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【完結】半端者の私がやれること〜前世を中途半端に死んでしまった為、今世では神殿に入りたい〜  作者: ルシトア
第一部 アーレン王国編 

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中庭 後半

 私は固まってしまい、少し間ができしまった。


 「ごめんね。言いづらい事だよね。

 けどルイスの変化はフィリア嬢のお陰だと思ってるよ。

 肩の力が抜けて余裕が出来た。

 最近、王宮での評価も上がってきてるんだ。」


 えぇっとルイス様の評判が良くなっているのはとても嬉しいですが……私は何か疑われてるのかな? レベルが上がったことに私が関係してると思ってらっしゃるのかしら? それは困るんだけど、ビンセント王子は何を聞きたいのだろう? 


 「そうですか……私は何もしていないのですが、評価が上がられたのであればとても喜ばしい事ですね」


 「う〜ん。今はそういう事にしとくよ。

 あぁ、そうだ。何か今後について悩んでるんだったよね?

グレゴリーの事かな?」


 「いっいえ……そうではありません……」

 グレゴリーさんの名前が出てきた途端、私の体は勝手にびくりと揺れた。目も泳いでる気がする……。


 「ふふ……顔に思いっきり出てるけど?

 まぁ、なんというか猪突猛進と言うか熱血と言うか……で、ちょっと周りが見えてない時もあるんだけど、悪気があった訳じゃないんだ。

 あぁ見えて、以前は王宮騎士団長の経験もある人だから、冷静な判断を下したり、采配だってちゃんとしてる。

 本来はとても優秀なんだ。

 私の剣の師匠でもあるんだけど、厳しいけど酷い事にはならないと思うよ……多分」


 元王宮騎士団長……あの筋骨隆々なのは納得だわ。この国は魔法使いの国だから、魔法で対処する事が多いけど、男女問わず剣術なり護身術なり身体能力強化も推奨されてる。

 奴隷時代のことが関係していて、魔力が封じられたとしてもある程度自分の身を守れる術も持っておいた方が良いということからだけど……。

 酷い事にならないのは多分なんだ。最後の間をおいた多分……余計心配になるよ。やっぱり引きこもり一択だわ……。


 「半端者の事になるとね……どうしても力が入ってしまうと言うか、後先考えずに体が先に動いてしまうんだろうな……。

 私の口からは勝手にグレゴリーの事を、話す訳にはいかないけど、色々あって、半端者の事になると目の色が変わっちゃうんだよね。

 グレゴリーの事、あまり気が進まないと思うけど、話だけでも聞いてあげて欲しいな? きっと話してくれると思う。

 今は物凄く反省してるから、次に会うときはもっと大人しくしてると思うし?」

 

 少し困った様な顔でビンセント王子にお願いされた。


 うっ……。あのグレゴリーさんとお話ですか……? だいぶ荷が重すぎるのですが…………。けれど、何やら理由もあるそうですし……。

 物凄く遠慮したいですが、未来の王太子殿下、ひいては国王陛下になるお方から言われてしまうと、……否とは言い難いです。

 はひ……。


 「……はい。承知しました」


 「そんなに緊張しなくても、次にグレゴリーと会う時はきっと大丈夫な筈だよ」

 

 ビンセント王子は、優しく諭す様にお話してくださるが、不安しかないです。

 

 「……何かあれば力になるから……1人で悩まないで?

 あぁそうだ。これをフィリア嬢に……。

 最近作ったんだよね。守りと癒しの力がある。

 出来ればずっと身につけておくと良いと思うよ。

 グレゴリーの指導の時は特にね?」


 少しおどけて言ったビンセント王子は私にブレスレットを渡してきた。とても華奢でシンプルなデザインのブレスレットで他に装飾品をつけても邪魔にならない様なものだ。

 グレゴリーさんの指導を受ける前提なんだ。私は逃げる気満々ですよ……?


 「頂けません……私なんかが……」


 「私なんかじゃないよ。フィリア嬢に持っていて欲しいんだ。

 ……フィリア嬢は、お腹の中にいた頃からの記憶があると聞いている。生まれる前のルイスとの事件の事も知っていると……。ルイスは知らないんだ。

 こんなお願いは私から言えるものじゃないのはわかっているが、ルイスには言わないでいてくれないか?」


 あぁ……もしかして本題はこれだったのかしら? ルイス様は私とルイス様がお腹にいた時の魔力暴走の件を知らないのね。

 ……確かにあの事故の事を知れば、ルイス様の性格上また臍を曲げちゃうかも。

 ぐれちゃったら困るし、今のルイス様との関係は私にとっても良い関係だ。出来れば終わらせたくはない。

 この様な物を貰わなくても私はルイス様に喋ったりなんかしないのに……。


 「この様な物を頂かなくても私は言いません。

 聞いているかもしれませんが、あの事は私の意思でしたものですので、誰のせいでもないのです」


 そう言って私はブレスレットを返そうとするが……


 「そうか……ありがとう。これはそれだけじゃないんだけど……私が貰っておいて欲しいんだ。きっと邪魔にはならないから……」


 そう言って今度は私の左手首にブレスレットをつけられてしまった。ちょっと強引ですね……。

 けれど、ビンセント王子にここまでされては返すのも難しい……。

 今回はルイス様の事が気がかりで私に会いに来たのだろうし、もう会う様な方でもない雲の上の様な人だ。

 今はいただいた方が良いのだろう。返すにしても後でお母様に相談してみよう。


 「えぇっと……すみません……ありがとうございます」


 「困らせちゃっているね。ごめんね? 本当に感謝してるんだ。だからもらって欲しい。」


 そう言って、にこりと笑った顔はとても嬉しそうに見えた。

 



 その後、ビンセント王子はとても忙しい方なのだろう。すぐに王宮へ帰られて行った。

 ルイス様の事、とても心配されているのね。仲のいい兄弟なんだわ。確かビンセント王子は10歳前後くらいなのに、雰囲気も大人の様に落ち着いていて、もうご自分で魔道具を作っていらっしゃるなんて、末恐ろしい方だわ。

 けれど王国もあの方が将来国王陛下になるのならきっと大丈夫ね。

 

 私は元いた部屋に戻り、ベッドに潜ると直ぐに眠りに落ちた……。人と話すのはとても疲れるのです……。


 はぁ……グレゴリーさんとのお話……気が重い……。


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