グレゴリーさんとの対話 前半
朝日の眩しさと鳥の鳴き声で目が覚めた。
昨日は色々あったな……。グレゴリーさんに、ビンセント王子……1人でも私の中ではキャパを越えてるよ……。手首にあるブレスレットを見ると夢ではなかったみたいだけど……。
「フィリアお嬢様、おはようございます」
ノックの後、聞き慣れた声がすると、とても安心した。
「マーサ!」
「おやおやまぁまぁ。マーサは倒れられたと聞いて心配しましたよ。」
「心配かけてごめんね! 色んなことがありすぎてびっくりしただけ! 体は何ともないよ!」
マーサの顔を見て私は安心した。慣れない部屋にいるのは疲れる。マーサがいるだけで心強い!!
マーサも安堵の顔をしてる。心配かけてごめんね!
朝の身支度と、部屋で朝食をとった。どんなに大変でも朝ごはん大事! 1日元気が出ないからね! 忙しくてもちゃんと食べないと!!
グレゴリーさんとの話し合い? はセッティングされているらしく午前中に行われる予定だ。ビンセント王子……仕事が早いです……。
私は少し胃がキリキリする感覚をしてるのを何とか誤魔化して、グレゴリーさんがいると言う反省室に向かった。
マーサがノックした後、私も部屋に入る。
反省室は椅子とテーブルしかないとても狭い部屋だった。
私としてはこんな狭い部屋にグレゴリーさんと話をするのは……と思ったけど中央にガラスの仕切りがありグレゴリーさんがこちらに来ることはない。
多分私への配慮だろう。正直、とてもありがたい。
こちら側にはマーサもいるし何とか踏みとどまる。
グレゴリーさんは椅子に座っていたが、こんなに小さな人だったかな? と思うくらい体が縮こまっていた。昨日の様な覇気? 熱血? の様なものもないし、お通夜の様に空気が暗い。何だか私が悪いことをしてる気分になるくらいだ……。
本当に反省してたみたい。私が気絶するとは思わなかったんだよね。悪い人ではないと思っていたけどこんなになるなんて小心者の私が申し訳なくなるよ。
ノックはしたのだがグレゴリーさんは気づいてなかったのか下を向いたままだ。とにかく話をしなきゃね。ビンセント王子にも頼まれているのだし……。
「ぐっグレゴリーさん、おはようございます」
グレゴリーさんは私の声にびくりと反応して恐る恐るゆっくりと顔を上げた。顔を上げて私を見てとても驚いた表情を向ける。私は何とか笑顔を作ってる……つもりだ。
「すまなかった!!」
せっかく顔を上げたのにグレゴリーさんはまた頭をテーブルに押し付ける様に下げてしまった。
昨日とのギャップが激しすぎて、ちょっとこれはこれで怖いのですが、これでは話が進まないので、自分を奮い立たせる。
「頭を上げてください。グレゴリーさん!
昨日は私の事を思って話してくださったんですよね?
私はちょっと驚いてしまっただけで大丈夫ですので」
グレゴリーさんはゆっくりと顔を上げる。
「体調には問題ないのか……?」
「えぇ、問題ありません」
消え入りそうな声でグレゴリーさんは尋ねてきた。
まだ少し怖かったけど、私はなるべく穏やかな声で返してみた。
こう見ると叱られた子犬みたい……。
そう言えば前世で飼っていた犬もこんな感じでしゅんとしてる時あったなぁ……。何度あの子に助けられたか……。
そう思うと前世の子犬と重なって、恐怖心が薄れて、可愛く思えてきた。グレゴリーさんに垂れた尻尾と耳が見える……。
「本当にすまない。
半端者の事になるとどうしても熱が入ってしまって……。
もう2度とあの様な事は起こってほしくないものだから……」
そう言ってグレゴリーさんは話を始めた。




