この世界の人物鑑定がチート? おかしい! 後半
ブレンさんは、目をうるうるさせながら私に座る様に促す。とっとりあえず、私は椅子に座ってみた。話が進まなそうだし……。
「では、そうですね。私のおすすめの場面は……」
そう言ってブレンさんが手をかざすと、私の目の前に、ディスプレイの様なものを用意して、映像を映し出す。
どこかの学園の中庭だった。
これはグレゴリーさんの若い頃? 10代半ばくらい?? 若い頃はもっと細かったんだ。意外だわ。結構、優男に見える。周りにいるのは同じ学生の人達かしら? 同じ王立魔法アカデミーの制服を着ている。
グレゴリーさんは若い頃は少し軽薄な感じもするけど……この年代はこんな感じでツンツンしてるのかもしれないわ……じゃなくて!!
「いやいや! いやいやいや!
そう言う問題じゃありません! ブレンさん!!
そんなプライバシーのへったくれもないじゃないですか!! ダメです!!」
思わずながされそうになってしまった。
ここは流されてはダメだ!!
私は、とりあえず映像を止めて貰った。
こんなの覗き見じゃないですか!!
「ダメでございますか? 映像で見るのはとてもわかりやすくて良い事だと思いますが……。あっ! わかりました!!
今流行りの没入型の映像がお好みと言うことですね!!
フィリア様はお若いですし、ディスプレイよりも、現実の様にその世界に入られる方が、感情移入出来ますものね!!
流行りについていけずに失礼をいたしました。
すぐにメンテナンスをして、没入型にも対応致しますので、少々お待ちください! 」
「ちっがーう!! そうじゃありません!! 」
思わず、つっこんでらしまった……。
ブレンさんは少し私を見つめてから深いため息を吐いた。
「はぁ〜仕方ありませんね。映像オプションは一時的にオフにしておきます。
必要の際はいつでも言いつけてくださいませ。
とても有用でございますよ?
百聞は一見にしかずです。
没入型にも対応できる様にしておきますのでご安心ください。
では語り部の方でさっきの続きから……」
私がジト目で見ると、それはそれはとても残念そうに、更にため息をついてから、ディスプレイを消して、頬に手を当てて、話し始めようとするブレンを尽かさず止める!
「ちょちょちょっと!! 映像も語り部も一緒だから!! 普通の鑑定でお願いします!!」
「普通……ですか? 普通とは何でしょう?
……ステータスのみという事でしょうか??」
私は素早く頷いた。変なのはもういいです!!
「……そうですね。では、簡易版、詳細版のデータでのお渡しと言うことでよろしいですか?
簡易版は、ご自身でカスタマイズする事も可能でございます。」
「簡易版で良いです!! それでお願いします!!」
私は食い気味に返事をした。
ちゃんと普通の鑑定も出来るのね。良かった!!
と言うか時が止まるまでの最初は普通だったよね?
詳細版は今までのブレンさんから想像するときっと膨大な量に違いないから、簡易版できっと大丈夫なはず!
毎回、鑑定で映像を見せられたり、御伽話の様に語られても困りますよ。重要なステータスだけで、充分です!!
ってか、そこ以外いらないでしょ?
「そうすると私の出番が無くなるのですが……
今このシステムを使えるのはフィリア様だけにございます。
つまり私はまた独りぼっち……誰とも喋る事なく、またいつ現れるかわからない人を待ち続けないといけない訳ですね……」
そう言ってブレンは眉を下げとても悲しそうな顔をする。
えぇ……これって私が悪いのか? 悪くないよね?
プライバシーを考えれば、常識だと思うんだけど、ってかそんなグレゴリーさんの生い立ちとか私には重過ぎるので、本人の口からじゃない限りいらないです。
「ええっと、映像や語り部じゃなくても、時々なら出て来ても良いんじゃないかな?」
どうして良いかわからず、適当に言ってみた。
おしゃべりするくらいは良いよね?
これで解決できるかは不明だけど?
「なんと!! その様な事を許して頂けるのですか?
なんとなんと!! ありがとうございます。
このブレン、必ずやフィリア様のお役に立ってみせます」
さっきの悲しそうな顔から一転、生き生きとした顔でこちらを見た。
徐に私の前に跪き、私の手を取って、口付けを落とす。
えぇっと? ブレンさんは納得してくれた様だ。
変な人とお友達になりました……?
友達なのかしら? 友達って何……??
……フィリアはツッコミが上手くなってきましたね!
成長してます!!……えぇっとそうじゃない?
視線を合わせての鑑定にこんなのがあったとは……。フィリアは視線を合わせない鑑定の方が楽だったのかな?




