? えぇまぁ。

 医師や治癒師にはかかっているのですがあまり効果がなくて、時には治療で酷くなる事もあるんです。

 もう何年も前からの事なので諦めてる部分もあります。

 今の医師には根本治療は無く対症療法で付き合っていくしかないと言われています」


 アンさんは予想とは違う私の言葉に驚いている様だ。

 アンさんは頭痛持ちである事がわかった。しかも片頭痛と緊張性頭痛の併発で重度の症状がありそうだった。

 頭痛は辛い。いつ起こるかわからない恐怖と、ストレス、頭痛が起こると何も手がつかなくなる辛さと周りに迷惑をかける申し訳なさ。頭痛持ちを理解できない人からは怠け者だったり、やる気がないと辛い言葉をかけられる事もある。

 アンさんの頭痛は重症だけど、休んだりしているところを私は見た事がなかった。きっと今まで無理していたんだと思う。

 


「今まで辛かったですね。原因も分からなかったのでしょう?

 頭痛は周りからは分からないので理解されない事も多いのです。

 こんな小さな私で不安はあるでしょうけど、少し信じてみて治療をさせてもらえませんか?」


 私はそう言ってアンさんを見た。アンさんは、更に驚いて私を見た後、お兄様を見ている。

 お兄様は私を見て何か言いたそうな顔をしているが、言葉には出してこなかった。

 それをいい事に私はアンさんの返事を待った。


 「あの……もし出来るならお願いしたいです」


 明らかにお兄様に対して、気にしている様子を見せながらそれでも治療をしてほしいという事は、やはりとても辛いのだろう。

 私は自分の出来る事を精一杯しようと決めた。


 「すぐに全てを治すのは難しいと思います。でも少しでも緩和できる様にやりますので一緒に治しましょうね!」


 アンはおくびにも出さずに我慢しているのかもしれないが、現在片頭痛の発作中だ。

 片頭痛とは、頭にズキズキと脈打つような痛みが起こる病気だ。片頭痛というが、実際には頭の両側が痛むこともある。

 片頭痛の原因は不明だが、何らかのきっかけで、脳の血管が急激に拡張することで引き起こされ、それが神経に伝わり頭痛を起こす。

 片頭痛を引き起こす要因として考えられているのは、ストレス、寝不足、気候や気圧の変化、飲酒、月経など女性ホルモンの関与等だが、根本原因は不明だ。


 不明だけれど、急激に血管を縮めない様にする事と、血管が拡張しすぎない様にする事、神経にそれが伝わらない様にすればいいのだ。

 さっきマーサにした事を応用して、原因になってる拡張した血管と神経の間に私の魔力クッションを置いてみた。要は神経に拡張した血管に触れなければいいのだ!


 「これで少しは良くなったりしませんか??」


 「……今朝からずっと続いていた頭痛がなくなりました」


 アンさんは信じられないという顔をしていた。

 良かった!! これで一つは解決かな? もう一つの緊張性頭痛は同じ睡眠やストレスからくる事もあるけど肩こりからくる事も多い。

 緊張性頭痛は片頭痛と異なり、血管が収縮して血液の流れが悪くなって起こる頭痛だ。

 片頭痛とは逆になるので両方ある場合は頭痛の種類によって対処法が異なる。対処法を間違えれば余計に痛みが増す事があるので注意が必要だ。


 アンさんはリネン担当な事もあり、毎日たくさんのリネンを抱えたので、肩も腰もパンパンだ。

 これが緊張性頭痛の原因な可能性が高い。

 魔法で一時的に治してもすぐに戻ってしまう為、これはストレッチや軽い運動、マッサージをして筋肉をほぐす必要がある。

 後は、ストレスの緩和と充分な睡眠が必要だけど……ちょっと難しいのかもしれない。

 対処の仕方等をアンさんと話して私は治療を終えた。

 アンさんは最後まで複雑そうな顔をしつつも、傷みが取れてとても晴れやかな顔に見えた。



 ……お兄様はずっと私達の様子を見ていた。何か言いたそうだったけど、結局、最後まで口を出す事はなかった……。 

 やっぱりお兄様は優しい。

 ありがとう、やりたい様にさせてくれて。


 私はお兄様の下へ行き、にこりと微笑んだ。

 お兄様は眉を寄せちょっとムッとした様な顔をした後、ため息を吐いていつもの顔に戻り、私の頭を撫でてくれた。

 ほらやっぱり優しい。

 私は次期後継者としては許容出来なくても、お兄様としては褒められた気がした。


 お兄様……ありがとう!!

 

 



病名、治療もあくまでこの世界の価値観であって、架空の出来事です。現実世界とは異なりますのでご注意願います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ