グレゴリーさんのトレーニング……?
結論から言うと、グレゴリーさんのトレーニングは拍子抜けする程穏やかだった。体力的には……。精神はごっそり持ってかれた気がします。
まぁ初日に、私が気絶したせいかもしれないが……?
あれから数週間、祈願もしつつ、毎日トレーニングをしている。
祈願はトレーニングの一環として、最初に行われ、その後にグレゴリーさんの指導が入る。
まずは目を合わせるトレーニング。私の前髪は目が完全に隠れないほど短く切られてしまった。
いや! これだけでもかなり私には負担で、負担で慣れるまで何日かかかった。防御力が下がった気がするのです!!
何日もビクビクしながら恐る恐る周りを見ていました……はひ。今世にサングラスがあったなら隠せるのに!!
5歳児のサングラス欲しいな。
サングラス越しで視線を合わせても良いんじゃない? ……グレゴリーさんから叱責が飛んできそうなのでやめときます。
本当はいろんな方と顔を合わせて、慣れていくのがいいらしい。習うより慣れろデスね。
けれど私はあまり知られてはいけない存在でもあるので、沢山の人を呼ぶ訳にはいかない。
苦渋の選択でグレゴリーさんが変身魔法を使って、色々な方? 顔に慣れる訓練をした。
「今から、私が様々な人物に変身するから、初対面の人だと思って慣れなさい。
視線を忘れずに。
今日から鑑定もしてみなさい。鑑定はなるべく気取られないようにな」
グレゴリーさんの指導は実に的確なのだと思う。あの初対面の行動はなんだったのかと思うくらい。喋り方も普通だ。
っていうか! グレゴリーさん、さすが元騎士団長! もしかして間諜とかもやったりした事が有ったとか?? 変身魔法凄すぎる!!
声も年齢も、身長も体重も、髪も瞳もとにかく全てにおいて全く違う人になりきれる! 性格だって違う様に接してくれたりして、目の前で変身されても同じ人? と疑ってしまうくらいだ。
変身魔法が凄すぎて、思わず目線は釘付けになって、これはこれでやりやすかった! えっ? 練習になってる?
えぇっと視線の訓練と同時に今日は、鑑定のトレーニングだった。
相手の出会い頭に目線を合わせて鑑定までが1つの流れらしい。
はいっ! 任せてください!! 鑑定は得意です!! と思っていたのだが、グレゴリーさんの鑑定は主に人に関してだった。物には得意ですよ!! これでもかというくらいやって来ましたので!! えっへん!!
じゃなくて、私は鑑定を人には基本的してこなかった。
これは多分、前世のプライバシーの侵害に抵触する恐れを感じて無意識にしない様にしていたのだと思うけど、こちらの世界では、公的な場や目上の人でない限り鑑定は行った方が良いとの事だった。
特に自分の護衛騎士や周りのお世話する使用人に対しては、何も問題ないとのこと。
主人が毎日体調管理する様な事かな?健康チェックは大事よね?
それに自分より鑑定能力が上の者だったり、相手に強い拒否があれば弾かれてしまう恐れもあるとの事。
なので鑑定の能力を上げるのは戦闘において必須であり、如何に相手に気取られずに鑑定出来るかも重要になってくるみたい。
その為普段から、鑑定は癖付けていなさいとの事だ。
……う〜ん。そもそも戦闘の為なのよね。
グレゴリーさんの息子さんの話からすると、基本的に害獣対策になる訳で、人に鑑定するのは、ちょっと私には抵抗があるのだけれど、普段からやるやらないは置いといて、グレゴリーさんの指導に付き合うと決めたからには、グレゴリーさんの指導に従うまでだ。郷に入っては郷に従えですな!
あれ? ルイス様の鑑定、何故出来たのかしら?? 私の魔力とルイス様の魔力レベルは月とすっぽん程の差があるのに? 鑑定能力と魔力レベルは関係ないということなのね。それでルイス様は驚いていたんだわ! 納得!!
いずれにせよ、最低でも、街や森に行く際は、気になる相手には鑑定をおこない自分に不利益が無いかどうか確認は必要だとの事。その癖付けは大事だという事で、そのトレーニングも行う事になった。対人戦は必要なのですね。それがちょっと辛い。目を見るだけで、精神ごっそり持ってかれるよ〜……。
さて、まずはグレゴリーさんの鑑定だ。
相手の目を見た方が鑑定の詳細が増えるんだったわね。
グレゴリーさんの目に視線を合わせて鑑定してみる。
グレゴリーさんに対しての人見知りは大分、軽減されているはずだ!
そこまで言うなら遠慮なく鑑定させていただきますよ!!
フィリアは健康診断と斜め上のことを言っていましたが、使用人達に鑑定を行うのは、間者がいないかの確認であり、ある程度の身分の高い人達にとっては、この世界における魔法使いの必須の事です。使用人達もそれが普通の事であると考えているので、特に不快には思っておらず当然だと認識してます。
ただ公的な場所では、その会を主催した人の顔を立ててそのような鑑定をすることはマナー違反とされています。また自分より身分の高い人に鑑定をするのも失礼にあたります




