フィリアの方針
なんやかんやあって、少し時がすぎた。だって私は、赤ちゃんだし? 動けないし? 言葉がわかるのはとっても有り難かったので、寝てる以外は周りの話を聞き耳たててました……。
慌てふためく周りの話を総合すると、私が生まれたのはアーレン王国で、魔法の結界によって保護された国みたいだ。昔、この世界は魔法使いは虐げられていて、それを救った英雄ラインハルト=アーレンが建国したらしい。ラインハルトが張った結界は、魔法使いしか通過する事が出来ない。
魔法使いの定義は魔法レベルが20以上である事だ。
レベル20台は下位魔法使い
レベル30台は中位魔法使い
レベル40台は高位魔法使い
レベル50台は王位魔法使いであり、ランクによって使える術も技の大きさもちがう。
レベル0から9はオーディナリーと呼ばれる。アーレン国の外の世界にいる大半の人達と同じだ。
そして
レベル10から19は魔法使いでもなく、オーディナリーでもない半端者で、ミディーと呼ばれていた。
そう言えば、生まれた時はオーディナリーだった。オーディナリーはこの国に住む資格がない。と言うよりも、結界によって排除されてしまうらしく、生まれた時に大騒ぎしたのはそのせいだ。
やっばっ! 私、赤ちゃんのまま国外追放される所だった。
つまり私はこの国に住むことが許されない人だったのだ。なんやかんや処置してくれたおかげで私はオーディナリーではなくなった。ありがたやー。臍の緒を切った後だったらそのまま結界の外に強制転移だったらしい。大変助かりました。
そう私はミディー、半端者だった。魔力レベルが成長と共に上がる場合はあるが、基本的にはランクが上がることはないらしい。と言うか、わざとあげない。ランクが上がる時に生死に関わる試練が起こるからだ。
この国は魔法使いの為だけの場所だ。ミディーは半端者なので排除されてしまいそうだが、どうやら? そうでも無いらしい。
おじいさんの神官さんが今後の事について、色々両親に話していた事を一緒に聞いていると、半端者の事が少しわかってきた。私の両親は凄い人そうだし? 半端者の存在は知ってたとしても、これからの事とか知らない事多いよね。本当ごめん。
半端者は魔法使い同士の子供でも稀に生まれるらしい。特に下位魔法使いには、あり得るらしく、なので、一応結界には排除されないみたいだ。
……あぁよかった。静かにひっそりと生きようと思っているけど、無駄に早死にはごめんだ。懺悔は必要だと思う。
ただ、一度結界の外に出てしまうと再び入る事は出来ないらしい。
ランクは生まれた時に決まり、基本的にはランクを上げないが、半端者だけは違う。成人までに下位ランクまで上げないとその場合も基本的に排除されるのだ。なので半端者には育成プログラムがある。それを行なっているのは神殿だ。
神殿は少し特殊な場所だ。アーレン王国では成人後も半端者であれば国外へ排除されるが、神殿のみ排除する機能が効かない。半端者にとっては唯一の避難場所になる。半端者は成人後は神殿から一歩も外に出ることを許されない籠の鳥になるのだ。
半端者がこの国で生きるには、道は2つしかない。神殿でこの世界の創造神クリスタラスケートを信仰し、一生、神に祈りを捧げるか、それが嫌なら必死でレベルを上げ、試練に打ち勝つかのどちからになる。
うーん? なるほどなるほど。さて私はどうしましょうか? 前世の記憶を持つ私は正直、罪の意識が強い。であるならば、懺悔の機会を持ち、清貧に生きるのも悪くないと思う。それに私は小心者だ。そんな難しそうな試練なんて乗り越えられそうに無い。うん。そうだ。私は半端者のままでいい。私は落ちこぼれでいい。
方針は決まった。
方針は決まったので、更なる情報収集だ!!
私はまだ、赤ちゃんなので、ベビーベッドの上だ。赤ちゃんって最初は目があんまり見えてない様な事を習った気がしたけど、そういえば私は生まれた時から目がよく見えてたよね。
肌触りのいい寝具に眠気を誘われつつ、周りを見渡してみると、とても高級そうな家具に、品のいい調度品、薄いクリーム色の壁紙は温かで、本当に居心地がいいの。
お母様もいるけど、常に乳母さんがいて、丁寧にお世話してくれる。メイドさんも何人か出たり入ったりしてて、すごい使用人の数……。やっぱり良いとこの子だよね? 高位貴族ってやつかな?
「ちゃんと産んであげれなくて、ごめんね……」
呟く様な声で紡がれた言葉を出したのはお母様のアリシアだった。
……そうだよね。お母様は責任感じてるよね。本来、お母様が王子妃様に魔力を与えるだけなら、ここまで私の魔力レベルが低くなることはなかったと、思う……。これは完全に私自身のせいでお母様のせいではない。自分の選択であり、自業自得と言うか、そう望んだ事であったけど、お母様はそれを知らない。
日に日に憔悴していくお母様を見てると心が痛む。私は誰かの役に立つならと思ってした事だけど、お母様を苦しめるつもりはなかったのです。ごめんなさい。この気持ちを伝えたいけど、私は赤ちゃん。言葉は理解できても喋れないのだ。