つちのこうやのラブコメ (それぞれ別々にお読みいただけます)
可愛いもの好きなせいでクラスの美少女とアイコンが被ってしまい、男たちから告白のメッセージが次々来た。面白いし全部OKしてやるか。ていうか同じアイコンの人からも告白されてんじゃん。アイコン被り三人目で草
いやあ、この可愛いくまさんがアイコン用イラストとして配布されてるとか神?
僕……高島広大はスマホを握りしめて興奮していた。
こんな神なくまさんのイラストがあったとは知らなかった。
僕は可愛いものが大好きである。
可愛い動物はリアルでもキャラでも好き。
可愛い女の子もリアルでもキャラでも好き。
そんな僕以外にも、クラスに可愛いもの好きはいる。
誰かというと、ものすごく美少女の、香川さんである。
香川さんとはたまに、うん、あのほんとにたまに、可愛いものについて語り合ったりする。
その度に、あー、香川さんと毎日可愛いもの買いに行ったりして楽しく過ごしたいよ〜ってなる。
でも気づいたら香川さんは他の人と話したりしてて、ま、そんなもんですよねーってなる。
まあそれはいいんだよ。
今やることは、くまさんのこの神なイラストを僕のアイコンにすることだ。
ふふ。一分くらいで完了してしまった。いやあ可愛い。
にやにやしてたらもう十二時じゃんか。
寝よ。
☆ ○ ☆
次の日。
朝教室に着くとなんかすごい騒がしく盛り上がってる男たちが。
何やってんだろう。
若干クラスの輪には入れてない感のある僕にはわかんない。
近くにいた人に訊いてみたら、どうやら一回でも大貧民になったら好きな人に告白するという、やばい大富豪をしているらしい。
男子十五人以上で。
トランプを二セット使って。
楽しそうではあるが、まあ途中参加はいいかな。
僕はそんなふうに思って、自分の席に行った。
☆ ○ ☆
その日の夜。
僕はやけにスマホがミーアキャットの鳴き声を立てているのに気がついた。
なんでこんなに通知が来てるの?
なんかクラスグルが荒れてるか? と思いながら確認してみると、
「ええ……」
思わずドン引きのつぶやき。
男から告白がいっぱい来てるんだけど。
どうせ大富豪で負けた人たちだろ。
って言うか好きな人に告白するっていう罰ゲームなのに全然それ守ってないじゃんか。
まあその割には本気な文章で面白いわ。
ラブレターみたいに宛名からきちんと書いてる人までいるじゃん。香川さんへって。
あれ? 香川さん……?
いやもしかして。
僕は急いでクラスグルのメンバー一覧を確認する。
いや、まずい、そういうことか。
香川さんと僕のアイコン、全く同じだわ。
だからこんなに間違って告白してきてるのか。
あるいはわざと間違えたことにして罰ゲームを乗り切ろうとしているチキンか。
いやほぼ後者でしょこれ。
まあそういうことなら普段ノリの悪い僕でも、少しは乗ってあげましょうかね。
何をするかといえば、全員にオッケーの返事を出してみる。
もしかしたら本気で間違えて僕に送ってる人がいて、面白いことになるかもふひひ。
というわけで僕は告白の承諾を意味する返事を送ったが……二人目でめんどくさくなった。
全員同じ文面でいっか。
僕は一人目に送った、
「私もあなたが大好きです。あの、初めてのデートに、可愛いものとか一緒に買いに行くのはどうですか?」
という文面を、来たメッセージ全てにどんどんコピペして返していった。
やってるうちにくだらないと思ってきたけけどね。
まあいいのよ、もう後二人か三人くらいだし……ってこの人も神くまさんのアイコンじゃん。クラスに同じアイコンの人三人いて草。
……よし、終わったぞ。
ま、ネタをネタで返せて本望です。
今日も遅いので、おやすみ。
☆ ○ ☆
「き、きた、返事……」
私はもう緊張して、だからアザラシのぬいぐるみに顔をのせて、でも画面は頑張って見た。
ど、どんな返事かな……。
もう見ちゃうよっ!
「私もあなたが大好きです。あの、初めてのデートに、可愛いものとか一緒に買いに行くのはどうですか?」
え、え、え、え、え!
おっけー、されちゃった……。
しかもデートのお誘いまで!
ていうか高島くん、メッセージだと自分のこと「私」って言うんだね。
やっぱり話してても感じたけど、丁寧な人みたい。
てことはやっぱりあんまり派手な服とかじゃなくて控えめなオシャレの方がいいかな?
うん、てことは……ああ、それでも全然決まらないよおおおお。
もう服のこと考えちゃってるし。
まずはいつ行くか決めないと。
それくらい……直接話して決めたほうがいいよね。
告白は、やっぱり直接言うのは、私には無理だったけど。
もうちゃんと話さないと。
私のこと好きって、大好きって言ってくれてるんだし。
私はアザラシにうなずいて、そして目を閉じた。
ううううう。
私のこと、好きだったんだ……!
嬉しいなあ。
☆ ○ ☆
あー、昨日は僕にしては随分とくだらないことに時間を使ってしまった。
さて、今日は普通にまずはお気に入りのイラストレーター様の投稿をチェックして……。
お、この女の子神。
このペンギン神。
はいこのケモみみ女の子は神。
はいこの猫画像神。
朝から神々とのご対面に成功した。
というわけでご機嫌。クラス一早い登校にも成功した。
机に座ってると、僕に近づいてくる人影が。
まさか騙したな! って怒られるやつかな。
いやみんなそもそもネタで送ってきてるんだからそれは大丈夫だよね……?
「高島、くん」
「あ、香川さん。おはよう」
「あ、あのっ、初めての、お出かけというか、デートのっ、日程を決めたいです……!」
「??????????????????????????????????????」
「わ、私もね、一緒に可愛いもの買いに行きたいと思ってたの」
「????????!」
ぴ、ぴこぴこ、ぴ⁈
私も、ということは僕が既に香川さんと可愛いものを買いに行きたいと思っていることを伝えたことになる。
そして僕は伝えた覚えがないが……。
いや、待て待て。
これ、もしかして、ミステリーであるトリックでは?
そう。つまり、別の人だと思ってたのが実は同一人物だったってことだ!
あれ?
いや、待て待て待て待て待て待て!
そしたら、あの三人目のくまさんのアイコンのアカアントは香川さんで、つまり香川さんが、僕に……。
え、てことは香川さんは僕のことが好きなのか。
いや、それは嬉しい。どんなふうに僕の気持ちを伝えよう?
あ、そっか。
僕、もう返しちゃったのか。
「私もあなたが大好きです。あの、初めてのデートに、可愛いものとか一緒に買いに行くのはどうですか?」
って。
そっか。
いやほんとにそうか?
自信ないぞ。
か、確認するか。
まだ教室には二人しかいない。
だけどその前に、香川さんが口を開いた。
「改めて言うと……私すきっ……! すきっていうのはね、高島くんのことが好きってことと同じというか、同じというか同じで……」
あ……かわいい。
気づいてしまったのだ。
僕の人生において、香川さん以上にかわいいっていうのはないんじゃないかって。
ないんじゃないか、ていうより、ないです。
だから……
一番かわいい君に、惚れてしまいました。
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