育成プログラム……!?
ある日いつもの様に礼拝堂へ行こうとしてたら、大司教様に呼び止められた。
「ほーっほっほ、フィリアや、頑張っておるのぅ。今日は会わせたい人がいるのでこちらに来なされ」
「お久しぶりでございます、大司教様。承知致しました」
大司教様に連れてこられたのは板張りの大きな空間だった。なんとなく前世の体育館を、思わせる様な作りだ。
そこに1人の男性がいた。年齢は40代くらい? の人で神官服を着ているが、筋骨隆々なのが神官服の上からでもわかる。淡い紺色の髪は短く切られており、紫色の目も鋭い感じで私が目を合わせたく無いタイプだ。
ムキムキ過ぎて神官服が似合ってない……チグハグな感じだ。神殿に勤めてる神官様達は半端者から高位の魔法使いまで様々だが、皆線の細い人が多いのでこんな人がいたらきっと目につくだろうな……?
私は今まで会った事が無かった。今からでも遠慮したいです……。
「ほーっほっほ、フィリアや、紹介したい奴はこやつじゃ」
にこやかに、大司教様は紹介してくれたが、どう考えてもあちら様はこちらを睨んでる様にしか思えない。いやだぁ〜。
「グレゴリーだ。家名は捨てた。グレゴリーと呼んでくれ」
意外にも真面目に自己紹介をしてくれた。
「はい。グレゴリーさん……。フィリアと申します」
私は恐る恐る返事をしてみる。
グレゴリーさんは鋭い目でじっと見つめてきている。
……怖いです……。
私は挨拶に託けてお辞儀をし、目線を逸らした。
「ようやく会えたな。今5歳と聞いている。間違いないな?」
グレゴリーさんの声は一言一言威圧ありすぎです……泣
「はっはい! そうでございます……」
なんか尋問されている様な気分になります。早く帰りたい。
「いいか! フィリアよ!! よーく聞け!!
貴様はもう後がない!
人間の身体能力は幼児期に決まると言われている!!
いいか!! わかるか!? 正に今だ!!
いやもう終わりかけだ!!
今からみっちり私が鍛えてやる!! 覚悟しておけ!」
…………えぇっと? なんの事ですか?
身体能力……???
「ほーっほっほ。育成プログラムは大体7、8歳頃から始めるのだがのぅ。
どうしてもグレゴリーが早く始めたいと言ってきかんから、今日から始めて貰うことになった。
……まぁ死にはしないさ……。頑張りなされ。
こやつに知られてしまったからには、ワシではもう止められんのじゃ……すまんのぅ。
これからはこやつの指導に付き合ってくれ……」
大司教様は申し訳なさそうにしているが、イヤです。絶対嫌です!!
ってか育成プログラムって、これなんですか!?
「おいっ! 聞いているのか!? こっちを向け!!」
グレゴリーさんは恫喝の様な声を出している。そんなに大きな声じゃなくても聞こえるよ……!
ひぇ〜、見たくないです。聞きたくないです。帰りたいです!! と心の中で思っていると、何かの強制力で、顔が上に向く。どっどぉして!?
「フィリアは体力の前に、根性が足りんのか?
話を聞く時は、人の目を見るのが基本だろう!!」
また叫んでいらっしゃる。
いやいや、おっしゃる通りですが、怖いんですよ!!
「すっすみません!!」
私は、何とかグレゴリーさんを見ようとする。いや、逃げたいです! 逃げたいです! けど体が固まって動きません。これって魔法なんだろうか。誰か助けて!! ひぇ〜!!
何で今根性が出てくる!?
根性なんて私は全く持ち合わせてません!!
5歳児だって持ってないんじゃないか!?
中身おばさんだけど……。
「おいっ!! ちゃんと見てるのか?
大体、その前髪は何だ! そんなものは邪魔だ! 」
そう言ってグレゴリーさんは私の前髪をぱつんと切ってしまった!
えっ? 今、髪を何で切ったの? ってか髪切った!?
魔法?? 何も見えなかった!
いやいやいや! これ、前世では傷害罪ですからね!! この国ではよくわから無いけど、いけない事だと思いますよ!!
開けた視界にグレゴリーさんの顔を直接見てしまう。
いやいや、無理です! 無理です!
ええっと、落ち着け私!! 確か前世で、人の目を見るのが苦手な人は眉間を見る様にだっけか?? そういうのあったよね!! よしよし、眉間だ! 眉間をみよう!!
グレゴリーさんの眉間集中してみるんだ!! 眉間眉間!!
「ちゃんと見ていないだろう? 目を見るとはこうだ!!」
グレゴリーさんが私の両頬を掴み否応にも顔を見合わせる。
ってか近いです!! 怖いです!!
私は眉間に集中していたが、何故か目を見てないのがバレた。またまた何かの強制力で眼球が無理矢理、グレゴリーさんの目と合わせる事になる。
やめてくれ〜!!
グレゴリーさんの目力が凄すぎる。怖すぎる。無理すぎる〜!!
私の視界はいつの間にか暗転していた……。
育成プログラムは勿論身体トレーニングだけではありません!!
フィリア……お疲れ様。今日の所はゆっくりおやすみ下さい。




