グレゴリーさんとの対話 後半
そう言って、グレゴリーさんは話し始めた。
グレゴリーさんには半端者の息子がいたらしい。
色々な努力はしたけど、成人しても息子は半端者だった。
(グレゴリーさんって何歳だろう……?思ってたより年上……?)
息子さんは成人を過ぎても半端者である事に劣等感を感じ、心を閉ざし、神殿でも引き籠る様になったとか。
ある時、事故で息子さんは神殿の敷地から外に出てしまい。結界に弾かれ、そのまま行方不明に……。
半端者は神殿で暮らしている間は大丈夫だと思いがちだが、万一、何か事故の様なことが起こり外の世界に放り出される可能性がある。神殿はアーレン王国の中で1番強固な結界も張られており、基本的には安全な場所であるはずだが、何か、とんでもない事が起こったのかしら??
万が一にでもアーレン王国の結界の外に出てしまった時に、最低限対処できる術を見つけているのは大事だという考えから、半端者に生き残る手段を知って欲しいと思ってグレゴリーさんは神官になったという事だった。
私は特に半端者の中でもレベルが低い状態で生まれてきてるし、半端者のままである可能性が高い。
女の子と言うこともあり、早い段階から生き残る術を身につけて欲しいと、考えていたとか……?
確かに半端者には成人後、外の世界に放り出される可能性は否定できないし、放り出されると2度とアーレン王国には戻れないから、サバイバルの知識は必要なのかも……?
アーレン王国は迷いの森に囲まれた国で、結界に弾かれた場合はどこに飛ばされるかわからないし、飛ばされたところは必ず迷いの森のどこかになる。
迷いの森には凶暴な害獣もいると言うし、護身術は必要だ。
私はグレゴリーさんから逃げるために、第三の選択肢として外の世界へ行くことも考えたくらいだ。そう言った事も学んでおく必要はあるのかも……。
グレゴリーさんも何だか子犬の様に見えてきて、最初よりは怖くないし……。学んでおくのも悪くないのかも……。ちょっと不安だけど……。いやかなり不安かも……?
私は前世の後悔があるから、神殿で祈りを捧げて、ひっそり暮らしたいだけ。
他に何か目的があるわけでもないし、グレゴリーさんは息子さんに対してできなかった事を私にしようとしてるのかもしれない。それでグレゴリーさんの心が少しでも救われるのであれば、私が指導に付き合うのも良いかもしれない……。だいぶ不安だけど……。
「グレゴリーさんにも深い事情があることはわかりました。
昨日の様に詰め寄られるのは苦手ですが、私の事を思っての行動だったんですね。
昨日の様な強引なのは困りますけど、お手柔らかにご指導お願い出来ますか?」
「良いの……か? 私が怖いのでは……?」
「う〜ん。……確かに正直に言えばまだ少し怖いです。
けれど、私の事を思っての行動は分かりましたので、やってみようと思ってます」
私の言葉にグレゴリーさんはかっ! と目を見開き、体から力がみなぎる様に生気が戻ってくる。なんか大きくなった気がする……? 本来は無いはずの耳もたって、尻尾がブンブン揺れている犬の様に見える。目もキラキラしてる。
あっ、元気になってきた?
「そうかそうか!! わかってくれるか!! それじゃぁよろしくな!! フィリア嬢!!」
そう言って、にかっと!屈託のない笑みを作った。
「ご指導を頂くのでフィリアで構いません」
「よし! フィリア! これからみっちり鍛えてやるからな!! 大丈夫! 迷いの森でも何でも1人で対処できる様にしてやるからな!! 任しておけ!!」
えぇっと何だか昨日のグレゴリーさんと同じ様な感じになってきたのですが大丈夫でしょうか……?
……かなり不安です……。私……選択を間違えましたか……?




