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時空 まほろ 詩集 言の葉の宝箱たち

~四季~ 電車と共に

桜並木の中を、赤い小さな電車は走る


木漏れ日の下を、今日も赤い電車は走る


枯葉が舞い落ちる中を、孤独に赤い電車は今日も走る


ボタン雪が降る中を、赤い電車はひたすら走る


それぞれの四季の中を

赤い電車は走る


それを


一人の青年が

写真を撮り続けていた


四季を通して


赤い電車が走る様子を

撮り続けていた


この赤い電車は

もう来年から走れなくなる


古すぎて

新しい車両に交換するからだ


桜の中を

木漏れ日の下を

梅雨の雨がしとしと降る中を

夏の太陽がぎんぎら照らす下を

台風の風に負けそうな時でも

枯葉が舞い落ちる秋の日も

吹雪く様な雪の日でも


どんな時でも


赤い電車は走っていた


それを青年は


少年の頃から見守り


青年になってからは

写真に収め続けた


最後の走行の日は


誰も


知らない


青年も知ってない


静かに役目を終えるはずだからだ


だけれど


最後のその日


赤い電車が走る線路の道々では


人々が手を振っていた


ありがとうー、と叫んでいた


今までご苦労様でした

と頭を下げたおばあさんは

若い頃

ぴかぴかの赤い電車にお世話になった女子学生だった


そのおばあさんの隣ではおじいさんが涙を浮かべている

若い女子学生だったおばあさんに

赤い電車の中で告白した青年だった


小さな男の子は

赤い電車もおもちゃを持って

一緒に旗を母親と振っている


孫だろうか


青年は

そんな人々の様子も写真に撮った


四季の中を


様々な四季の中を

赤い電車走り切った


そして

今は


博物館で

幸せそうに飾られています……

お読み下さり、ありがとうございました。

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