フィリア地雷を踏む?
「それではいつでもお呼び下さいませ。
用がなくてもお呼びくださいませね!! ご主人様」
そう念を押してから丁寧にお辞儀をしたブレンが消えると同時に、時が動き出した。
また、変な人? が出てきたわ。ファンタジーってなんでもありなのね……。
「フィリア? 大丈夫か??」
とても心配そうにこちらを覗くグレゴリーさんがいた。
グレゴリーさんは私が考え込んでいて、ぼーっとしてるので、気にしてるのだろう。とても不安げだ。
また倒れたら大変だもんね。
グレゴリーさんが指導する上で、私の家族から条件が色々出されてるみたいだ。
私が倒れて、家族はとても心配してくれた。あの冷静で表情を崩さないお兄様が、取り乱したというから相当だったのだと思う。心配かけてごめんなさい。
家族からは行かなくても良いと言われたけど、グレゴリーさんと約束もあり、私の方からお願いして、行かせてもらう許可を取った。
家族は本当に良くしてもらってる。半端者の私なのに……。
「フィリア?」
グレゴリーさんの2回目の呼び掛けで、私はようやく現実世界に戻ってきた。
「すみません。グレゴリーさん。少し考え事をしてました……ちゃんと鑑定出来ましたよ? 家名は見る事はできませんでしたが」
私はニコリと笑い(笑ってるつもりだけど、実際はわからないが)、鑑定結果を告げた。簡易版ですよ! 勿論!
「中々、良い鑑定だ。
魔力も最小限だし、こちらが意識してないとわからないくらいの鑑定力だ。
私の家名は常にプロテクトをかけているからな。
潜在的に拒否もしているからかもしれないが、家名を見破られた者は、まだ現れた事はないな!
まぁ見破れる程の人は皆、私の家名を知っているからとも言えるが……フィリアはまだ先だな。
まぁまだまだ時間はある。家名を見破れば、一流だ。
慣れもあるから、これからも毎日、使用人や動物、物、あらゆる物に鑑定をするんだぞ!!」
『フィリア様フィリア様、私はグレゴリー様の家名を知っております!! 彼はグレゴリ……』
今、頭の中でブレンさんの声が聞こえてきた。
ストーップ!! グレゴリーさんの家名は知りたくないです。
そんなに隠してるのに他人の秘密を暴く様なことはしたくないので……。
それに5歳児が、すぐに家名が分かってしまっても、変な気がする。
私は極力目立ちたくないので、知らないままがいい。
知ってしまうといつかボロが出そうだし……腹芸は苦手だ。
なら最初から知らなければいいのだ。
『そんな〜』と落胆するブレンさんの声が聞こえた気もするが、今はグレゴリーさんの指導中だ。
ブレンさんには悪いけど、目の前のことに集中するとする。ごめんよ! ブレンさん。
「はい。わかりました」
使用人のみんなに鑑定をかけるのは気が引けるが、みんなに了解は得てやらせてもらおう。
もちろん簡易版でだ。敵とかじゃない限り、本人が嫌がっている所まで鑑定するつもりもない。
簡易版はカスタマイズできると言っていたし、ブレンさんにそう言う設定にしといてもらおう。
『お任せください!!』と言う声が聞こえてきたような気もするが、今は目の前に集中だ!!
「フィリアも、だいぶ私に慣れてきたな!」
確かにグレゴリーさんと再度、話をしてから、毎日顔を合わせる様になって、慣れてきた様にも思う。
最初の様な怖い感じもないし、親しみやすくなってきた?? 人の慣れとは面白いものだ。
「そうかもしれませんね」
私が肯定すると、グレゴリーさんはニヤリと不適な笑みを浮かべた。
あれ? なんか地雷を踏んだかしら?? 怖いんですが……??
ちなみにフィリア自身の鑑定能力が凄いので、フィリアが拒否すればフィリア自身を鑑定される事はないのですが、実は両親2人、お兄様、カイの4人から鑑定のプロテクトをかけられているので、元々鑑定され難いです。
フィリアが初めて神殿に行った日、大司教様がわざわざ、シャーロット(お母様)の前で鑑定を行い、声に出して「鑑定」と言ったのは、同意を得て鑑定をしないと鑑定できなかったからです。実はフィリアはとても過保護に守られているのですが、本人はあまり気づいていません。




